| そもそも、トヨタはなぜ86にターボエンジンを搭載してこなかったのか |
実際のところ、パワーがあったとしても高すぎて買えないようなクルマでは意味がない
さて、現在GR86は非常に高い人気を誇っており、実際のところぼくも素晴らしいクルマだと考えています。
ただ、多くの人にとって「アンダーパワー」だと受け止められているのもまた事実であり、これは搭載されるエンジンが自然吸気のFA24型(2.4リッター水平対向4気筒)、出力が235馬力 /250Nmにとどまるため。
現在は多くの自動車メーカーでターボエンジンが採用されており、そのため出力/トルクが比較的高く、先代のトヨタ86時代から「なんとかターボエンジンを積んでくれないものか・・・」と多くのファンが考えていたわけですね。
なぜGR86にはターボエンジン非搭載なのか
そこでなぜGR86にターボエンジンが積まれないのかについてですが、これは単に「コストの問題」だとれています。
ちなみにスバルはFA24のターボ版を持っていますが、こちらの最高出力は264馬力 /376Nmで、NA版に比較して大きく馬力とトルクが向上しているということがわかります。
そしてターボエンジンを積むということは、この馬力とトルクに対応すべく、クーリング、シャシー、サスペンション、ブレーキ等すべてを強化する必要があり、そうなると非常に高価なクルマとなってしまいます(新型フェアレディZは形式が同じZ34ながらも、ターボ化によって価格がかなり上がっている)。
これはGR86の開発を主導した、元トヨタ自動車スポーツ車両統括部長、そしてGazoo Racing Company GR開発統括部のチーフエンジニアだった多田哲哉氏(現在はトヨタを退職しており、なぜかNPO法人日本ソープボックスダービー協会の理事長に就任している)が以前から明言していることではありますが、トヨタのスポーツカーのエントリーモデルである86の価格が上昇してしまうのは本望ではない、ということになりますね。
なぜトヨタはターボエンジン搭載のGR86を?
そして今回報じられているのが、GR86に、GRヤリスやGRカローラに積まれる3気筒1.6リッターターボを押し込んだ試作車の存在。
これはオーストラリアのカーメディアがトヨタから直接得た情報だとして紹介していますが、GRカローラだと300馬力を発生するので、一気に65馬力も出力が向上している、ということに。
そしてGR86はもともと素性が素晴らしく、300馬力もあればとんでもなく楽しい走りができそうではあるものの、実際のところ、このGR86は「合成燃料(Eフューエル)の開発を行うための試作車」であり、市販を前提としたハイパフォーマンスモデルの試作車ではないのだそう。
ちなみにトヨタは水素を用いたGRカローラH2にてスーパー耐久に参戦していますが、トヨタはもともとEVのみという選択肢にならないようにしたいという意向を持っており、こういった様々な可能性を追求するのは「あらゆる国と地域の様々なお客様のニーズに、マルチパワートレーンで柔軟に対応し、できる限り多くの選択肢を提供するために実施する」といった基本方針のあらわれなのかもしれません。
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上述の通り、この「3気筒ターボ」搭載のGR86については現時点で市販の予定はなく、Gazoo Racingのエンジニアによれば「今のところ具体的な計画はありません」とのことで、「将来的には(市販を)考えていますが、今のところ、カーボンニュートラルな燃料を開発するために使っているだけです」というちょっとだけ市販の可能性を感じさせるコメントも。
なお、Gazoo RacingはこのG16E-GTSエンジンを搭載したGR86をスーパー耐久レースに参戦させることを決定しており、もしここで華々しい戦績を挙げ、大きな話題にあれば「市販」も検討の俎上にのぼってくるかもしれませんね。
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参照:CarSales