
|新デザイン総帥にトビアス・シュールマン氏が就任。伝説のマウアー氏が残した功績と未来への挑戦 |
記事のポイント(3行まとめ)
- 22年ぶりの大転換: 2004年からポルシェの黄金期を支えたマイケル・マウアー氏(63)が2026年2月1日付で退任
- マクラーレンからの電撃移籍: 後任はマクラーレンの最高デザイン責任者を務めたトビアス・シュールマン氏(46)。超高級車のデザインを知り尽くした俊英
- 伝統と革新の融合: 911のアイデンティティを維持しつつ、全固体電池や自動運転時代を見据えた「次世代ポルシェ」のデザイン言語構築へ
ポルシェは「現在のままでは前に進めない」と考えているのかも
「ポルシェはデザインを変えないのではない。変えないために、進化し続けているのだ。」
この哲学を20年以上にわたって体現してきた、ポルシェのデザイン責任者マイケル・マウアー氏が、ついにそのバトンを次世代へと繋ぐことに。
2026年1月29日、ポルシェAGは新たなデザイン責任者として、英国マクラーレン・オートモーティブからトビアス・シュールマン氏を招聘したと発表していますが、ポルシェは(メルセデス・ベンツ同様に)デザイナーの就任期間が長いことでも知られており、ポルシェ80年近い歴史の中で、デザインのトップに立つのは彼でわずか5人目となります(しかも今回はポルシェ”生え抜き”ではない)。
-
-
ポルシェのデザイン哲学:「ヒーロー」「反逆者」「クリエイター」が示すブランドアイデンティティとは
Image:Porsche | ポルシェをデザインすることは「容易ではない」 | あまりにも強烈な「デザインアイコンと進化との調和」にデザイナーの六竜が現れる フォルクスワーゲングループのデザイン責任 ...
続きを見る
この極めて稀な「世代交代」は、電動化とデジタル化が加速するスポーツカー界にどのような衝撃を与えるのか。
新旧リーダーの足跡と共に、その意義を考えてみましょう。
マイケル・マウアーが築いた「黄金の20年」
まず、2004年に就任したマウアー氏は、ポルシェが「単なるスポーツカーメーカー」から「世界最高のプレミアムブランド」へと飛躍する過程をデザインで牽引しました。
-
-
ポルシェのデザイナーがマカンEVの難しさについて語る。「ポルシェらしさを守ると古臭く見える」「新しすぎると、それはポルシェではない」
| ポルシェは結果的に「EVのデザインとガソリン車のデザイン」を区別しないことにしたようだ | ただし異なるパワートレーンを積む両者を「ポルシェらしく」見せることには困難を伴う さて、ポルシェは「マカ ...
続きを見る
マウアー氏が手がけた代表的モデル
- 911(997 / 991 / 992型): アイコニックなシルエットを守りつつ、現代的な洗練を注入
- パナメーラ(2009年〜): ポルシェ初の4ドアセダンという難題を、一目でポルシェとわかる形で実現
- 918スパイダー: ハイブリッド・スーパーカーの新たな基準をデザイン
- タイカン: ポルシェのデザインDNAを完璧に「電気自動車時代」へと適合させた
ポルシェのマイケル・ライターズCEOは、「マウアー氏はポルシェの一時代を築いた。彼の仕事はブランドのスタイルを形作り、今後も色褪せることはない」と、その功績を最大限に讃えています。
-
-
【ポルシェ新CEO決定】元マクラーレンCEOミヒャエル・ライターズ博士が2026年1月より「出戻り」就任。オリバー・ブルーメ氏はVWグループCEOに専念へ
Image:Porsche | ポルシェ、新CEOにミヒャエル・ライターズ博士を任命 | ついにポルシェCEO「後任」が決定 ポルシェが「同社の監査役会が2025年10月17日、2026年1月1日付で ...
