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新型911の外装デザインに関わったポルシェ唯一の日本人デザイナー「テールランプの長さは1.4メートル。私はそれを日本刀と呼んでいる」

2019/08/10

| 新型911のデザインは過去の解釈からはじまった |

OPNERSにて、ポルシェ唯一の日本人デザイナー、山下周一氏へのインタビューが掲載に。
同氏は以前にも「パナメーラ・スポーツツーリスモのデザイナー」として紹介したことがありますが、ポルシェにおいてはエクステリアデザインを担当する人物でもありますね。

山下周一氏は13年前にポルシェへ加入し、991に続いて今回の992にもデザイナーとして参加。
「911をデザインする」ということについては、下記のように語っています。

「心から誇りに思っています。オリンピックに出場するって、こんな感じかもしれないですね。日本でのプレゼンテーションに関わる機会を得たことも人生で最も嬉しい出来事のひとつでした」

一番のハイライトは「テールランプ」

山下氏いわく、992において、最大のポイントは「テールランプ」とのこと。
言うまでもなく930世代、964世代の911に採用されていたものですが(その後もワイドボディ系に採用される)、992に採用されるテールランプはこれら過去モデルそして伝統へのオマージュ。

ただし過去のデザインをそのまま使用するのではなく、過去モデルを研究して伝統を再解釈したのち、最新技術を利用することで「昔のデザインを、モダンな解釈で実現できる」とも語っています。

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今回のテールランプでいうと、「長さ1.4メートル、幅3センチ」の「テールランプはLED技術なしには再現できなかったといい、しかも「一本モノ」。
通常、こういった棒状のランプは「2つは分割線が入る」とされるものの、新型911では一本で実現したということになりますね(よって、もし破損すると非常にパーツ代が高価だと思われる)。

なお、同氏はこれを「日本刀」と呼んでいる、とのこと。

理想像の共有が伝統へのオマージュを可能とする

新型911は、これまでの911の中では最も「伝統」を反映したデザインを持っていますが、山下氏いわく、それは”ユーザーが、ポルシェがこうあるべきだ”と考える姿が多くの人の間で共有されているからだとし、「それは長年にわたって築きあげられたものなんです」とも。

たしかに、いかに伝統があっても、「こうあるべき」というイメージを人々が持っていなければ、過去のデザインを現代に再現したとしても無意味なのかもしれません。

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そして、ポルシェやフェラーリ、ランボルギーニも、そういった「メーカーと顧客とが共有する理想像」を持つのは新興メーカー、歴史の浅いメーカーには不可能なことであると判断し、最近よく見られる「過去へのオマージュ」的デザインを強く推し進めているのでしょうね。

なお、山下氏は以下のようにも語っていますが、「ポルシェの歴史は911をやめようとした歴史」。
ですが、一定のところでポルシェは911を中心に展開することを決め、そう決断させたのは顧客であった、ということになります。

「ポルシェも実は911の製造をやめようとしたことがありました。1978年にフロントエンジンの928を出したのは、将来的にリアエンジンの911をやめることを想定していたから。でも、商業的に上手くいかなかった。911の存在の大きさを、ファンからの反応に気づかされたんですね。リアにエンジンがある911は運転が難しい。だから、エンジンをフロントにとメーカーは考えた。ところがユーザーにはその911ならではの操縦性が魅力だった。欠点だと思っていたことが、クルマにとって大切なキャラクターだったということに気づかされたんです」

さらには「絶対に変えられない部分」についても触れており、これは発言を見る限り、未来永劫、ポルシェのDNAとして生き続けることになるのでしょうね。

「その関係の鍵となるのが、進化の中で“Timeless”をどう表現し続けるかということ。それはポルシェのDNAを守ること。その核は911なんです。ウインドウから屋根にかけての流れるような、横から見たときのフライライン。ボンネットよりフェンダーの方が少し高くなっている、フロントのウインドウグラフィック。ふくよかなリアフェンダー。これらは絶対に変えられないんです。ものごとを変えないのは、大変なこと。でも、そこに進化を加えることも大変なことです」

なお、苦労した部分の一部として「リアフェンダー」を挙げていますが、これは「993的」な表情を持っています。
ただ、コンピューター上で再現し、実際にそれをもとに作ったとしても「なんか違う」ということに。

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そしてクレイモデラーに993のフェンダーデザインを再現してもらうことになるものの、「一部」を再現するだけでも半年かかったといい、992のデザインがいかに大変な作業であるか、そして過去の製品に採用されているデザインを再現することがいかに難しいかもわかります。

つまりは、単に「形だけを真似ても」他の部分とのバランス次第では「全然違う」イメージを与えることにもなりかねないということになるのかもしれませんが、こういった「職人技」は今でも自動車のデザインにおいて非常に重要なポジションを占めると言われ、マツダも「コンピューターと職人との協業が不可欠」とも述べていますね。

単に過去のデザインをリバイバルさせるだけではなく、そこへ最新のテクノロジーを盛り込み、細部を調整することで「伝統」を表現しているということになりますが、ポルシェのデザイナーですら「過去モデルが持つニュアンスを再現するのは難しい」と感じているということになり、それだけ過去の911は(シンプルに見えて)複雑なデザインを持っている、ということにもなりそう。

そう考えると、過去の911が現代でも色褪せず、そして高い人気を誇るのは、単に「懐古趣味」という言葉では片付けられない「何か」がそこにあり、911を愛する人々はそれを本能的に感じ取っているのだろう、と考えています。

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VIA:OPNERS

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