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| フランク・ステファンソンがここまで「酷評」する例は珍しい |
同氏は常に愛を持って自動車のデザインを語る人物である
自動車デザイナーのフランク・ステファンソンは、自身の意見をはっきり述べることで知られていますが、フェラーリF430から初代BMW X5まで幅広い名車を手掛けてきた人物だけに、その発言には重みがあります。
そんな彼が今回コメントしたのは、ジャガーが発表した最新EVコンセプト「タイプ00(Type 00)」。
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ジャガーがクルマというよりも「アート」「建築物」的なコンセプトカー、”タイプ00”を発表。この定規で引いたようなデザイン、鮮やかな色使いは市販モデルにも反映されるようだ
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ベントレーに対抗するべく、ジャガーがスーパーラグジュアリー市場に参入する布石とされる意欲作で、しかしフランク・ステファンソンの評価は極めて辛辣なものとなっています。
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「どの角度から見ても記憶に残らない」デザイン
フランク・ステファンソン氏はトップギア誌によるインタビューにて、タイプ00について「ほとんどあらゆる角度から見ても忘れ去られるデザイン」と批判し、さらに、新しい言葉を作り出してまで「unautomotive(自動車的ではない)」と表現しています。
BMW時代の初代ミニを担当した彼は、全体のまとまりのなさや未完成感を指摘しており、「一見すると期待できそうだが、近づくとがっかりする」とコメント。
ただし、遠目に見たときの印象だけは唯一のプラス要素だと認めています。
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ジャガーの戦略的ギャンブル
この大胆なエレクトリック・グランツーリスモは、市販時には約13万ドル(約1,900万円)で販売される予定だとされ、ジャガー(アメリカ法人)のブランドン・バルダッサリ氏によると、これによりジャガーの平均販売価格はほぼ2倍となり、販売台数が大幅に減少しても問題ないとしています。
さらに、マネージングディレクターのローダン・グローバー氏は「顧客の85%を失う覚悟がある」と発言。
つまり、現在の顧客のうちわずか15%しか新型に興味を示さないと見込んでいるわけですが(もちろん、失うだけではなく、他ブランドからの新規流入を見込んでいるのだと思われる)、それでも市販型はコンセプトモデルから路線を買えず、これにかなり近い姿になるとのこと。
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さらに「よろしくない」ことに、市販バージョンは2ドアではなく4ドアになるというので、この奇抜なデザインに「凡庸さ」がプラスされ、市販バージョンはフランク・ステファンソン氏が今回タイプ00に対して指摘したよりも「記憶に残らない」クルマとなるのかも。
ジャガーは2025年末までに市販モデルを公開し、2026年から販売を開始する予定だといい、その際には名称も「タイプ00」から変更されることになりますが、もしかすると「名称はその外観同様(あるいはそれ以上)に奇っ怪なもの」となる可能性も否定できず、ここにもちょっと期待がかかるところ。
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批判と期待の狭間で
なお、ジャガーは「Copy Nothing(何ものの真似しない)」というブランド再構築キャンペーンを掲げていますが、既に多くの批判を浴びているのは既報の通り。
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大胆な方向転換とデザインに対する懐疑論もあり、ブランドの未来は決して楽観できませんが、とはいえ、挑戦を続ける姿勢に期待を寄せる声があるのも事実です(現行路線のままズルズルと販売を失うよりは、思い切って何かを変えようとする姿勢そのものが評価されている。実際、ジャガーがここまで話題になったことはその歴史上今回を除いて「ない」のかも)。
今後のジャガーがどうなるのかは全く想像がつかず、しかし今後さらに多方面にわたり展開されるであろうキャンペーンを楽しみに待ちたいと思います。
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参照:Top Gear