続きを見る
新総帥:トビアス・シュールマンの正体
46歳のシュールマン氏は、まさに「ハイエンド・デザインのスペシャリスト」。
マウアー氏と同じくドイツのプフォルツハイム大学で自動車デザインを学んだ後に名だたる超高級ブランドを渡り歩いており、注目すべきは(ポルシェ属する)フォルクスワーゲングループに「出たり入ったり」を繰り返していること。
-
-
マクラーレンのデザイナーが交代!ベントレーのチーフデザイナーがその職を辞して参戦、今後新しいデザイン言語の練り直しやカスタム車両の製作にも携わる
| 例によってフォルクスワーゲングループからの流出となり、同グループではよほど生き残りが難しいらしい | マクラーレンはCEOの交代以降、急速にその変革を進めている さて、マクラーレンはそのCEOを「 ...
続きを見る
シュールマン氏の華麗なるキャリア
| 期間 | 所属ブランド | 主な実績・役職 |
| 2005年〜 | フォルクスワーゲン | デザイナーとしてのキャリアをスタート |
| 以降 | ブガッティ | エクステリア・デザイン責任者 |
| 2010年代 | アストンマーティン | エクステリア・デザインのリーダー |
| 2021年〜 | ベントレー | 限定車「バトゥール」のデザインに大きく貢献 |
| 2023年〜 | マクラーレン | 最高デザイン責任者(Chief Design Officer) |
-
-
【至高の1台】ベントレー最新作「バトゥール コンバーチブル #4」発表。世界初、プラチナ3Dプリントを採用した究極の「動く芸術(宝飾)品」
Image:Bentley | ベントレーはバトゥールに「貴金属」を採用し付加価値を高めている | この記事の要点まとめ 世界初の4つの試み: 3Dプリントによるプラチナ装飾、オーナーのサインを再現し ...
続きを見る
なお、ポルシェはつい最近、マクラーレンから「ポルシェへの出戻り」となるマイケル・ライターズ氏をCEOに迎えていますが、マクラーレンからデザイナーを迎えたことは、マイケル・ライターズ新CEOの意向も大きく関与していると考えるのが妥当です。
つまるところポルシェのトップ(CEO)はマクラーレン出身、そしてデザイン部門のトップもマクラーレン出身ということで大きな転機を迎えているのがポルシェでもあり、シュールマン氏の「超高性能スポーツカーを美しく仕立てる」手腕が、今後のポルシェにどう反映されるのかに注目が集まっています。
-
-
ポルシェ前CEOが「マカンのガソリン車廃止は間違いでした」と異例の告白。2028年に実質的後継をもって“復活”へ
| ポルシェのトップが認めた「EVシフト」の誤算 | 数年前のフォルクスワーゲングループは全体的に「客観的な判断を欠いていた」 「あの時の判断は、今の状況では正しくなかった」——。 2026年1月1日 ...
続きを見る
市場での位置付け:なぜ「今」交代なのか?
ポルシェは現在、歴史的な転換点にあります。
- EVシフトの加速: マカン、カイエン、そして718ボクスター/ケイマンの完全EV化が目前に迫っている
- 中国市場の激変: ハイテクでアグレッシブなデザインを好む中国市場での苦戦を受け、新たな「視覚的インパクト」が必要とされている
マウアー氏は「時代を超越したデザインには、耐久性と新しい刺激の両方が必要だ。ポルシェの戦略的再編を考えれば、今が新しい視点を取り入れる絶好の機会だ」とコメント。
シュールマン氏は、伝統の「守護神」から、未来を切り拓く「イノベーター」としての役割を期待されており、ポルシェを大きく変換するために「召喚」されたのだとも考えられます。
もう一つ補足するならば、ポルシェ含むフォルクスワーゲングループは基本的に「上位職には生え抜きを起用する」ことが多く、グループ内で積極的に人材を異動させつつ(10年が目安)各グループで修行を積ませて人材を育てる傾向も。
-
-
VWが「2026年に発表するモデルから大幅にデザイン変更」とコメント。元ベントレーのデザイナーのもと「原点回帰」「再び愛されるブランドに」
| フォルクスワーゲンは現在大きな転機を迎えており、この危機を乗り越えなければ未来はない | ただしフォルクスワーゲンにはそれほど「長い時間」は残されていないのかも 既報の通りフォルクスワーゲンは現在 ...
