| メルセデス・ベンツが元祖シルバーアローをイメージしたコンセプトカー公開 |
メルセデス・ベンツがかねてより予告していたとおり、1937年のW125”シルバーアロー”へのオマージュとなる「EQシルバーアローコンセプト」をモンタレー・カーウィークにて公開。
W125は元祖シルバーアロー「W25」の後継モデルで、1937年に登場しています。
5.7リッター直列8気筒エンジンを搭載し、なんと646馬力を発生。
車体重量は750キロ程度とされるのでとんでもなく速い車であったと考えられ、しかもサスペンションやタイヤ、エアロダイナミクスも今ほど発達していなかったはずなので、相当に運転が難しかったクルマだったのかもしれません。
なお、世界最高速度記録に挑んだW125スペシャルバージョンは5.7リッターV12エンジンを搭載しており、これは時速432.7キロを記録したことでも知られます。
https://intensive911.com/?p=131273
クルマの中でゲームもできる
今回の「EQシルバーアロー・コンセプト」はそのV12エンジンにかえてフルエレクトリックパワートレーンを持ち、出力は738馬力。
なお、メルセデス・ベンツはフルエレクトリックモデルでは「エンスージアストを満足させることができない」と考えたようで、そのために「F1マシン、もしくはメルセデスAMG製V8エンジンのサウンド」を室内に流すことが可能だと公開。
このEQシルバーアローはシングルシーターで全長5.3メートル、アクティブエアロも内蔵。
リアエンドが速度に合わせて変形するものですが、メルセデス・ベンツはこれまでも「全長が変化する」コンセプトカーを発表しており、つまりはこの技術に入れ込んでいて、となるとどこかのタイミングで市販車にも搭載されることになりそう。
https://intensive911.com/?p=34577
メルセデス・ベンツは将来に向けて様々な試みを行なっていることでも知られますが、中には長い年月をかけてようやく市販車に与えられる装備や機能もあるようですね。
なおこちらはエアロが起動していない状態。
エアロパーツ展開状態。
ホイールは24インチサイズでタイヤにはハーフカバー付き。
ホイールはクラシカルなスポーク式で、一つのホイールにつき168本のスポークが使用されている、とのこと。
ボディカラーは「アルビーム・シルバー」で、これは元祖シュルバーアローにちなんだカラーだそう。
EQシルバーアローのインテリアはこうなっている
インテリアは「EV」というところから想像するのとは異なり、自然に由来する素材を多数使用。
レザーはもちろんのこと、ウォールナットも使用されていて、ちょっとクラシカルな雰囲気も。
スイッチ類は最小限で、ステアリングホイール内にはサブディスプレイが設置されています。
なお、こういった「ビデオゲーム」も内蔵。
ちょっと不思議なコンセプトカーですね。
現在のところ各社とも「エレクトリック化」を目指すトレンドに変わりはなく、しかし各社ともエレクトリックの「限界」を感じている模様。
というのも今回の「EQシルバアローコンセプト」もその楽しさを追求するためにガソリンエンジンの「サウンド」に助けを求めていて、奇しくも今回同じく「EVシングルシーター」コンセプトカーを発表したインフィニティも、エレクトリックカーというイメージがスポーツ性をスポイルすると考えたのかそのデザインを「過去のレーシングカー」に求めることに。
こういった現状を見ると、「まだまだEVは普及が難しい」のかもしれません。
元祖「シルバーアロー」はこういったクルマ
なお、よく耳にする「シルバーアロー」ですが、これは1934年のメルセデス・ベンツ製フォーミュラカー「W25」を指すことが多く、その後転じてメルセデス・ベンツのレーシングカーがそう呼ばれることに。
W25は当時のフォーミュラカーの規定であった「重量750キロ」にあわせてメルセデス・ベンツが製造したもので、エンジンは3360cc+スーパーチャージャー。
このマシンは当時ドイツの国力を示すためにナチスがプロパガンダに使用していて、当時のレースは「国家間の戦争と同じ意味を持っていた」であろうこともわかります。
なお、「シルバーアロー」と呼ばれるようになった理由は諸説あり、もともとドイツの「ナショナルカラー」はシルバーではなく「ホワイト」。
よって当時もホワイトでW25は登場しており、しかし後にシルバーを基調とするようになっています。
最も有力なのは、ホワイトにペイントされたW25が1934年に開催されたレース前の車検で「1キロオーバー」が発覚し、しかし軽量化しつくした車体にはもう削れる部分がなかったので、ホワイトの「ペイント」を削って1キロを稼いで車検をパスした際に「シルバーの地金がむき出しになっていた」のでシルバーアローと呼ばれるようになった説。
ただしこれにも異論はあり、「確定」とは言い難いようですね。