| ベイビー・ジャガーの実力やいかに? |
さて、ジャガーE-PACE試乗の「後編」。
全般ではその内外装をチェックしましたが、今回は実際に運転してみましょう。
試乗車は「ジャガーE-PACE(ベースグレード)」、エンジンはガソリンP250(250馬力)。
エンジンそのものはジャガー・ランドローバー自慢の「インジニウム」で、トランスミッションも自社開発の9段AT、駆動方式は4WD。
ジャガー・ランドローバーはもっとも戦略の優れる企業の一つ
ジャガー・ランドローバーははぼ「死に体」の状態でインドのタタに買収されたわけですが、そこからは奇跡のV時回復を遂げています。
回復の理由としては車をひとつの「ブランド品」として販売したからだと考えており、そこは外部の「タタ」だからこそできた(ジャガー・ランドローバー内部だと、どうしても”自動車”だと考えてしまう)戦略なのかもしれません。
つまり本来自動車とは走ることを基本とし、その機能を売るものであるという考え方から、「自動車のデザインを前面に出し、ファッションアイテムと同列のように売る」という考え方にシフトした、ということですね。
その最たる例は「レンジローバー・イヴォーク」で、これまでのプラットフォームに使い古したエンジンとトランスミッションを組み合わせ、「走行性能には見るべきものがなくとも」外観(デザイン)はピカイチに仕上げた、という車。
よってコストも比較的低く、(燃費訴求型のFFを除けば)駆動方式、エンジンはグレード全て通じて「共通」で、グレードの差というと「内外装の違い」という、それまでの自動車の常識とは根本的に異なる車種構成を持っていたわけですね。
多くの自動車メーカーでは、グレードが上になればエンジンも大きくなり足回りも強化されたりという「性能差」をつけるのが常識であったものの、イヴォークではそれがないということになり、これはつまり「もはや自動車は性能で選ぶ時代ではない」というひとつのメッセージであったのかもしれません。
実際のところイヴォークには、ぼくのような「新しいもの好き」が飛びつくことになり、その後ジャガー・ランドローバーの業績は急回復。
「車のガワ(デザイン)が違うだけでこんなに売れるんか」と驚くほどですが、現代の車の選び方を端的に表しているように思います。
その後、ジャガー・ランドローバーはそうやって得たお金でちゃんと研究開発を進め、自社によって4WDシステムやエンジン、トランスミッションを開発してきたことになりますが、このジャガーE-PACEはその集大成に近いもので、ジャガーとしては初の「インジニウム」「9速AT」が搭載されることに。
前置きが長くなったものの、要はジャガー・ランドローバーは長期的戦略に立って事業を展開しており、ブランドを売る方法を知っていて、そこで稼いだお金をちゃんと将来のために投資する優れた企業である、ということを言いたかったわけですね。
ジャガーE-PACEに乗ってみよう
さて、E-PACEに乗り込んで思うのは「かなりシンプル」だということ。
前編にて「カジュアル」と表現しましたが、まさにそういった印象が強く、(ジャガーというブランドイメージに反して)肩肘張らずにジーンズで乗れる、といったイメージがあります。
インテリアのスイッチ類は少なく、それはコンソールにあるタッチ式ディスプレイで車両設定など多くの操作を行うため。
そういった理由で物理スイッチが非常に少なくなっていて、これがジャガーE-PACEの内装をすっきり見せることに。
そしてデザイン的な特徴としては、「ドライバーオリエンテッド」。
ドライバーを囲むように構成されたデザインを持つということで、これはジャガーのスポーツカー「F-PACE」でも顕著な特徴ですね。
シートはグレインレザー張りとなっており、昨日届いたばかりの新車ということもあってちょっと硬めではあるものの。この辺りはすぐに馴染みそう。
特筆すべきは「手に吸い付くような」感触を持つステアリングホイール。こういった手触りを持つステアリングホイールはそうそうない、と考えています。
シートポジションはけっこう高く、そしてフロントやサイドの見切り、ドアミラーやルームミラーでの後方確認はかなり良好。
ざっと操作系を確認したところでエンジンをスタートさせますが、さすがにジャガーだけあって振動やノイズはかなり低いレベルに収められており、高級サルーンと遜色ないレベルと言って良さそう。
シフトレバー(というかジョイスティック的)をDレンジに入れ、ブレーキペダルを話すと小さなクリープをともない車が発進。
試乗コースは比較的走りやすい国道、アクセルを踏み込めるバイパス(上り坂もある)、そして不整路といった、ひととおり車の性能を試せるコースとなっています。
ざっと運転した印象を述べて見ると下記の通り。
・静か。とにかく静か。
・9速ATの威力は絶大。加速時のフィーリングや巡航時の燃費に大きく貢献。
・ただし意外と変速ショックはあり、これはアメリカのコンシューマーレポートで突かれるかも
・コーナリング時のロールの少なさは特筆もの
・タイヤの扁平率は60なのに意外とコツコツとした硬い衝撃を伝える
・その反面、大きな突き上げはない
・車体がシェイクされるような印象はなく、ボディ剛性はかなり高い
・ステアリングのロック・トゥ・ロックが意外と大きい?
総じて「SUVというよりはスポーツカー」に近い印象で、これはF-PACEを試乗した際に「これはSUVではなく車高の高いF-TYPEだ」と感じたのと同じ印象。
これはふだんアウディTTやランボルギーニ・ウラカンにのっているぼくにとっても「おおっ」という感動をおぼえるもので、ジャガーE-PACEのスポーツ性能はなかなかのもの、と言えそうです(加速の素晴らしさ、コーナリング時の姿勢が安定していることについては再度その素晴らしさを強調したい。加速、スタビリティともにアウディTTより上かも)。
ジャガー・ランドローバーは同じグループに「SUV専門」のランドローバー/レンジローバーを持っており、「大船に乗ったような」乗り味はそちらに任せ、ジャガーブランドのSUVではオンロード寄りの性能、加えて「スポーツカーと言って遜色のない」シャープなフィーリングを持たせているようですね。
そのほかの画像はFacebookのアルバム「ジャガーEペイス」に保存しています。