続きを見る
しかしここ最近では「ほかの自動車メーカーから引き抜いた人物をいきなりトップに」据えることも珍しくはなく、これは「もはや自分たちのグループ内だけの人材や考え方では限界に達している」と考え、他社の人材や思想を積極的に取り入れる方向に動いていることを意味しているのかもしれません(つまりはかなりの危機感を感じている)。
-
-
もはやクルマのデザイン、機能は「中国の嗜好」に合わせねば自動車メーカーは生き残れない。VW/ポルシェのデザイナー「中国市場のために変革の必要性を感じている」
| いつの間にか、中国市場においてフォルクスワーゲンは「支配者」から「落伍者」となりつつある | これを挽回するには、今までの常識に囚われない変革を目指さねばならない さて、フォルクスワーゲンは「かつ ...
続きを見る
-
-
ベントレーが「ボルボのデザイナー、ロビン・ペイジを獲得した」と発表。なお同氏はもともとベントレー出身で初代コンチネンタルGTを手掛ける
| ベントレーは前デザイン責任者の辞任にあわせ、次世代モデルのデザイン言語をいったん白紙に戻す可能性もありそうだ | それにしてもベントレーのデザイナーはよく交代が報じられる さて、ベントレーが「ボル ...
続きを見る
結論:911は変わるのか?
そこで気になるのは「911のデザインがどうなるか」。
シュールマン氏は、ブガッティやマクラーレンといった「機能が形を決める」ブランドでの経験が豊富な人物で、よってポルシェにおいても「スポーツカーとしての必然性」を研ぎ澄ませつつ、よりシャープでテクニカルなディテールを導入してくる可能性が推測されます。
伝説から新鋭へ。
2026年2月1日、シュールマン体制のポルシェ・デザインが始動することになり、彼が描く最初のスケッチが世に出るまで、世界中のファンは期待を持ってその瞬間を待つことになりそうですね。
-
-
ポルシェのデザイナー「911はすでに大きくなりすぎている。原点に立ち返りコンパクトで軽量なスポーツカーへと回帰させたいが、規制や制約によって大きく重くなることは避けられない」
| それでもポルシェはメルセデス・ベンツやBMWに比較すると軽量性を維持しているほうである | 今後少なくとも10年以内は「小型化・軽量化された911」を見ることはできないだろう 現代ではほんの一握り ...
続きを見る
合わせて読みたい、ポルシェ関連投稿
-
-
36年の軌跡: ポルシェの夢を形作り続けたデザイナー、グラント・ラーソンが引退へ。ボクスター、カレラGTのデザインを手掛ける
Image:Porsche | 伝説のデザインと顧客の夢を繋いだ36年間 | ポルシェの大きな節目の影に「必ず」存在した人物でもある 2025年末をもって、ポルシェの特別プロジェクトデザイン担当ディレ ...
続きを見る
-
-
「ポルシェ」と「ポルシェデザイン」はどう違う?機能主義の確立から現代の工業デザイン再定義に至る変遷、そして現在
| ポルシェとポルシェデザインとは「近くて遠い、遠くて近い」関係性である | 序章:ポルシェデザインの特異性と専門的定義 ポルシェデザイン(Porsche Design)は、単にポルシェのライセンス製 ...
続きを見る
-
-
「そうだ、フロントにエンジンを積んでみよう」「911を生産中止から救った男」など、ポルシェ75年の歴史において転換期となった年、そして人物8選
| ポルシェはこの75周年を時代のうねり、数々の転換期とともに過ごしてきた | そして現在の成功は、いくつかの大きな判断の上に成り立っている さて、ポルシェは今年でスポーツカーの生産を開始して75周年 ...
続きを見る
参照:Porsche




















