| たしかに素晴らしいクルマなのは理解できるが |
マツダがついに新型ガソリンエンジン、SKYACTIV-Xを搭載したマツダ3を12/5から発売開始、とアナウンス。
このエンジンは「ガソリンエンジンとディーゼルエンジンとのいいとこ取り」とされるもので、マツダの開発した燃焼制御技術SPCCI=Spark Controlled Compression Ignition(火花点火制御圧縮着火)を搭載したことが特徴です。
ガソリンエンジンは回転につれパワーとトルクが増すので、それらが盛り上がる「高揚感や気持ちよさ」がある反面、トルクや燃費が(ディーゼルエンジンに比較して)劣り、一方でトルクや燃費にまさるディーゼルエンジンは逆に「高回転が苦手」という一面も。
そこで両者のメリットを融合させたのがSKYACTIV-Xエンジンということになりますが、マツダはこれを「人馬一体の気持ちよい走りと優れた環境性能を両立したマツダ独自の新世代ガソリンエンジン」と表現しています。
SKYACTIV-X搭載のマツダ3はこんなクルマ
そしてこのエンジンが搭載される第一号は「マツダ3」で、ファストバック/セダン両方に設定されます。
エンジンのスペックは「2リッター4気筒、180PS、燃費17.2~18.2km/L」で、これは従来のガソリンエンジンであるSKYACTIV-G「2リッター4気筒、156PS、燃費15.6~17.8km/L」というスペックから大きく躍進したもの。
そしてこのエンジンには、出力6.5PSのモーターを持つマイルドハイブリッド(M Hybrid)が組み合わせられ、さらなる効率向上を実現しているようですね。
エンジン以外の特徴だと、強化ドライブトレーン「高剛性伝達システム」、エンジン周囲を吸音材で囲んだ「カプセル遮音システム」が紹介されています。
SKYACTIV-X搭載車のネックは「価格」
そしてこのSKYACTIV-Xエンジン搭載のマツダ3(ファストバック)の価格は「X PROACTIVE」2WD/ATで3,198,148万円。
SKYACTIV-Gエンジンを積む20S PROACTIVEの2WD(AT)の価格が2,515,741円なので、その差額は682,407円、ということになりますね。
細かい装備の差はあると思われますが、車体やドライブトレーンがほぼ同じ、ただ出力がハイブリッドシステム含めて30.5馬力向上し、燃費がリッター1.6~0.4km向上するという「対価」としてはかなり高いんじゃないか、という印象も。
もちろん高剛性ドライブトレーン、遮音性の向上といったアドバンテージはあるものの、この価格差を正当化するのは難しいのかもしれません。
なお、マツダ副社長は最近のインタビューにて「新技術を盛り込むと、どうしてもクルマが高くなる」ということについて言及。
ただしその中には、目に見えない、体感できないような新技術もあり、そこで「値上げしました」といっても消費者には受けられられず、よって「快適性」「静粛性」を向上させることで値上げを正当化したい(消費者に体感できるメリットとして還元したい)ともコメントしています。※ただ、これらも乗り比べたりしないとわからないもので、そのクルマ一台に乗っただけでは良さがわからない
マツダ副社長の発言については納得ではあるものの、現時点ではワールドワイドだと販売台数が減少しており、実際にはなかなか消費者の理解を得られていない部分があるのかもしれません。
「マツダは身の程知らずに値上げし、しかも値引きしなくなってユーザーにそっぽを向かれ売れなくなった」は本当か?その真相をマツダ副社長が激白
それでもお膝元の日本市場においては、発売する新型車がいずれもランクイン、しかもけっこう上位に登場するケースもあって、こと日本に関しては「マツダの努力が理解され、それに対して対価をすすんで支払う」顧客が増えてきているようにも思われます。※ただし自社内での食い合いは発生しているようだ
SKYACTIV-X搭載車の価格はこうなっている
なお、SKYACTIV-X搭載のMAZDA3について、ボトムは「X PROACTIVE」の3,198,148円(~3,434,648円)、その上は「X PROACTIVE Touring Selection」の3,319,148円~3,555,648円、その上は「X L package」の3,380,463円~3,616,963円、トップレンジは「X Burgandy Selection」の3,451,963円~3,688,463円。
この価格帯がどれくらいなのかというと、マツダ車では、フラッグシップセダンであるマツダ6が2,893,000円~、ミドルクラスのSUVであるCX-5が2,618,000円~、SUVのトップレンジであるCX-8は2,948,000~。
つまり、SKYACTIV-X搭載のマツダ3(ハッチバック)でもっとも安価なモデルは、同社のセダン/SUVのトップレンジのベースモデルを20万円以上上回る価格設定を持っている、ということになりますね。
ちなみにメルセデス・ベンツAクラス(A180)の価格は3,340,000円から、BMW 1シリーズも3,340,000円から(ベンツと価格を合わせてきたな・・・)、アウディA1スポーツバックは3,650,000円から(いいのか?強気な価格で)、フォルクスワーゲン・ゴルフが2,589,000円から。
こういった例を見るに、正直、この価格帯にてマツダがコンパクトカーを販売するのはかなり困難だとは思いますが、それをスムーズに進めようと考えると、イメージリーダーとなる「マツダスピード」版が必要なのかもしれません。
正直、「ホットハッチ」の需要は現代において小さいかもしれず、しかし現在のマツダのように地道なプロモーションによって下から「積み上げて」ブランド価値を上げてゆくのは相当な苦労と時間を要することに。
しかし圧倒的な高性能車を発売し、そこで大きなインパクトを市場に与えれば(その高性能車が売れるか売れないかは置いといて)そのクルマやブランド価値を向上させるには手っ取り早い、と考えることがあります。
つまり、これまで「250万円で買えたマツダ3が320万円になった」というよりは、たとえば400万円で超高性能なマツダスピード・マツダ3を発売しておき、「あの(400万円の)マツスピ・マツダ3と基本を同じくするマツダ3が320万円で買えるのか。お得だな・・・」と思わせたほうがいいんじゃないかということ。
ホンダの場合は「シビック・タイプR」がシビックの価値全体を向上させていると思われますが、高性能車は「売れずとも」広告塔となって間接的に利益に貢献する可能性もある、と考えています。
マツダ「マツダ3のマツダスピード版を作るだけの技術は既にある。だがやらない」。しかしボクがマツスピ版を必要だと思うワケ
VIA:MAZDA