| 加えて、ポルシェが「売れない」と考えたこのクルマが、後のポルシェにとって重要な「RS」サブブランド構築のきっかけになることも想像できなかったに違いない |
本当に世の中何がどうなるのかわからない
さて、ポルシェUSAのクラシック部門が珍しいカラーの911カレラRS 2.7、通称”ナナサンカレラ”を販売していると話題に。
ナナサンカレラというとホワイトもしくはイエローの外板色を持つことが多いように思いますが、この個体については「オリーブ」だと紹介されています。
ちなみに価格は995,995ドル(現在の為替レートにて約1億5100万円)なので、かろうじて「100万ドルを割っている」ということになりますが、この価格はナナサンカレラの価格が驚くべきレベルにまで上昇したということを示しています。
このナナサンカレラの走行距離はわずか9,722km
なお、このナナサンカレラの価格が非常に高額な理由の一つは「走行わずか9,722km」ということ。
来歴についてはアナウンスされていないものの、オプションとして「85リットル(大型)燃料タンク」「15インチ×6Jサイズ(タイヤは185/70)の鍛造フックス製ホイール」の装着が紹介されており、これまでのサービス記録など書類も完全に揃っている、とのこと。
ナナサンカレラは(1973年モデルとして)1972年のパリ・モーターショーにてデビューしており、初代911のFシリーズ「911S 2.4」をベースに、より排気量が大きくパワフルなエンジン(2.7リッター水平対向6気筒、最高出力は210馬力、最大トルクは255Nm)を搭載し、軽量化のための構造変更を行い、さらには足回りを固めたという(現代のRSのモデルにまで繋がる)仕様を持っています。
車体重量はわずか975kgにとどまり、0-100km/h加速は5.6秒、最高速度は241km/hというスペックを誇りますが、やはり印象的なのはこの「ダックテール式リアスポイラー」の装着であり、これは911カレラRS 2.7で「はじめて」採用された装備です(これを考案したのは若きポルシェのエンジニアで、彼によって全体的にエアロダイナミクスが改善されている)。
当初は(モータースポーツ参戦のためのホモロゲーションを満たすため)500台のみが生産される予定だったといい、しかしいざ発売してみると注文が殺到し、結果的には1,525台が生産されることとなっていて、つまりはそれだけ「よりスポーティな911」を望む人が多かったということもわかります。
ただ、ポルシェとしてはこの911カレラRS 2.7が「売れる」とは考えていなかったといい、よって皮肉を込めて(歩みが遅い鴨になぞらえ、販売ペースもスローという意味で)このリアスポイラーにダックテールと名付けたそうですが、まさか当時開発に関わった人々も、このクルマが後のポルシェにとっての重要資産となり、「RS」というひとつのサブブランドに育つこと、そしてなによりも”これほどまでに高額になる”とは予想していなかったのかもしれません。
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