
| 半導体不足はいまでも自動車業界を苦しめる |
この記事の要約
- 日中で稼働停止: 中国の広汽本田(GAC Honda)全3工場と、日本国内(鈴鹿・埼玉)で一時停止
- 原因は供給難: オランダの半導体大手「ネクスペリア」を巡る地政学リスクが波及
- 回復の遅れ: 11月末の正常化予測から一転、供給網の混乱が長期化
- 業績への懸念: 販売予測を下方修正し、株価も下落。納車時期への影響は必至
ホンダを襲う「半導体不足」の再来
ホンダは2025年12月18日、(パワーウインドウを制御する)半導体不足を理由に、中国と日本の複数の工場で完成車の生産を一時停止・減産することを明らかにしていますが、これは11月に「生産状況は正常化に向かう」としていた見通しを覆す形となり、市場に衝撃が走っています。
特に中国市場はホンダの世界生産の約2割を占める最重要拠点でもあるため、今回の停止は年末年始の需要期における供給に大きな影を落としています。
車種概要・停止の背景:なぜ「今」止まるのか
今回の生産調整の直接的な引き金となったのは車載半導体大手「ネクスペリア(Nexperia)」を巡る供給トラブル。
- 地政学的リスク: オランダ政府と中国の対立により、Nexperia製チップの輸出が停滞。ワイパーやパワーウィンドウなどの制御に不可欠な汎用チップが不足する
- 特定メーカー依存: 一部の部品で代替が利かず、ホンダは北米やメキシコ工場に続き、日中のメインラインも停止せざるを得ない状況に追い込まれる
つまるところ「地政学リスク」が直接的な影響であり、改めてパーツの供給を「特定の地域やサプライヤーに依存すること」の危険性が明らかになった形です。
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生産調整のスケジュールと影響範囲
| 拠点 | 停止・減産期間 | 対象・影響 |
| 中国 (広汽本田) | 12月29日 〜 1月2日 | 全3工場が完全に停止 |
| 日本 (鈴鹿・埼玉) | 1月5日 〜 1月6日 | 完成車ラインを停止 |
| 日本 (減産期間) | 1月7日 〜 1月9日 | 当初計画より生産台数を削減 |
| 北米・メキシコ | 10月〜11月 | 既に減産・停止を実施済み |
市場での影響と今後の見通し
ホンダはこの供給不足を受け、2025年度の世界販売計画を当初の362万台から334万台へ下方修正しており、投資家の間でも懸念が広がり、東京株式市場ではホンダ株が一時下落しています。
競合するトヨタや日産も半導体問題には直面しているものの、今回ホンダが特に深刻な影響を受けているのは(上述の)特定のサプライヤーへの依存度や在庫戦略の差によるもので、現時点ではホンダ以外での影響は発生していないようですね。
新車購入検討者は「早めの相談」が吉
今回の生産停止は「供給網の不安定さ」を改めて印象付ける形となり、1月中旬以降の稼働については「調達状況を見ながら判断する」としているため、人気車種の納車期間がさらに延びる可能性も否定できません。
なぜ「”たかが”ウインドウ制御チップ」で車が作れない?
現代のクルマは「走るコンピュータ」ともいうべき存在で、1台につき数百個から数千個の半導体が使われており、そのうち、たとえ数円の汎用チップが1つ足りないだけでも「安全基準を満たせない」ため”完成車として出荷できず”。
今回不足しているNexperia製のチップは、パワーウィンドウやワイパーなど「地味ではあるが必須」な機能を司るため代替品への切り替えができないとされ、今から代替品を作ろうとしても膨大なテスト、そして場合によっては車体の再設計が必要となり、そのためホンダとしては「この容共が解決するのを待つしかない」といったところなのだと思われます。
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参照:CarNewsChina















