>ジャガー

ジャガーはもう「終了」か?新型EV「Type 00」が発表延期、完全電動化戦略に再び暗雲が立ち込め、売るクルマがない「空白期間」が長期化するおそれ

ジャガー

Image:Jaguar

| ジャガーの電動化戦略に再び“試練” |

まさに「泣きっ面に蜂」

ジャガーがブランド再構築の象徴として開発を進める新型EV、「Type 00(タイプ・ダブルオー)。

今回その発表が予定より遅れることが明らかになり、当初は2025年中の正式発表、そして2026年初頭からのデリバリー開始を予定していたものの、ジャガー・マネージングディレクターのローデン・グローバー氏が「発表は2026年に延期される」と認めています。

その一方、グローバー氏は「延期は(これ以上)長引かない」とも強調しており、発表後すぐに予約受付を開始、納車も間を置かず始まる予定だとも述べており、その価格が約1,900万円からであることも再確認されています。

サイバー攻撃が生産遅延の一因か

ジャガー側は(発表延期の)正式な理由を明かしていないものの、2025年秋に発生したサイバー攻撃による5週間の生産停止が影響している可能性が高いと見られていて、この攻撃では、親会社であるジャガー・ランドローバー(JLR)の全工場が稼働停止となり、生産・開発スケジュールに大きな影響を与えたのは既報の通り。

TYPE_00_FRONT_THREEQUARTER

Image:Jaguar

JLR(ジャガー・ランドローバー)、8月から今まで「1台も」生産できず。最悪だと11月までこの状態が継続し1日あたり13億円の損失も。その原因は「サイバーアタック」
JLR(ジャガー・ランドローバー)、8月から今まで「1台も」生産できず。最悪だと11月までこの状態が継続し1日あたり13億円の損失も。その原因は「サイバーアタック」

Image:JLR | 現時点で生産再開時期は未定、サプライチェーン崩壊の二次的影響も指摘される | あな恐ろしやサイバーアタック 9月頭には「8月31日に発生したサイバー攻撃の影響で、ジャガー・ラン ...

続きを見る

内燃エンジン車の販売停止が招く“空白期間”

通常であれば発表延期は大きな問題には至りませんが、しかしジャガーの場合、これは致命的なリスクを孕んでいます。

というのも同社は2025年初頭に既存の内燃機関モデルのほとんどを生産終了させ、さらに唯一のEV「I-PACE」までもの販売が終了しており、現在、唯一残る「F-PACE」は一部市場でのみ販売されているものの、すでに英国を含む複数地域で新車販売を停止しているため、実質的に売るクルマがないという“空白期”に突入しています。

この状態では会社、そしてサプライヤー、さらにはディーラーの存続も危ぶまれ、文字通りの危機的状況となる可能性も指摘されているわけですね。

3

Image:Jaguar

「Type 00」はEタイプ現代版、1000馬力&航続700km級EVに

「Type 00」は、2024年末にコンセプトモデルとして初公開されたジャガーの新世代フラッグシップEV。

伝説的スポーツカー「Eタイプ」を現代的に再解釈したデザインを採用し、専用EVプラットフォーム上に構築されるとアナウンスされていますが、コンセプトは2ドアクーペとして登場したものの、実際の市販モデルは4ドア仕様となるとも説明されています。※ただ、大胆な“リアウインドウレス”デザインが継承される可能性は高い

パフォーマンス面では「最高出力1,000馬力、EPA航続距離430マイル(約700km)」を目標としており、15分間の急速充電で約320km分の走行距離を追加できるという利便性も備える、と想定されていますね。

2

Image:Jaguar

ジャガーがクルマというよりも「アート」「建築物」的なコンセプトカー、”タイプ00”を発表。この定規で引いたようなデザイン、鮮やかな色使いは市販モデルにも反映されるようだ
ジャガーがクルマというよりも「アート」「建築物」的なコンセプトカー、”タイプ00”を発表。この定規で引いたようなデザイン、鮮やかな色使いは市販モデルにも反映されるようだ

Image:Jaguar | ただし市販モデルでは「2ドア」ではなく「4ドア」となるもよう | このタイプ00はまさに「社運をかけた問題作」だと言えるだろう さて、ジャガーがマイアミ・アートウィークに ...

