| マクラーレン「安いモデルは作らない」 |
超ハードコアなサーキットアニマル「600LT」を発表したばかりのマクラーレンですが、マクラーレン・ノースアメリカの代表、トニー・ジョセフ氏がメディアのインタビューに対し、アメリカでは「20万ドル(約2200万円)以下のクルマを売るつもりはない、と述べています。
加えて「スポーツシリーズ」がエントリーという位置づけになり、それ以下のシリーズを設定することもない、とも。
「スポーツシリーズの下もない」
マクラーレンはP1やセナを擁する「アルティメット」シリーズ、720Sの属する「スーパー」シリーズ、540/570系の属する「スポーツ」シリーズの三本柱を持っており、その柱を縦断する形でサブブランド「LT」が存在。
この「LT」については軽量化、エアロダイナミクス向上、究極のドライビングパフォーマンスを標榜しており、生産数量を絞った限定モデル、という位置づけとなっています。
なお、同じスポーツシリーズについても、もっとも求めやすい価格の「540C」はアジアほか一部地域のみの販売で、アメリカや欧州では「未導入」。
マクラーレンは現在「トラック22」プランに基づいて活動していますが、この方針は極めて明快。
「新型車の発表とエレクトリック化」が骨子となりますが、スポーツカーに集中するということが前提であり「SUVは絶対に出さない」。
マクラーレン「なんども言うがSUVは絶対にない。むしろハイブリッドとEVだ」
2015年に登場したばかりのマクラーレン570S。来年にはもう新型に切り替わりハイブリッド、自動運転装備
マクラーレンはすでにフルエレクトリック・スーパーカーをテスト中。「ただし30分でバッテリーが消耗しきってしまう」
マクラーレンは現在相当な勢いで販売を伸ばしており、2017年には全世界で3,340台を販売。
一方でランボルギーニは3,815台ですが、ウルスが軌道に乗れば、この「倍」は売れそう。
フェラーリは8,398台となっているものの、これは「販売を絞った」数字(商品を”売らない”ようにしている会社は世界広しと言えどもフェラーリくらいのものだと思う)。※マクラーレンはどこかのシェアを奪ったわけではなく、ランボルギーニもフェラーリも販売を伸ばしているのが驚異的
今後はアストンマーティンが「ミドシップスポーツ」へと参入してくることになるかも思われ、そしてレッドブルのノウハウを反映した究極のハンドリングマシンとなるであろうことは間違いなく、目下マクラーレンを脅かすであろう存在はアストンマーティンなのではないかと考えていて、もしそれが現実になった時、マクラーレンは「別の」方向性を検討する必要に迫られることになりそうです。
マクラーレンのチーフデザイナー曰く、マクラーレンは540C/570Sより下のエントリーモデルを作る予定はない、とのこと。
ポルシェ・ケイマンやボクスターのライバルを作る計画に対しても「No」で、それらのカテゴリーではマクラーレンのエクスクルーシブさを維持できないというのが理由のようです。
マクラーレンの車はF1のテクノロジーに基づいているのが特徴ですが、下の価格帯だと得意のカーボンバスタブシャシーを採用することが難しく、ほかメーカーとの差別化を出しにくいのかもしれませんね。
マクラーレンは市販車を展開する時に「総合メーカーを目指している」としていましたが、その時の計画どおり、2+2の570GTを計画中。
ただ、本当に4座化できるかどうかはちょっと疑問で、570GTのテストカーを見る限りはホイールベース、ドアのサイズは570Sと同等に見えます(乗り降りを考えるとドアは長くする必要があるかもしれない)。
そして、570Sのシャシーを見るととても4座化できる余裕はなく、となると新しくカーボンモノコックを作り変える必要があるわけですが、その場合は車体後半が新設計となってしまい、当然ながらコストは増大することが容易に予想できるわけですね。
そしてその場合、ミドシップというよりは「リアエンジン」に近いレイアウトになってしまうわけで、そうなるとマクラーレンが考えるパフォーマンスを発揮しうるかどうかが疑問になってくるわけですね。
乗降性を考えるとドア開口部も大きくならざるを得ないと思いますが、それはすなわち剛性の低下を意味することになり、重量増加、重量バランス悪化、剛性低下をマクラーレンは許容できるのかと考えるわけで、570GTは2+2ではないだろう、とぼくは考えています。
マクラーレンのデザイン責任者、フランク・ステファンソン語るところによると、「スポーツ・シリーズは今までと異なる客層を獲得することを意識している」とのこと。
その上で、シューティングブレーク(ワゴン)の存在は一考の価値がある、としているようですね。
現在スポーツ・シリーズ(570S、540C)はクーペ、そして時期発表のスパイダーで構成されますが、2018年までに新たなバリエーションが追加されることも公言されています。
これがシューティングブレークになるのかどうかは不明ですが、マクラーレンは当初よりシューティングブレークの存在を示唆したり、後部の積載性を増加させたモデルを検討したり、と可能性としては「大いにあり」なのかもしれません。
なおマクラーレンの現行車種はすべて「3.8リッターツインターボとカーボンモノコック(モノセル)、ミドシップ2シーター」という共通性を持っており、F1由来のスポーツ性能をアピールする分には良いですが、それに魅力を感じない人は興味を持てないラインナップです。
価格的・性能的な差異にとどまり、ユーティリティは皆一緒で、要はマクラーレンのパフォーマンスに魅力を感じる人がどのモデルを選ぶかという選択となっており、ブランド内での自食があるとも考えられます。
かつ、このカテゴリの4シーターは存在せず(フェラーリFFは上のセグメント、カリフォルニアはやや性格が異なる)、ここで4シーターもしくはシューティングブレークを投入すれば、フェラーリやランボルギーニでは獲得できない層を取り込める可能性もあるわけです。
ただし4シーターとなるとカーボンモノコックを新規設計せねばならず、市場規模的にその価値があるのか?と考えるとちょっと否定的にはならざるを得ません。
なおランボルギーニ・アヴェンタドールも以前から4シーター版のウワサがありますね。
マクラーレンが市販車部門を立ち上げて4年ですが、順調に業績を伸ばしている模様。
2014年は2103年に比べて18パーセントの伸びがあったそうですが(販売台数は1649台に)、570Sと540Cの投入によってさらに業績を伸ばしそうですね。
そしてこの「スポーツシリーズ」に新たに2つのボディタイプを追加することも公式に発表されたそうですが、これはおそらく先日話の出た「GT」、そして「スパイダー」だと思われます。
しかしながらすぐに発売というわけではなく、2016年と2017年に分けて発売されるようで、年ごとに新モデルを投入することで計画的に販売を伸ばすのでしょうね。
これによってマクラーレンは4000台規模まで販売を増加させる見込みですが、これはランボルギーニと同等の数値であり、スーパーカー市場において一定のシェアを持つ、ということを意味します。