| 0-100km/h加速はケイマンGT4を凌駕する |
ポルシェが「718ケイマンGTSと718ボクスターGTS」に対し、4リッター・フラットシックスを積んだ「718ケイマン/ボクスターGTS 4.0」を追加。
これにはちょっと説明を要するところで、まずボクスター/ケイマンはそれまでの981から”718(コードネームは982)”へと移行するにあたり、それまでに採用していた自然吸気フラットシックス(水平対向6気筒)を捨てて水平対向4気筒ターボへと移行しています。
例外としては「ケイマンGT4」「ボクスター・スパイダー」が4リッター・フラットシックスを積むものの、これら以外の「ベース」「S」「GTS」「T」といったモデルはすべて4気筒ターボエンジンを積んでいるワケですね。
なぜポルシェは「一度捨てた」水平対向6気筒に戻るのか
この4気筒ターボエンジンは、それまでの6気筒自然吸気に比較して「パワフル」「トルクフル」で扱いやすいという特性を持ち、しかし「ポルシェらしさ」を失ったのもまた事実。
ポルシェのエンジンというと「鋭い吹け上がり」「吹け上がりよりも遥かに速い回転落ち」が特徴だったものの、4気筒ターボになってからはアクセルを踏んでも「ターボラグ」、アクセルを抜くと「再加給に備えてエンジン回転数を意図的に落とさない」設定を持っていて、自然吸気世代のポルシェに乗ってきた人にとっては「え?」という味付けを持っているのも間違いのないところ(ぼくはこれまで4台のポルシェに乗り、981ボクスター、そして718ケイマンも所有してきた)。
そういったこともあってか981世代のボクスター/ケイマンの人気が再燃して中古相場も高めに推移しており、とくに北米や欧州などポルシェ・エンスージアストの多い地域では「新車の718が売れない」という状況も発生しているようです(逆に中国では売れているらしい)。
ポルシェの主役はもはやカイエン!2019年の北米では36%の構成比。一方718ケイマン/ボクスターは26%も販売が下がり影響力を失う
そして「こういった傾向」は718シリーズ発売直後からあったと見え、ポルシェはこれまでにも(比較的早い時期から)「謎」な718ケイマン、そして718ボクスターのプロトタイプを走らせており、これがどうやら今回発表された「自然吸気4リッター水平対向6気筒エンジン搭載モデル」であったということになりそうです。
そして今回、718ボクスター/ケイマンGTSに追加で用意される4リッター・フラットシックスの出力は400馬力(394HP)。
これは718ケイマンGT4、718ボクスター・スパイダーの420馬力よりも意図的に下げられた数字を持っていて、これは「ヒエラルキーを守るため」ということになりそう。
ただ、0-100km/h加速については、6MTを採用する718ケイマンGT4/ボクスター・スパイダーの4.4秒に対し、PDKを有する718ケイマン/ボクスターGTSでは「4.3秒」をマークし、逆転現象の発生も。
ちなみに4気筒ターボ(365PS)エンジン搭載の718ケイマン/ボクスターGTSの0-100km/h加速は6MTでは4.6秒、PDKでは4.1秒(スポーツクロノ装着時)。
いかに4リッター水平対向6気筒といえど、ターボパワーに対してはやや遅れを取るということなのかもしれません。
参考までに6気筒エンジン搭載の718ケイマン/ボクスターGTSの最高速は293km/h(718ケイマンGT4の最高速は304km/h、718ボクスター・スパイダーは301km/h、4気筒ターボの718ケイマン/ボクスターGTSのは290km/h)。
この「4リッター自然吸気」を積んだ718ケイマン/ボクスターGTSの外観については現行GTSとほぼ変わらず、画像を見る限りではサイドに「GTS4.0」のステッカーが見えること(おそらくオプション)、そしてリアだとテールパイプの位置が異なることくらい(センターではなく、左右両側に少し押しやられている)。
その他の変更点としてはさらに低められたサスペンション、PSM、PTV(ポルシェ・トルクベクタリング)、スポーツクロノパッケージが標準に。
加えて外装にはブラックアクセント、内装にはアルカンターラが用いられています。
受注開始は今年の夏からだとされ、つまりモデルイヤーとしては「2021」から。
価格についてはアナウンスがないものの、718ケイマンだと、「GT4」の12,599,074円と「GTS(4気筒)」の10,246,296円との中間あたりになるだろう、と考えています。
今後どうなるポルシェのGTS
そして現在ちょっとあやふやなのが「GTS」の存在。
これは911も同様ですが、GTSのポジショニングは「S以上、GT+数字モデルとの中間」。
そして718ケイマン/ボクスターは標準でターボエンジンを搭載し、911カレラGTSもそれは同様。
対して「GT3」「GT4」は自然吸気エンジンを積んでいて、同じ「GT」でも「GTS」と「GT+数字」モデルとの間には大きな(そして明確な)差異が存在します。※GT2は例外だと認識している
ただ、ポルシェは「GT」をサブブランド化したいと考えているはずであり、よって現在「通常ラインナップ寄りの」GTSを、「GT3/GT4寄り」にしたいと考えていて、その第一歩が今回の「自然吸気エンジン搭載」グレード追加なんじゃないかと考えています。
そして、可能であればポルシェは911カレラGTSに対しても同様の対応を行い、ゆくゆくは「GTS=自然吸気エンジン搭載」、つまりGTの名のつくモデルはすべからく自然吸気搭載へと移行したいんじゃないかと思うのですね。
ポルシェ718ケイマンGT4に積まれる4リッターNAエンジンは911GT3のデチューン版ではなく新設計だった!そしてせっかく新設計したエンジンはほかモデルにも採用される可能性が大
VIA:Porsche