| 司法取引がなかったとしても、社会的責任を果たすためにはすべてを語るしかない |
そして前アウディCEOの証言によってさらなる余波が広がりそう
さて、日本ではすでに過去のものとなったフォルクスワーゲン/アウディに関する「ディーゼル不正事件」。
ただし欧州ではまだまだ現在進行形であり、いまだにメディアに取り上げられることも多い題材です。
ちなみにですが、本件に関してはレオナルド・ディカプリオが映画化権を獲得し、実際に映画化がなされるという話もあったようですが、現在のところそれは実現していないもよう(レオナルド・ディカプリオは熱心な環境活動家としても知られる。ただしディーゼル不正事件は旬が過ぎたので、もう映画化されることはなさそうだ)。
参考までに、フォルクスワーゲンはこれまでに罰金と和解金で300億ドル(約4兆円以上)を直接失い、もちろん(イメージダウンによる販売失速、車種削減や新規車種の開発凍結など)間接的な損失も発生しており、前代未聞の企業スキャンダルへと発展しています。
アウディ前CEO、ルパート・ステッドラーがついにディーゼル不正事件への関与を認める
そして今回報じられたのが、アウディの前CEOであるルパート・ステッドラー氏が「ディーゼル不正事件への関与を認めた」ということ。
ディーゼル不正事件の概要としては、「ディーゼル車の環境性能をテストする際、その条件(車両の固定方法やエンジン回転数、ステアリングホイールの切れ角など)を事前に入手し、その条件が再現されると出力を制限して排ガスの排出を意図的に少なくする」というチートプログラムを仕込んだというもので、国を代表する企業が、環境に関する試験を意図的かつ組織的に、利益のために欺いたということで大きな話題となったわけですね。
そしてこの事件が報じられると、フォルクスワーゲングループへ次々と調査のメスが入り、重役の逮捕(7年以上など、かなり長い刑が課されている)や重役個人に対する罰金刑(これも数億円レベルの非常に大きな金額)が相次ぐことに。
これによってポルシェなど傘下のブランド(ポルシェもこれに関与していた)含む多くのブランド、そしてフォルクスワーゲン本体の経営陣がそっくり入れ替わるなど大きな変更がグループにもたらされていますが、フォルクスワーゲンが電動化を急ぐのも「内燃機関のイメージを一掃したいから」だと言われています。
ディーゼル不正事件の罪は信じられないほど重い
そしてアウディのルパート・ステッドラーCEOに話を戻すと、同氏はこれまで「ディーゼル不正は部下がやったことで、自分は知らなかった」と言い切っていたものの、今回「罪を認め、自身の役割など詳細を白状すれば、予定していた10年の実刑ではなく、執行猶予付きの1年半~2年の懲役刑に減刑する」という司法取引に応じ、自身が事件に関与したことを認めたと報じられているわけですね(よって、ここからまた新たな事実がたくさん出てくるものと思われる)。
同氏は2019年7月に詐欺罪で起訴されていますが、ドイツ検察は(少なくとも)ルパート・ステッドラー氏は2015年9月にディーゼル不正デバイスの存在を把握していたこと、それを知りながら販売を容認していたため、2018年まで「不正デバイスを搭載した」クルマが販売されていたと主張しており、そのためこの4ヶ月ほど(公判のため)同氏は交流状態にあり、しかし6月に出るという最終判決の後にはようやく自由を得ることになるのかもしれません。
ただ、晴れて自由の身になったとしても、執行猶予付きの判決が下るので犯罪歴が残り、最低でも別途110万ユーロ(約1億6300万円)の罰金を支払う必要があるほか、今後の調査に協力せねばならず、そしてなにより「会社を売った男」というレッテルを貼られ一生を過ごすことになりそうです(ただ、保身を除いたとしても、社会的責務を果たすことを考えると、すべてを白状するより他はない)。
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