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| 期待された「GR」「レクサス」スーパースポーツの発表はなされず |
トヨタ「5ブランドプロジェクト」始動の背景:CM戦略の転換点
2023年10月13日、トヨタは(予告通り)新プロジェクトのスタートを発表。
このプロジェクトは、トヨタが現在持っている4つのブランド(トヨタ、レクサス、センチュリー、GR)、そしてグループ会社であるダイハツを加えた「5ブランド」のCM戦略をどうするかというメッセージから始まり、豊田章男会長はCM担当者たちに対し、普段は競合しあっているクリエイターたちが”今こそトヨタ全体を考えたCM戦略を練るよう”促すという流れから始まっています。
このCM担当者へのメッセージ動画は今年の4月頃、CM相談室の取り組みの中でクリエイターと直接会話をする場を設けるという流れの中で送られたものだそうですが、このメッセージをきっかけとしてさまざまな新しいCMが制作され、これこそがトヨタの新プロジェクトを紐解く鍵となるとされています。
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— トヨタ自動車株式会社 (@TOYOTA_PR) October 13, 2025
トヨタイムズ生配信中
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トヨタイムズ生配信スタートしました!
冒頭いきなり
こんなメッセージ動画が流れ
番組がはじまってます
そこからの豊田章男の生出演
▼こちらで配信中https://t.co/iZcSo5T3H2#新プロジェクト始動#配信中 https://t.co/2RvDRWBPer pic.twitter.com/kPm1pxXZij
究極のラグジュアリーへ:センチュリーの「One of One」戦略
まずセンチュリーのCMでは、従来の黒塗りのセダンというイメージを覆す、オレンジのセンチュリークーペといった見たことのないクルマが登場。
センチュリーがブランドとして初めて世に問われるにあたり、チーフブランディングオフィサー(CBO)のサイモン・ハンフリーズ氏は、主に以下の3つの強い思いを込めたと述べています。
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1. ルーツの表現: センチュリーが元々、豊田佐吉の創業期にまで遡る歴史を持っていることを伝える。
2. 情熱と誕生: 初代(1967年)が豊田章一郎名誉会長と中村健チーフエンジニアの情熱によって作られたこと(CMの白黒の時期)を表現する。
3. 生まれ変わりとプライド: 現代のセンチュリー(第4のブランド)への変革(白黒からカラーへの転換)を表現し、日本人の心の中にプライドを感じてもらう。
CMの最後に現れる「ただ一人のあなたと」というメッセージは、中村健氏がかつて言った「同じでないこと(比べられないこと)」、すなわち「One of One」に由来していますが、豊田会長はセンチュリーを「アバブ レクサス(Lexusの上)」という位置づけとすることで、他のブランドの立ち位置が明確になったと説明し、センチュリーは今後、最高の「One of One」としてハイエンドへの挑戦を担うこととなるようですね。
レクサス:「長男」からの脱却と「誰の真似もしない」ディスカバー
新しいCMでは、レクサスのフラッグシップであるLS(ラグジュアリーセダン)のコンセプトとして6輪車(LSコンセプト)が登場。
ただし画像はどう見ても「セダン」には見えず、これについて豊田会長は、LSの「S」はセダンに限定されるものではなく、「スペース(空間)」のSであり、さらにもう一つの意味として「宇宙」という、誰もまだ踏み入れたことのない世界を表現していると明かしたことからその疑問が解消されます。
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レクサスはもともとトヨタから派生したブランドであり、かつてはレクサスが長男、トヨタが次男のような役割を担っていたものの、しかし今回、センチュリーが「レクサスの上」に明確に位置づけられることでレクサスは”より自由”になり、パイオニアとして様々なチャレンジを果たす役割を担うことになるもよう。
そして今回のレクサスのCMに込められたメッセージ「誰の真似もしない」は、実は豊田会長が開発陣の背中を押す際にずっと使っていた言葉だそうで、これは「イミテーションからインプルーブ、さらにはイノベーションの段階」にあるクルマを目指すという、レクサスの新しいチャレンジを象徴しています。
この6輪車のアイデアは、月面で走るルナクルーザーの技術(6輪)に着想を得ており、地球上でもその広々とした室内空間を活かしたクルマが実現できないかという本気のチャレンジである、と説明されています。
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トヨタの原点回帰:「To You Toyota」とあなた目がけて
トヨタブランドのCMでは、「みんなのために、地球のために、未来のために」という使命を前提としつつ、「だが、その前に動かさなければならないものがある。それはあなただ」という強いメッセージが打ち出されています。
