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| 手掛けたのはもちろんポルシェのパーソナリゼーション部門「ソンダーヴンシュ」 |
このカイエン、何が“異次元”なのか
- ポルシェが16年前のカイエンを“新車超え”クオリティに再生し、完全ワンオフのレトロ仕様へ
- 依頼主の夢「砂漠×70年代アメリカ」をそのまま再現。こんなポルシェは見たことがない
- 「メーカー純正」パーソナリゼーションプログラムが古いカイエンをここまで変えられるのかと驚愕するレベル
中東最大のポルシェイベント「アイコンズ・オブ・ポルシェ(Icons of Porsche)2025」にて、まさに“新しい時代のレストモッド”と言える特別なカイエンが披露されることに。
ここでは、その唯一無二の背景、仕様、Sonderwunsch(ソンダーヴンシュ)プログラムの意義までまとめて解説したいと思います。
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▼依頼者はアメリカの著名コレクター
ポルシェは今回、初代カイエン(E1型)を顧客のために“完全再構築”するというFactory Re-Commission(ファクトリー リコミッション / 再製造) を実施。
従来はクラシック911やカレラGTに限定されていたレベルの”純正カスタム”を、ついにカイエンにも適用したのがまず第一のポイントです。
なお、依頼主はアメリカの実業家、フィリップ・サロフィム氏。
彼の要望は明確で・・・。
「911 Spirit 70の世界観が忘れられない。あの“1970年代の空気”をカイエンでも味わいたい。」
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ベース車両は2009年式のカイエンGTS。
約50,000マイル(約80,500km)を走行しており、しかし状態は良好だったとされ、基本的には「構造の変更を行わず」、しかし追加要件はただ一つ――「アメリカ製エアストリームを牽引したいので、ヒッチメンバー(レシーバー)を付けてほしい」。
この時点で完成図が“ただのカスタムSUVではない”、実際にオーナーが使用することを前提としたカスタムであることが伝わってきますね。
■ 外装:Blackolive × マットブラック × オフロード仕様
完全に“70年代アウトドア”の雰囲気
- 外装色:Blackolive(Paint to Sample)
- 下部ボディ&ホイール:マットブラック
- オフロードタイヤ:トラクションとワイルド感を強調
- 牽引用:USレシーバーヒッチを新設
砂漠を走るエアストリーム牽引スタイルを視覚化し、“アメリカン70s × ポルシェ”という異文化融合が最高にクールです。
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■ 内装:Pasha(パシャ)柄 × イングリッシュグリーン
カイエンの室内には、70年代ポルシェの象徴「Pasha(パシャ)柄」 が大胆に採用されていますが、これはもちろん上述の「911スピリット70」に採用されたもの。
よってこのカイエンは「911スピリット70のカイエン版」ともいうべき存在なのかもしれませんが、細部をよく見ると、911スピリット70にあってこのカイエンにないもの、またその逆も見受けられため、オーナーは単に「911スピリット70の再現」を目指しただけではないようですね。
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▼インテリアの特徴
- イングリッシュグリーンのフルレザー(Leather to Sample)
- シートセンターとグローブボックス内部はにはパシャ テキスタイル(ブラック/オリーブ)
- ドアパネル&トリムはライトブラッシュド・アルミニウム
- 幾何学模様が“動き”を生むPasha柄により、唯一無二の存在感が完成
さらにはグローブボックス内側にまで「パシャ」をここまで大胆に使用したカイエンはこの1台のみかもしれません。
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■ Factory Re-Commissionとは?(ソンダーヴンシュの核心)
ポルシェのSonderwunsch(特別注文)は以下の3階層に分かれます。
- Factory Commission(新車に対する個別仕様)
- Factory Re-Commission(既存車を“新車として再製造”) ←今回これ
- One-Off(完全ワンオフ製作)
Factory Re-Commissionは本来クラシックモデル向けで、外装・内装の色や素材を根本から作り直す“フルリメイク”が可能となっており、ただし以下の条件があるのだそう。
- 車両をツッフェンハウゼンへ持ち込み
- 技術的可否の診断が必要
- 古い車両は修繕(レストア)がほぼ必須
- 個別オプション追加ではなく「車両全体のコンセプト再構築」が中心
今回のプロジェクトは、この条件に完璧に合致した“理想的な案件”といえます。
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■ 初代カイエン(E1)とは?
SUV市場を変えた“ポルシェの転換点”
- 初代登場:2002年
- 開発コード:Colorado
- 役割:
SUV市場へポルシェが本格参入
ファミリー用途×本格オフロード×スポーツ性能を融合 - 現在:年式の浅いクラシック(ヤングタイマー)として再評価が急上昇
まだ「そこまで古くない」ということでレストアにかかるコストもヴィンテージカーほど高くはなく、パーツの入手難易度も低いと考えられることから、今回のようなレストモッド需要は今後さらに増えると予想されます。
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■ (参考)主要ポイントまとめ
▼Sonderwunsch Cayenne(2009 GTS)
- ベース:2009 Cayenne GTS(80,500km)
- 目的:1970sレトロ × 砂漠 × 牽引旅行
- 外装:ブラックオリーブ × マットブラック
- 内装:イングリッシュグリーン × パシャ柄
- 特徴:USレシーバーヒッチ追加、オフロード仕様
- プログラム:Factory Re-Commission(既存車の再製造)
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■ 結論:カイエンは“ただのSUV”ではない。アイコンだ
今回のプロジェクトが示したのは:
- カイエンはクラシック化が進む“アイコン”であること
- 16年落ちでもポルシェは“新車として再生”できること
- ソンダーヴンシュ(Sonderwunsch)は単なるカスタムではなく“物語づくり”であること
- レストモッドの新たなトレンドは、SUVにも広がり始めていること
砂漠に向けて走り出す”この特別なカイエン”は、まさにポルシェが作る未来のクラシックそのもの。
そしてこういったカスタムを請け負ってくれるのも「ポルシェならでは」なのかもしれません。
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参照:Porsche




















