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ポルシェが再三の方針変更によって「ガソリン版マカン」の販売を継続するようだ。ただし現時点では「北米のみ」「当面の間」とされるもガソリン版マカンの生き残り模索を開始か

ポルシェ

| 北米ではガソリン版マカン、そしてEV版マカンとがしばし併売されることになるが |

ガソリン版よりも20%高額なマカンEVの販売を成功させることはより困難になるであろう

さて、ポルシェがタイカンの販売低迷とハイブリッドおよびガソリンエンジン車の需要増加を受け、販売戦略を再検討た結果、「アメリカ市場でガソリンエンジン仕様のマカンを”当面の間”販売し続けることを決定した」との報道。

ポルシェの北米法人の広報からの発表によれば、「ガソリンエンジン版のマカンは”当面の間”、現在の形式でアメリカ市場で販売され続ける予定で、新しい電動版マカンと並行して販売されることとなるもよう。

この並行販売の期間は、顧客の需要や規制要件に応じて決定されるそうで、たしかにポルシェは「2026年までにガソリン版マカンの生産を終了する」としていたため、今の時点での「併売」は以前の発表と矛盾しないものの、今回の発表はガソリン版マカンが予想より長く販売される可能性があることを示唆しています。

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そもそもマカンはなぜ生産が終了するのか

ポルシェは今年初めに”2026年までにガソリンエンジン版のマカンの生産を終了し、電動版のみを販売する”という計画を発表していて、実際に欧州市場では撤退済み。

ただしこれは需要の低さによるものではなく(実際にガソリン版マカンはポルシェにとって1、2を争うトップセラーである)、プラットフォームがEUにて導入されたサイバーセキュリティ規制を満たしていないためで、規制に準拠させるには非常に高額な費用がかかるから。

しかし北米市場ではこの規制が導入されておらず、特に変更を行わずとも販売を継続できるために今回の「延命」が図られることになったのだと思われ、しかしガソリン世代のマカンはすでに2014年から生産されており、2019年と2021年に2回のフェイスリフトを受けているものの、それでもプラットフォーム自体が古く、競争力を維持するにはさらなるフェイスリフトが必要だと思われます。

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特に、競合車種が新しいプラットフォームや広い室内空間、優れたテクノロジーを提供している中で、マカンはその立場を守るために大きな進化が求められることは間違いなく、ポルシェが予定通り「2026年でガソリン版マカンを終了させる」のであればこのままお金をかけずに継続販売されるのかもしれませんし、それ以降も販売を行うのであれば、「3度目の」しかし大規模なフェイスリフトが入るかもしれません。

なお、マカンが登場したときには「フルモデルチェンジを行い、将来に渡って何世代も」マカンの販売を行う予定であったものと思われ、しかしそこへ「強制的に電動化を行わねばならない」という予想外の要因が加わったため、ポルシェは「ガソリン版マカンはやがてピュアエレクトリック版マカンにとって代わられるであろう」という想定からガソリン版マカンを一世代限りで終了させることに決め、モデルチェンジを放棄したのだと推測していますが、ここへきて「想像したような電動化時代がやってこない」というさらに予想外の要因が加わることになったのが現在の状況であると考えられます。

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よって今回の「計画再考」となっているのだと思われますが、ポルシェは今後、効率的なガソリンエンジン車、パワフルなプラグインハイブリッド車、そして完全電動モデルを選べるようにする方針を採用しており、「顧客のニーズや各地域の電動モビリティの発展に応じ、2030年までに新車の80%以上の完全電動化を目指している」ものの、今後もその戦略は事情によって調整がなされるものと思われます。

そしてこれは「ポルシェの戦略が不安定」を意味するものではなく、現在の世の中、消費者の嗜好、経済状況こそが不安定であり、さらには国や地域によって導入される規制が異なること、そしてその規制が流動的であることから「固定された戦略を堅持すること」が賢明ではなく、「依然としてその長期的なビジョンを維持しつつ、顧客の嗜好や世界的なトレンドに合わせて柔軟に対応しながら、電動化を進めてゆく」戦略のみが会社を維持し成長に導くことができる唯一の方法であるという事実を指し示しているのだと思われます(事実、メーカー主導で”電動化のみ”を未来に掲げたフォルクスワーゲンが揺らぎ、顧客と市場にあわせて選択肢を多様化させたトヨタに勝利の女神が微笑んでいる)。

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