続きを見る

マーケティングの迷走も批判の的に

「Type 00」発表時には、多様性と包括性をテーマにしたマーケティングキャンペーンが展開され、しかし実際の車両が登場しない広告内容に批判が集中。

政治的メッセージに偏り過ぎているとの声が上がり、ジャガーはその後すぐに広告代理店を変更したという「迷走」も見られ、現在のジャガーはあらゆる方向において「想定していたのとは異なる方向へ」ものごとが動いてしまっているのかもしれません。

ジャガー
「85%を失ってもOK」として再ブランディングを強行したジャガーCEO、自身の職を失う。さらにドナルド・トランプは「ワケがわからない愚かな戦略」と広告を非難

Image:Jaguar | 一国の大統領なのに一企業の戦略を避難するのは「さすがトランプ流」である | ジャガーが今後「どう転ぶのか」全くわからない 2024年に物議を醸したジャガーのリブランディン ...

続きを見る

幻に終わった「電動XJ」計画

現在のEV戦略の背景には、元CEOティエリー・ボロレのもとで2021年に始動した「高級EV専業化構想」があり、しかしそれ以前の計画だとジャガーは「XJの新型モデルを開発していて、レンジローバー系と共通プラットフォームを用いた電動XJとして発売するはずだった」というものも。

しかし、このプロジェクトは(かなりの段階まで進んでいたとされるにもかかわらず)EV専用化方針への転換に伴い中止され、興味深いことに、デザインを手掛けた元デザイン責任者イアン・カラム氏は最近のインタビューで「新型XJは当初、ガソリン6気筒エンジンも搭載できるよう設計されていた」とも明かしています。

この発言が事実であれば、そしてもしそのまま開発が続いていれば、現在の“EV市場の減速”局面でも柔軟に対応できたかもしれず、まさにこの状況は「判断のミス」が招いた結果なのだとも考えられます。

Jaguar-Type-00-3

Image:Jaguar

ジャガーの「再生」は成功するのか

ジャガーはEV専業ブランドとして再出発を図る一方、販売の“空白期”、サイバー攻撃による混乱、マーケティング戦略の見直しなど複数の課題に直面しています。

「Type 00」が本来の2025年スケジュールで登場していれば勢いを維持できた可能性もあるものの、2026年の発表までに市場の関心を取り戻せるかが「今後の生き残りをかけた」焦点となるのかもしれません。

そしてジャガーはつい最近、新しいCEOを迎えたばかりであり、その手腕にも期待がかかるところでもありますね。

ジャガー
ジャガー、新CEOはトランプ大統領の批判も「意に介さず」。完全EV化計画を継続し、高級路線でベントレーやロールスロイスとの競合を目指す

Image:Jaguar | ジャガー新CEO P.B.バラジ氏、トランプ大統領kらの批判を無視して戦略継続 | 新生ジャガーによる完全EV化と超高級路線 2024年末に発表されたジャガーのブランド刷 ...

続きを見る

あわせて読みたい、ジャガー関連投稿

伝説の再構築:「巨匠」イアン・カラムが現代版ジャガーEタイプをSNSにて公開、現実世界におけるレストモッドも視野に入れる
伝説の再構築:「巨匠」イアン・カラムが現代版ジャガーEタイプをSNSにて公開、現実世界におけるレストモッドも視野に入れる

Image:Callum Designs | 【ジャガーEタイプ再び】伝説の名車が現代の感性で蘇る? | 【ICE搭載も視野に】ジャガーEタイプのレストモッドは内燃機関での再誕か ジャガーEタイプ── ...

続きを見る

ジャガー「新しいブランド戦略によって、我々は既存顧客の85%を失うでしょう」。なぜそこまでしてブランドを変えようとするのか、その危険な賭けの真意とは
ジャガー「新しいブランド戦略によって、我々は既存顧客の85%を失うでしょう」。なぜそこまでしてブランドを変えようとするのか、その危険な賭けの真意とは

Image:Jaguar | ジャガーはガソリン時代の顧客の大半を失おうともブランドシフトを成し遂げる | 歴史上、ここまでの大胆な変革を試みた自動車メーカーは存在しないだろう さて、様々な自動車ブラ ...

続きを見る

もはや誰も話題にしなくなった「新しいジャガー」。ひたすらネガティブな意見だけを残して失敗の予感、社内からも不満が生じ署名活動すら行われていたもよう
もはや誰も話題にしなくなった「新しいジャガー」。ひたすらネガティブな意見だけを残して失敗の予感、社内からも不満が生じ署名活動すら行われていたもよう

Image:Jaguar | 今回のリブランディングについては「自動車史上最大の失敗の一つ」に数えられるかもしれない | ここまで社内外から賛同を得られなかったプロジェクトも珍しいだろう さて、発表直 ...

続きを見る

参照:Autocar, CARBUZZ

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->ジャガー
-, , ,