| 現時点ではこの新Hロゴを付与したモデルがグローバル展開されることがわかっているが、すでに展開しているe:Nなどとの統合については言及されていない |
現在、多くの自動車メーカーがEVに関して「仕切り直し」を迫られている
さて、ホンダがラスベガスにて開催中のCES(家電見本市)にて新しいコンセプトカー「SALOON(サルーン)」、「SPACE-HUB(スペース ハブ)」を公開し、新しいEVシリーズ「0(ゼロ)」をグローバルにて展開すること、そして次世代EVに採用する「H」マークを世界で初めて発表しています。
なお、新エンブレムは「原点を超えること」「挑戦と進化を追い求める」という企業姿勢を示したものだとアナウンスされていますが、これは1963年に設定された初代「H」マークに似たデザインを持っており、まさに”ホンダの原点を表すもの”だと言えるかもしれません。
参考までに、その後ホンダは1969年にこの「H」に四角い枠を付け(縦長だった)、1981年には現代のエンブレムっぽく四角の角が取れて今っぽい形状となり、1991年にはより丸くなり、そして2001年に現在のエンブレムが完成しています。
ホンダ「0(ゼロ)」シリーズとは
このホンダ「0(ゼロ)」シリーズは文字通りゼロからの出発をイメージしているのだと思われますが、ホンダいわく「これからの時代、ホンダが作りたいEVとは何かを見直した、新たなEVの価値創造を目指した次世代EVシリーズ」。
開発コンセプトには「Thin(薄い), Light(軽量), Wise(賢い)」を掲げており、これらの意味するところについては以下の通りです。
Thin:
フロア高を抑えた”薄い”EV専用プラットフォームにより、低全高のスタイルなどデザインの可能性を拡張するとともに、高い空力性能を実現していきますLight:
原点に立ち返って生み出した独自技術で、これまでのEVの定説を覆す軽快な走りと電費性能を実現していきますWise:
これまで培ってきた知見と知能化技術の進化により、クルマそのものが賢くなる、Honda独自のソフトウェアデファインドモビリティを実現していきます
これらに加えてホンダは「5つのコアバリュー」を掲げており、それらについては以下のように説明がなされています。
1.共鳴を呼ぶ芸術的なデザイン
デザインコンセプトは「The Art of Resonance(ジ アート オブ レゾナンス)」、そして「環境、社会、ユーザーとの共鳴」をテーマとし、見る者の共鳴を呼び起こし、暮らしの可能性を拡げるサステナブルなモビリティを提供する2.安全・安心のAD/ADAS
Honda 0シリーズでは、Honda SENSING Eliteの技術を活用したADAS(先進運転支援システム)の採用に加え、2020年代後半には、AD(自動運転システム)を採用し、より多くのお客様が手の届く自動運転車として展開する3.IoT・コネクテッドによる新たな空間価値
Honda独自のビークルOSを軸とするIoT・コネクテッド技術により「運転して楽しい、使って楽しい、繋がって楽しい」という価値の提供を目指す4.人車一体の操る喜び
Honda独自の電動化技術とダイナミクス技術により、軽快で、⼼も⾝体もクルマと⼀体になる⾼揚感を得られる次世代の操る喜びの提供を目指す5.高い電費性能
ハイブリッド車の開発などで培った電動化技術をベースにエネルギー効率を突き詰め、高い電費性能を実現し、具体的には電気変換効率やパッケージングに優れたe-Axle(イーアクスル)、軽量で高密度なバッテリーパック、高い空力性能により、バッテリー搭載量を最小限にしながら充分な航続距離を目指す
ホンダとしては、従来のEVのように「航続距離を確保するために大きなバッテリーを積み、結果的に車体が大きくなる」といった常識を覆すことを狙っており、そのためには根本からEVの設計を見直し、そして軽量なバッテリー、優れたエアロダイナミクスを目指すとコメント。
なお、ホンダは北米だとGMとの共同開発にてプロローグを、日本や欧州だとホンダeを、そして中国と欧州ではe:Nシリーズを展開していますが(ホンダeはすでに終了)、今後ホンダのEVが「0」に集約されてゆくのか、それとも現在のように各地にてローカライズされた展開を行いつつも「0」を投入してゆくのかについてはアナウンスがなされておらず、このあたりは追って発表があるのかもしれません。
いずれにせよ、EVの開発は非常にコストがかかり、かつその技術は日進月歩であることを考えると、どこかでEVの開発を一本化し、資金とテクノロジーをコントロールする必要がある、とは考えています。
現在のEV市場においては、中国製電気自動車の猛攻にさらされているという事情があり、ほんの数年前とはまったく状況が異なっています。
つまり、ちょっと前までは、日米欧の既存自動車メーカーが内燃機関を搭載する従来の自動車同様に、EV時代においても業界をリードすると考えられていて、各社ともその前提をもとに計画を進めていたわけですが(自社のガソリン車をEVに置き換えることでシェアを落とさずにラインアップの電動化を行えると考えていた)、予期していなかった安価な中国製EVの台頭によって大きくシェアを奪われることに。
よって既存自動車メーカーは、今までの計画を白紙撤回して中国製EVに対抗できる低コストEVの開発を進めたり、価格面以外の付加価値をもたせることで中国製EVに対抗しようとしたり、はたまたEVへの投資を減らし、ハイブリッドやPHEVに注力しキャッシュフローを最適化するといった戦略への変更に迫られていて、今回ホンダが発表した「Thin(薄い), Light(軽量), Wise(賢い)」「5つのコアバリュー」についても”今後を生き抜くための”新しい戦略なのだと思われます。
ホンダが「0(ゼロ)」シリーズの発表を行ったプレスカンファレンスはこちら
合わせて読みたい、ホンダ関連投稿
-
ホンダには「20年前、2億円近くを投じて制作し、10回しか放映しなかった」TVCMがあった。しかし当時最高のサイトアクセスを記録し、今なお語り継がれる伝説に【動画】
| 当時わずか3カ国、10回しか放映されなかったものの、ネットの普及によって世界中にて視聴される人気作品に | そしてこれほど「ホンダの精神」を表している動画はほかにないかもしれない さて、ホンダは昔 ...
続きを見る
-
ホンダがプレリュード・コンセプトに関しさらに言及。「これはコンセプトというより試作車」「2020年代半ばに発売を目指す」「サーキットを走るようなクルマではない」
| 現時点で新型プレリュードは「ハイブリッド、4人乗り」になるのはまず間違いなさそう | この時代にスペシャルティクーペを発売するホンダの心意気には喝采を贈りたいところだが さて、ホンダはジャパンモビ ...
続きを見る
-
日本で初めて乗用車に「レッド」を採用したのはホンダだった。2001年に正式に「ホンダレッド」としてコーポレートカラーにも用いられるようになった経緯とは
| 意外なことであるが、当時は法律によって「レッド」を乗用車のボディカラーに使用することは禁じられていた | ホンダの情熱が法律を変えさせ、乗用車の歴史における新しい1ページを開くことに さて、ホンダ ...
続きを見る
参照:Honda