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もう争っていられない。ポルシェとアウディが「対立」から「和解」へ。両者が互いの技術と資産を提供し「手っ取り早く稼げるモデル」の開発へ

ポルシェとアウディのステアリングホイール比較

| 導入文:プライドを捨てた?ドイツの雄2社が仕掛ける「生存戦略」 |

VWグループ内では「アウディ」と「ポルシェ」はずっと対立する間柄ではあったが

フォルクスワーゲングループ内において、かつて開発主導権を巡って激しく火花を散らしたポルシェとアウディ。

しかし今、両社は過去の確執を捨て、かつてないほど深い協力関係へと舵を切ったという報道がなされています。

この背景にあるのは中国市場での需要低迷や厳しい(米国での)関税、そしてEVシフトの迷走という「絶体絶命の危機」だとされ、ポルシェの新CEOマイケル・ライターズ氏は就任早々にアウディ本社を訪問したうえで、「共有できるポテンシャルをさらに活用したい」という驚きの歩み寄りを見せたのだそう。

【この記事の要約】

  • 新型TT復活: アウディTT後継モデルは次世代ポルシェ718のプラットフォームをベースにしたEVとして誕生
  • プラットフォーム共有: 次期マカン(エンジン車)はアウディQ5とプラットフォームを共有
  • 巨大SUV計画: カイエンを超える新型フラッグシップSUV「K1」もアウディQ9ベースに
  • 目標: 共通化によるコスト削減で「利益率10%」の奪還を狙う
  • 背景: 宿執を捨て、中国市場の不振やEV需要減退に立ち向かうための「背水の陣」

宿敵から「最強のパートナー」へ

ポルシェとアウディはこれまで、VWグループ内で進められていた電動車向けプラットフォーム「PPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)」の共同開発において開発主導権を争い、親会社フォルクスワーゲンのCEOが仲裁に入るほどの「冷戦状態」にあったことが知られています。

そのちょっと前にはスポーツカー用プラットフォームの開発主導権争いが生じているのですが、ポルシェとしては「ポルシェの名を冠するクルマは他社の開発によるものであってはならず、ポルシェによって開発がなされなくてはならない」と主張していたわけですね。※F1参戦に関するレッドブルとの交渉決裂もまた、主導権争いにあったとされている

そしてこの問題が大きくなることを恐れてか、VWグループは「アウディ」「ポルシェ」を中心とした2グループに内部ブランドを分けたほどであったものの、そこから自動車業界を取り巻く環境が一変し、ポルシェは当初掲げていた「2030年までにEV販売比率80%」という目標を事実上撤回して内燃機関(ICE)モデルの継続を模索することとなっています。

ポルシェ・タイカンの正面(ホワイト)

ただしポルシェとしては、すでに「(911を除いて)EVのみ」として次世代ラインアップの構築を進めていたため、今から改めてガソリン車を開発するだけの資金的・時間的・人的リソースを確保できず、しかしこの「戦略の修正」と「コスト削減」を両立させねば文字通り生き残ることができないため、主義主張を曲げてでもアウディの資産を最大限に活用して「手っ取り早く」ガソリンエンジン搭載モデルの開発を行う道を選択したということに。


TT後継、マカン、そして謎の超大型SUV「K1」

今回の提携強化により、今後のラインナップは以下のように劇的な変化を遂げることが予測され・・・。

ポルシェ・アウディ 提携モデル予測一覧

モデル名採用予定プラットフォーム特徴・背景
アウディ TT後継モデルポルシェ 718(EV)ベースバッテリーを座席後方に配置し、ミッドシップのような走りを実現
新型マカン(エンジン車)PPC(アウディ Q5と共通)マカンのEV専売化を撤回し、アウディの技術でガソリン車を継続。ただしマカンの名を使用しない可能性も
新型SUV「K1」アウディ Q9ベースカイエンの上に位置する、ポルシェ史上最大級のラグジュアリーSUV。これまでに開発していたEV専用プラットフォームは「凍結」か

次世代スポーツカーの新たな形

特に注目すべきはアウディのアイコン的存在である「TT」の復活で、次世代TT(実際にはTTという名称とならない可能性が高い)は、ポルシェの次世代718ボクスター/ケイマンのEVプラットフォームを流用し、単なるバッジエンジニアリングではなく、ポルシェの走りの質感をアウディが手に入れるという、ファンにはたまらない(あるいは複雑な)進化を遂げるであろうことが予想されます。※次期718とアウディTT後継モデルとの共同開発は以前から公言されていたが、それが「共有範囲を拡大することでコストを下げる」という流れになるのだと思われる

アウディ、新型「コンセプトC」を市販化決定。TTの後継ではなく“スピード、デザイン、感性の象徴であり、ブランドの魅力を高める存在”へ

Image:Audi


市場での位置付け:生き残るための「10%」という数字

ポルシェがここまでアウディに寄り添う最大の理由は、「10%の利益率」の死守であり、現在、ポルシェは以下の三重苦に直面しています。

  1. 中国市場の崩壊: かつての稼ぎ頭での需要が急減
  2. EVシフトの鈍化: 多額の投資をしたEVが思うように売れず、ガソリンエンジン搭載車の開発も継続が必要に
  3. 高額な開発費: ソフトウェアやバッテリー技術の独自開発は単独だと限界

かつては「ポルシェのクルマは独自開発であるべき」というプライドが優先されたものの、今ではアウディのアーキテクチャ(プラットフォーム)を借りてでも、効率的に、かつ”売れる”クルマを素早く作って稼ぐという「実利」が最優先されているというわけですね。

ポルシェ・マカンEVのインテリア
ポルシェ
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結論:これは「妥協」か、それとも「進化」か?

ポルシェがアウディのプラットフォームを多用することに対し、一部の熱狂的なファンからは「ポルシェらしさが失われるのでは?」という懸念の声も上がりそう。

しかし、マイケル・ライターズCEOが真っ先にアウディを訪ねたという事実は、この連携が「やむを得ない妥協」ではなく、厳しい時代を勝ち抜くための「攻めの戦略」であることを物語っており、実際のところ、マイケル・ライターズ氏はかつてポルシェにてカイエンの開発を主導したエンジニアで、その後はフェラーリでプロサングエの開発を担当し、マクラーレンではCEOを歴任した人物です。

マクラーレン
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よって、同氏の「アウディ訪問」は感情論や「わらにもすがる」といった類のものではなく、自身の経験をもって、「ポルシェの資産と経験、アウディの資産と経験とを組み合わせて生み出される成果物」を正しく認識しての行動であると考えてよく、そしてアウディとの和解が今後のポルシェにとって「最優先事項」であり、アウディの持つプラットフォームを使用したとしても「ポルシェらしいクルマを作ることができる」という確信があったからこそだと思われます。

ポルシェ・マカンのリア(ブルー)
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ポルシェ・タイカンのヘッドライト
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【関連情報:プラットフォーム共有の歴史】

実は、初代カイエンとフォルクスワーゲン・トゥアレグ、アウディQ7も同じプラットフォームを共有して誕生したクルマ。

当時も批判はあったものの、結果としてカイエンはポルシェを倒産の危機から救い、史上最も成功したSUVとなっており、よって今回の提携も、将来「あの判断がポルシェを救った」と言われる転換点になるのかもしれません。

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