| 911GT3 ツーリングをベースに911GT3 RSのコンポーネントを投入、そしてボディは軽量なカーボンファイバー |
さらには軽量クラッチとフライホイールも
さて、ポルシェが先日予告していたポルシェ911の新たなる限定モデル「911 S/T」を発表。
今年はポルシェがスポーツカーとしての歩みをはじめてから75周年、ポルシェ911誕生60周年、ヴォルフガング・ポルシェ生誕80周年というメモリアルイヤーですが、この911 S/Tについては「ポルシェ911の60周年という意味合いが強調されたモデルとなっています。
ポルシェ911 S/Tとはどんなスポーツカーなのか?
まずポルシェ911 S/Tについて簡単に説明すると、「911GT3RSの525馬力エンジン(4リッター自然吸気フラットシックス)が与えられ、それに軽量フライホイールとシングルマスフライホイール、ショートレシオの6速マニュアル・トランスミッションを組み合わせ、さらにボディにカーボンファイバーを(一部)使用することで992世代の911としては最も軽くなった1,963台のみの限定モデル」。
なお、オフシャルフォトでのブラックの個体は「標準」モデル、そして水色というかグレーの個体はオプションのオプションのヘリテージ・デザイン・パッケージを装着したもの。
このオプションのヘリテージ・デザイン・パッケージは991世代の911スピードスター投入時に設定されたオプションだと記憶しており、ざっと言えば「(その名の通り)クラシカルなルックスを実現するアピアランスパッケージ」。
よって、通常モデルだとブラックのパーツが・・・。
シルバーへ。
さらにはシルバーのパーツの一部が・・・。
ゴールドになったり。
そのほかにも様々な仕様変更がありますが、内外装ともに「1960年代から1970年代初期の美的感覚を強調した」オプションということになりますね。
なお、このボディカラーは専用色の「ショアブルーメタリック」、そしてノーズ、ホイール、ステアリングホイール、キーに装着されるポルシェクレスト(エンブレム)は初代911と同じデザインが採用される、とのこと。
エンジンフード上のガーニーフラップは「標準装備」です。
ちなみにインテリアにも変更があり、標準仕様だとこういった「スパルタン」な雰囲気ですが・・・。
ヘリテージ・デザイン・パッケージを装着するとレトロでエレガントな雰囲気に。
ポルシェ911 S/Tは俊敏性とエンゲージメントを重視
なお、このポルシェ911 S/Tのオマージュ元である「ポルシェ911ST」は1970年代に少量が生産された軽量スパルタンなレーシングカー。
そしてこの911 S/Tもそのレシピを(しかし公道走行可能なモデルとして)再現したと考えてよく、まずその重量は1,380kg。
この1,380kgというのは911GT3の1,418kg、911GT3 RSの1,450kgよりも大幅に軽く、つまりは「とんでもなく軽い」ということがわかるかと思います。
軽量性を追求するためには上述のカーボンファイバー製ボディや軽量クラッチ(これは軽量化というよりはレスポンスを追求したものではある)、フロント20インチ、リア21インチの軽量センターロックマグネシウムホイールが採用されていますが、ポルシェは「あらゆる回転アセンブリを軽量化した」と述べているので、そのフィーリングは軽量化された数字以上にシャープなのだと思われます。※おそらく、軽量クラッチに起因してクラッチミートがシビアなのだと思われる
装着されるタイヤはミシュラン・パイロットスポーツカップ2(フロント255/35、リア315/30)、もちろんブレーキはカーボンセラミック。
そして軽量フライホイールと軽量クラッチ(あわせて10.5kg軽量化)とともに採用されたのが「ショートシフター」で、これは視覚的にもそれとわかるよう、シフトノブそのものが大幅に短縮されています。
その他の軽量化対策としてはリチウムイオンスターターバッテリー、軽量ガラス、断熱材の削減が挙げられ、ボンネット、ルーフ、フロントフェンダー、そしてドアには、リアスタビライザーバーとシャーパネルに使用されているのと同じカーボンファイバー強化プラスチックが用いられています。
パフォーマンス的な数字だと0-100km/h加速3.7秒、最高速は300km/hとなっており、”数字だけ見ると”トップレベルの速さを持つように見えないものの、このクルマの真髄は「停止状態からの加速」ではなく「走っている時の、カミソリのようなレスポンス」にあるものと思われ、数字に現れない実用域の俊敏性は群を抜いているものと思われます。
実際のところ、ポルシェはこの911 S/Tについては「ドライバーの求める”ピンポイント”でのレスポンスを実現する」としており、とくにアクセル操作、そしてブレーキ操作に対する反応は「非常に、非常に正確」だとも。
基本的にこの911 S/Tは「911 GT3ツーリングをベースに、911 GT3RSのエッセンスを盛り込んだ」クルマではありますが、特筆すべきは「この世代で唯一、リアアクスルステアリングを持たないダブルウィッシュボーンフロントとマルチリンクリアサスペンションを採用したモデル」でもあり、これもまた正確無比なハンドリングに貢献しているのだと考えられます。
ポルシェ911 S/Tのインテリアも特別仕様
ポルシェ911 S/Tのインテリアでは、ファブリックとレザーを組み合わせたカーボンファイバー製バケットシート(オプションで4ウェイ調節可能なスポーツシートプラスを選択可能)が装着され、ヘリテージ・デザイン・パッケージを選ぶとクラシックコニャックとブラックのピンストライプというフィニッシュに。
なお、メーターの「グリーン表示」は当時の911をイメージしたものですね。
ダッシュボードにはクラシカルな911ロゴ、そしてシリアルプレート。
見たところ、エアコン吹き出し口までもがレザーにてカバーされるもよう。
キックプレートには「911 S/T」のロゴ、そしてマットのエッジにはレザーの縁取り。
ドアオープナーは「プルタブ」、しかしレトロなレザー巻き。
ここまで特別な仕様を持つからには相応の価格を持っており、北米での価格は29万ドルに設定され、これは日本円に換算すると4145万円に相当するので、911スポーツクラシックの(日本国内価格である)3724万円よりも高額な設定です。
よって、日本国内価格についてはまだ発表がないものの、「もっとも高価な911」となるのは間違いないのかもしれません。
参考までにですが、ポルシェはフォルクスワーゲングループの中でのトップクラスの利益率を誇っており、さらにそのボリュームも大きく、EV推進によって多額の出費を要求される同グループの利益率を20%へと向上させるため、「値上げ」「限定モデルの販売による利益の獲得」を中期目標へと盛り込んでおり、今後も「高額な限定モデル」が相次ぎ登場することになりそうですね。
-
ポルシェが「ラインアップ見直し」「さらなる限定モデル投入」「ワンオフやオーダーメイド強化」を発表!高価格化、高収益化を目指す「Road to 20」計画を推進
| こういった戦略を採用できるのは歴史があり、モータースポーツでの実績があるポルシェならでは | ポルシェはフォルクスワーゲングループの最重要ブランドとして利益を牽引 さて、ポルシェが年次カンファレン ...
続きを見る