| エキュリーは実際にジャガーDタイプでル・マンを走り、2年連続で優勝したチーム |
モータースポーツの華やかな歴史の影にはなにかと様々なストーリーがつきまとうものですが、最近大きく知られるようになったのは「ジャガーXKSSSの不幸な火事」。
これは1954年にジャガーが25台のみ製造する予定だったXKSS(D-Typeのロードバージョン)につき、16台を製造した後、製造を行っていたブラウンズレーン工場の火災にてその後の生産が不可能となってしまったというもの。
ただしジャガーは2014年に「残りの9台を(復刻)製造する」と突如発表し、これは「XKSSコンティニュエーション(継続)シリーズ」と呼ばれることに。
最近ではアストンマーティンなどいくつかのメーカーが同様の動きを見せていますね。
エキュリーは昔からジャガーのスペシャリストだった
それが今回紹介する「エキュリーLM69」と同関係があるのかということですが、このLM69は、1960年代末にジャガーが製造し、ルマン24時間レースに参加する予定だったもののそれが叶わず、かつ不幸な事故に見舞われた「ジャガーXJ13」を現代に蘇らせたものだから。※13という数字はやはり不吉なのかも
ジャガーXJ13はル・マン参戦を目的に一台のみが製造され、しかしル・マンのレギュレーションが変わったために参加することができず、結局はその参戦の夢が絶たれています。
しかしその後の1971年、ジャガーはE-Typeのプロモーション用映像を撮影するためにイギリスのサーキットにE-TypeそしてXJ13を持ち込んで実際に走行。
ただ、その際に(タイヤの欠陥のため)XJ13はクラッシュしてしまい一旦廃車に。
ジャガーはその数年後にXJ13をレストアしていますが、その内容はオリジナルのXJ13とは大きく異なるものであったとジャガー自身が述べています(Xj13の車両自体はジャガー・ヘリテージ・トラストが保管している)。
エキュリーLM69は「IF設定」のクルマ
時は移って2019年。
スコットランドの自動車メーカー、エキュリー・エコッスがこのジャガーXj13を現代によみがえらせる計画を発足させ、そして完成した1号車が今回公開されたということになりますが、「ジャガー」「XJ13」を名乗ることが難しかったのか、その名称は「エキュリーLM69」。※エキュリー・エコッスは、1956年のル・マン24時間にジャガーD-Typeで参戦して1位を獲得し、翌1957年も1-2フィニッシュを決めている
この「LM69」については、「もし、ジャガーXJ13が予定通り1969年のル・マン24時間レースに参戦していたら」という思いが込められている、とのこと。
見た目は完全に「昔のレーシングカー」ではありますが、このエキュリーLM69は(少なくとも英国では)合法に登録でき走行可能だとされ、25台のみ限定生産を行う、と発表されています。
外観は見た目の通りジャガーXJ13をイメージしたもので、このクルマに使用される素材やパーツ、工法はすべて「1960年代に使用されていたもの」。
つまり現代の素材や工法はここに使用されていないということになりますが、いくつかXJ13から変更も加えられており、「ルーフ」や「ウイング」が与えられているのも特徴のひとつ。
これらは安全性を考慮したものだと思われますが、おそらくは同じ理由にてタイヤも「太い」ものが採用されているようです(なんといってもXJ13の事故の原因はタイヤだった)。
現在スペックは公開されていないものの、画像からはXJ13同様のV12エンジンを搭載していることが判別可能(XJ13のエンジンは5リッターV12、509馬力)。
「ジャガー」と名はつかないものの、ル・マンにて、しかもジャガーを駆って優勝を飾ったチーム(今はメーカー)の製造する”ジャガーへのオマージュ”だけに、コレクターにとっては「どうしても手に入れたい」クルマとなりそうですね。