やはりブランディング重要。ステファン・ヴィンケルマンCEOはブランド建て直し請負人
ブガッティは2019年で設立110周年を迎えますが、ブガッティCEO、ステファン・ヴィンケルマン氏がブガッティ公式サイトにて「ブガッティの精神」を発表し、そこで「ブガッティにSUVはない」と明言。
これまで何度かブガッティがSUVを発売するのではという噂が出たものの、これで公的に「それはない」ということが明確になったわけですね。
ブガッティは1909年に設立された
ブガッティ創業者のエットーレ・ブガッティは1881年にイタリアはミラノに生まれ、その後一家とともにパリへと移住。
最初に自ら製造したのはエンジン付き3輪車で、その後彼はこの車両でレースに参戦し、いくつかのコーチビルダーにて開発や設計を担当。
その後1907年に自身で設計した最初の「4輪車」タイプ10(T10)を完成させ、1909年に自らの会社「オトモビル・エットーレ・ブガッティ」を設立しています。
創業の地はフランスはアルザス地方モールスハイムで、今もブガッティ本社はこの地に居を構えていますね。
その後レーシングカーとしてタイプ35(T35)、12,763ccという常識はずれの排気量を持つタイプ41(T41)ロワイヤル、タイプ57(T57)SCアトランティック(アトランティークとも。非常に希少なことで知られ、ラルフローレンが動態保存している)等をリリース。
なお、このT57SCアトランティックの設計はエットーレ・ブガッティの息子、ジャン・ブガッティ。
非常に才能に恵まれていたとされますが、テスト中に非業の事故死を遂げています。
ブガッティのクルマの特徴は「パワーと高級さとの融合」
現在ブガッティは「シロン(2018年に76台をデリバリー。2021年までに予定の500台を販売見込み)」「ディーヴォ(完売済み。納車は2019年から)」を現行モデルとして保有しますが、これらの特徴は1500馬力という途方もない馬力と、職人による美しい仕上げを持つ内外装。
ブガッティのクルマは、もっともパワフルで、もっともラグジュアリーでなくてはならない、とステファン・ヴィンケルマンCEOは語っています。
なお、同氏によると「トップスピードそのものは、もはや重要な要素ではない」とのこと。
それよりも加速やコーナリングを含め「”非常に、非常に”速く走れる」ことが重要だと述べています。
加えてシロンについては「ブガッティの歴史における三本柱を反映している」とも語っており、それは「T35のような合法レーシングカー」「T41ロワイヤルのような快適性と高級さ」「T57SCアトランティックのようなアイコン的デザイン」を挙げ、とくに「アイコン的なデザイン」とは現代ではシロンのサイドやインテリアに使用される「C」がそれに該当する、と主張。
今後のブガッティは「ラグジュアリー」「快適」重視
そしてステファン・ヴィンケルマンCEOブガッティについてこう語っています。
「ブガッティは、クルマを作ると同時に芸術を生み出しているのだ」。
これについてはブガッティ一族のバックグラウンドに触れる必要があり、というのもエットーレ・ブガッティの父は高名な芸術家(家具や宝石)。
そして叔父もまた彫刻家、曽祖父も画家として知られる芸術家一族。
そしてエットーレ・ブガッティの息子にも類稀なる才能が遺伝したことを考えると、その才能が「幾代にもわたって」遺伝した稀有な例だと言えます。
その意味において、現代のブガッティもまた「芸術とテクノロジーとを融合させた」クルマである必要があるということに帰結したと言えますが、ブガッティいわく、「我々の顧客は、究極の芸術そしてドライビングパフォーマンス、そして快適性を同時に体験できる」。
今回のステートメントでは幾度にも渡って「ラグジュアリー」「快適性」ということろを強調しており、現時点でも「もっとも歴史あるスポーツカーメーカー」が今後も発展してゆくには、その2つが欠かせない、ということなのかもしれません。
なお、ブガッティがこの2つについて重要性を高めているのは、SSCトゥアタラ、ケーニグセグ・レゲーラ、ヘネシー・ヴェノムF4といった「世界最速を誇るクルマたち」が多数登場したことにも関係していると思われ、もはやそこで競争することは意味がなく、であればブガッティの伝統をより重視したブランディングにシフトすべきである、という判断なのでしょうね(ここが”ブランド”成立のひとつの要件は歴史であると言われる所以)。
ただ、このブランディングというのは現代においては(あらゆる業界で)最も重要な要素だとも考えられ、ここが弱いブランド、たとえばマセラティやベントレー(弱いというか、差別化が見えなくなってきている)はやはり縮小傾向。
現代はいい製品(クルマ)を作れば売れるという時代ではなく、顧客に対していかに上質かつ排他的な体験を提供するかということがそのブランド成功の可否を握っているのかもしれません。
最後にステファン・ヴィンケルマンCEOは「今年はニューモデル含め、いくつかサプライズを用意している」と語り、しかし「SUVはない」と明言。
「SUVはいかなる理由をもってしても、ブガッティの歴史、そしてブランドを正当化できるものではない」と断じていますが、となると「ニューモデル」はやはりセダンなのかも。
過去に「巨大な」サルーンのプロトタイプが目撃されていて、12,763ccという排気量を誇ったT41ロワイヤルの再来と言える”超弩級の”クルマが登場すれば面白いのにな、と考えたりします(ブガッティの親会社、フォルクスワーゲンはこういった”超弩級”が好きなので、あながち無いとは言えない)。
VIA:Bugatti