| フェラーリにとっては「触れないほうがいい話題」だった |
ときどき報じられるフェラーリの訴訟関係。
今回はフェラーリが「250GTOの商標権を喪失」したという件が報じられていますが、フェラーリが争った相手というのが「フェラーリの元副社長」。
このフェラーリ元副社長であるダニ・バハー氏はフェラーリからロータスに移り、そこで一気に5つものコンセプトカーを発表するなどアグレッシブな展開を見せるものの、「あまりに急すぎてついていけない」というほか経営陣の反発にあって解任させられることに。
そこでイタリアはモデナ(フェラーリ本社の近く)に設立したのが自身の新会社「アレス・デザイン」です。
この会社では富裕層向けにワンオフや少量生産車を手掛けており、その一環として出てきた計画が「フェラーリ250GTOの復刻」。
当然フェラーリは黙っていなかったが
そうなると黙っていないのがフェラーリで、フェラーリは自身の持つ商標「250GT」を盾に、アレスデザインに対してその計画を取りやめるように要求を突きつけますが、アレスデザインの方は逆に「フェラーリはたしかに250GTOの商標を持っているが、2008年以降は自動車に対してそれを使用してない」として(250GTOの)商標不使用取消請求を欧州連合知的財産庁に対して申し立てることに。
なお、商標については国や地域によって差があるものの、「使用していなければ、第三者がその商標の取消を請求できる」という制度があります。
これは、「商標を使わないのに持ちっぱなし」だと、第三者がその商標を使用したサービスや製品を展開できなくなるという不利益を考慮したもので、日本の場合は「その商標を3年間使用していない」「そして使用していないことに対して正当な理由がない」場合にこの不使用取消審判を請求することが可能。
そして今回、欧州連合知的財産庁(EUIPO)が下した決断が「フェラーリは250GTOなる商標を使用しておらず、その正当な所有権を認められない」というもの。
つまりもはや「250GTO」という商標はフェラーリに属さず、取り消されてしまったということになり、これはフェラーリにとっては「ヤブヘビ」だったと言えそうです。
次に誰かが250GTOを登録しない限り、250GTOの商標は(自動車という分野においては)フリーになるということも同時に意味しますが、すなわちレプリカを製造できるという意味ではなく、その形状については「固有のものであって、その権利はフェラーリに帰属する」という判決も別途下されています。
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なお、フェラーリはちょっと前にも「プロサングエ」という商標(SUVに使用される可能性が高い)について争っていると報道されており、こちらもフェラーリの言い分は正当とはいい難く、フェラーリの商標担当者は少々脇が甘いのかもしれません。
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反面、フェラーリはその遺族の了承を得ず、勝手に「スティーブ・マックィーン」の名を冠した限定モデルを発売していて、実際に「アクター」と名称を変更しているところを見ると、これもフェラーリ側に落ち度があったと考えられます。
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アレス・デザインが作ろうとしていたのはこんなクルマ
そこでアレスデザインが計画していた250GTOですが、これはフェラーリF12ベルリネッタもしくは812スーパーファストをベースとし、250GTO風のボディを架装したクルマ。
「まんま250GTO」ではなくオリジナル要素の入っており、アレスデザイン曰く「250GTOの新解釈であってコピーではない」。
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さらに「パンテーラ」だとマズいので「パンサー」と命名した”デ・トマソ・パンテーラ風のクルマ(ランボルギーニ・ウラカンがベース)”も発表していて、アレスデザインはアレスデザインで「それはちょっと・・・」と思わせる部分もあるようです。
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