CMを手掛けた篠原誠氏らは豊田会長との会話を通じ、トヨタのメッセージが「モビリティフォーオール(全ての人々のための移動の自由)」というよりは、「To ユー(あなたのため)」、すなわち一人ひとりのための移動に近いのではないかと感じたといい、最終的に採用されたコピー「あなた目がけて」は、創業者である豊田佐吉が母親のために自動織機を考えた原点、常に「あなた」を向いているという思想に基づいているのだと説明されています(いい話)。
TO YOU
— トヨタイムズ (@toyotatimes) October 13, 2025
TOYOTA
篠原さんの熱いプレゼンに
豊田章男会長も
「久しぶりにいいね笑」
▼トヨタイムズで生配信中https://t.co/z9Vv83kcfx https://t.co/FMH7t3RZTz pic.twitter.com/I5GIDcG3Yv
なお、CMの最後には誰も見たことのないカローラのコンセプトカーが登場し、これはトヨタが「プロダクトで答える」「商品で経営している」という姿勢の現れでもあるとされ、コンセプトカーを含めた商品によってブランド広告を行うという異例の戦略がここに示されているわけですね。
ダイハツ:「おもろい復活」と小さなことから始める大発明
ダイハツのCMのテーマは、豊田会長から出された「ダイハツらしさ」と「おもろい復活」。
CM制作にあたった小西俊ゆき氏は、ダイハツが「クルマが主役」ではなく、「暮らしが主役」であるという歴史を発見し、小さいクルマだからこそ、その時代時代のニーズに合わせた「大発明」を一つ一つやってきたという事実に着目しています。
キーワードとなった「小さいからこそできること」、そして「ダイハツの大発明」は、この思想を端的に表していますが、生配信の途中ではCMの最後に表示されるダイハツのロゴが、通常の「赤ロゴ」から、大発明の色味を反映した新しいロゴに変わるというサプライズが発表。
これは「不正問題を経て、ダイハツの社員の皆さんが元気になるように」という豊田会長の遠心力を尊重する方針に基づいています。
いつものDAIHATSUと何かが違う‥‥
— トヨタイムズ (@toyotatimes) October 13, 2025
▼トヨタイムズで生配信中🌈https://t.co/z9Vv83kcfx https://t.co/N3U6KbH6rw pic.twitter.com/n7m8d9w7oR
GRの未来:伝説のエンジン音とオートサロンでの重大発表
GRのCMは、現在(生配信時点)はまだ公開されておらず、GRの CM制作を担当した野添剛志氏によれば、「GRが目指すのは野生味であり、リアルな映像表現にこだわっている」。
そしてGRの重大発表は来年1月(2024年1月)のオートサロンで行われる予定だとも述べ、直近で示された富士スピードウェイの看板(2000GT、LFA、そして未発表の3車種目)が新しいGRのヒントである、とも。
なお、この3車種目については実車を使った撮影が行われ、今回はそのエンジン音のみが特別に公開されていますが、この音はマスタードライバーである豊田会長が「チューニングが素晴らしい」と評価するほどのこだわりとともに作られたものだと説明されています。
#新プロジェクト始動https://t.co/zpmIwYPYFu https://t.co/9u4qu7Zivl pic.twitter.com/UfrB8XVUAb
— トヨタ自動車株式会社 (@TOYOTA_PR) October 9, 2025
豊田会長とクリエイター陣のリアルな関係性
CM制作においては、豊田会長がクリエイターに対し、音声や画像メッセージで直接フィードバックを行うという異例の体制が取られていて、これによって言葉の裏側を深読みすることなく会長のニュアンスや思いが直接伝わり、コミュニケーションの深さが変わったといいます。
さらに豊田章男会長は「企画の内容だけでなく、映像のプロとしての”映像としてのチャレンジ”を求めているそうで、実際に「チャレンジしたい」という思いに対しては強く背中を押してくれる環境があるもよう。
このダイレクトかつ本気のやり取りによって手戻りが少なくなり、結果的にスピード感のあるCM制作が実現していることについても言及されていますが、今後の新しいトヨタのCMについては「大いに期待ができる」のかもしれません。
生配信をご覧いただき
— トヨタイムズ (@toyotatimes) October 13, 2025
ありがとうございました!
放送後はみんなで笑顔で📸
アーカイブも残っていますので
ぜひご覧ください。
▼トヨタイムズ配信URLhttps://t.co/z9Vv83kcfx https://t.co/MeYeFnHGVB pic.twitter.com/0YDEjhoZFi
今後の展望と実現へのコミットメント
今回CMで発表された新しいコンセプトカー(センチュリークーペ、LS 6輪、カローラコンセプト、ダイハツキット)は、すべて「本気でやっている」ものであるとも説明さ、単なるCM企画上の視覚的コンセプトではなく、実現に向けて”頑張る”という強い意思が示されており、これらのコンセプトはジャパンモビリティショー2025で展示されることについても言及がなされています。
そしてトヨタは、この5ブランド体制を通じ、世界中のお客様の「ショッピングリストに入れてもらえる商品」を提供し、商品と共に多くの思い出やストーリーを紡いでいくことを目指しているとして締めくくっていますが、正直なところ今回ほど「(多くの人がレクサス、そしてGRによる新型スポーツカーの発表を期待していたと思われるので)肩透かしをくらった」発表は類を見ないかもしれませんね。
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参照:TOYOTA