| デザイナー、設計者は「カウンタック」と同じ |
ブガッティが現在の体制(フォルクスワーゲン傘下)となる以前に発売された「ブガッティEB110GT」。
自動車メーカーとしてのブガッティは1909年にエットーレ・ブガッティによって設立され、その後にタイプ35やタイプ57といった名車を世に送り出し、数々のレースで優勝することでその名声を不動のものとしています。
その後創業者のエットーレ・ブガッティが他界するにあたって業績が下降し、その後1963年にフランスのイスパノ・スイザに買収され、1968年にサフラングループ傘下へ収められることに。
ただ、ここからがちょっとややこしく、このサフラングループ傘下の「ブガッティ(正式名称はメッサー・ブガッティ)」と、現在の自動車会社としてのブガッティ(ブガッティ・オトモビル)とは別の会社。
現在もメッサー・ブガッティはそのまま存続して航空機用の車輪などを製造していますが、1987年にイタリア人の実業家、ロマーノ・アルティオーリ氏が「ブガッティ」の商標を取得して「ブガッティ・アウトモビリ」を設立しており、その際にリリースされたのがこの「ブガッティEB110GT」。※このときの本社はイタリアのモデナ
そして1995年にロマーノ・アルティオーリ氏は財政破綻し、そこからブガッティの商標権を買い上げたのがフォルクスワーゲングループで、ここで設立されたのがブガッティ・オトモビル(本社はブガッティ設立当初と同様、フランスのアルザスに移した)。※これまでに4つの「ブガッティ」が存在し、2つの「ブガッティ」が今も存続
なお、エットーレ・ブガッティは由緒正しい芸術家の家系に生まれ、祖父の代から息子の代まで幅広いクリエイティビティを見せているものの、その後の世代がどうなったのかは一切不明です。
ブガッティEB110GTはランボルギーニ、パガーニとも縁が深い
そこで今回のブガッティEB110GTですが、ボディデザインはカウンタックで有名なマルチェロ・ガンディーニ、車体の設計は「ミウラの父」そしてカウンタックの設計も行ったパオロ・スタンツァーニ。
このブガッティEB110GTは「ミドシップ」「ガルウイング(シザースドア)」というカウンタックとの共通点があるものの、決定的に異なるのは「4WD」。
ただしパオロ・スタンツァーニはカウンタックでも「4WDを想定していた」と後に語っており、設計思想としてはカウンタックの流れにある、と言って良さそうです(この頃ランボルギーニはオーナーの元を転々とし、5番目のオーナーであるクライスラー傘下にあった。パオロ・スタンツァーには不安定なランボルギーニではできない”理想”をブガッティで実現したのかも)。
そしてこのブガッティEB110GTについて、総生産台数は154台。
3500cc/V12エンジンにターボ4基がけという、現代においても規格外のパワーソースが特徴で、 出力は552馬力、0-100キロ加速は3.6秒と当時としては破格の性能を誇ることに。
なお、今回売りに出されているEB110GT”スーパースポーツ(SS)”は更にその出力を611馬力にまで向上させたもので(反面、重量は150キロ削られて1400キロに)、リアウイングの追加などが外観上の相違点。
生産台数は30台にとどまり、当時はマクラーレンF1当同等のパフォーマンスを誇ったことでも知られ、0-100キロ加速は3.2秒、最高速度は355km/h。
そしてこの個体が特別なのは「シャシーナンバー39040」を持ち、これは記録上だと「EB110GT SS生産における、最後の一台」。
ちなみにモデル名の「EB110GT」はエットーレ・ブガッティのイニシャルと同氏の生誕110周年とを組み合わせたもの。
最近ブガッティは「シロン110Ans Edition」を公開していますが、こちらがブガッティ”設立”110周年記年モデルですね。
ちなみにこのEB110GTを発売した「ブガッティ・アウトモビリ」が倒産した後、そのエンジニアたちは「パガーニ」を設立することに。
ロマーノ・アルティオーリがモデナにブガッティの本拠地を置いたのは、フェラーリの地元、そしてマセラティやランボルギーニもほど近く「エンジニアの確保が容易だった」からだと思われます(同じ理由で、”パンテーラ”を復活させたアレス・デザインもモデナに会社を設立している)。
ブガッティEB110GT SSの細部はこうなっている
ここからはブガッティEB110GT SSの細部を見てみましょう。
まずホイールはBBS製(センターロック)、ブレーキはブレンボ製。
コクピットはシンプルですが、フロアカーペットがキルティング入りのレザー仕上げとなるなど、ブガッティの名を名乗るにふさわしい仕上がりに。
シートはフルバケットで、材質はカーボンファイバー。
シートベルトはブガッティを象徴する「ブルー」ですね。
エンジンにもブルー。
クワッドターボ+ミドシップ+4WDという組み合わせは現代のブガッティにも引き継がれています。
バッテリーはフロント、そしてセンターかつ車体中央に。
このクルマが「妥協なしに」作られていることを示す部分ですね。
トランスミッションは「マニュアル」。
書類一式もきっちり揃います。
価格については「ASK」とのこと。
VIA:Girardo&Co.