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【試乗:マクラーレンGT】パドルは高級腕時計のようだ!マクラーレンはこういった”高級車”も作れるブランドに成長していた

2020/02/24

| マクラーレンには新型車が出るたびに驚かされる |

さて、マクラーレンGTに試乗。
マクラーレンGTは現時点でのマクラーレン最新モデルで、720Sや540/570系に採用されるアイソケットを採用しない新デザインを持ち、おそらくはこれからのマクラーレン(のデザイン的方向)を示唆するモデルだと言えそうです。

なお、マクラーレンは「SUVを作らない」と公言していますが、この「快適でゴルフバッグが2つ載る」GTは「マクラーレン流の、SUVブームに対する回答」なのかもしれません。

マクラーレンGTはどんなクルマなのか

マクラーレンGTは、マクラーレンにとって「第四」のシリーズ。
まず上から「アルティメットシリーズ(セナ、エルヴァ)」、「スーパーシリーズ(720S)」、「スポーツシリーズ(540/570/600系)」があり、「GT」はそれらと別の世界観を持つ新ラインアップ。

当初マクラーレンは「3つのラインアップ」しか想定していなかったものの、570GTを発売した時に「快適にスポーツカーを乗りたいという人がいかに多いかということに気づいた」とコメントしていて、これによって「GT」をスーパースポーツとは別の、独立したラインアップとしたようですね。

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もちろんGT=グランドツーリングを意味し、そのために快適性と積載性を向上させたということになりますが、ベースとなるのは720S。
よってカーボンモノセル2(カーボン製バスタブシャシー)、4リッターV8ツインターボエンジン、サスペンションも共通です。

ただ、エンジンは専用チューンとなる620馬力仕様、プロアクティブ・ダンピング・コントロール・サスペンション、さらにはトランスミッションやステアリングも別途設定が見直され、GTという名にふさわしい仕様へ。

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ルックスに関していえば、スーパーシリーズ、スポーツシリーズに採用されていた「アイソケット」ではなく、コンベンショナルなヘッドライトに。
ただ、先日メーター画像からリークしてしまった「次期スポーツシリーズ」はこのGT同様のルックスを持つことになるようで、となるとこのデザインはGT固有というより、今後のマクラーレンの新しいデザインを示すものだとも考えられます。

ボディサイズは全長4,683ミリ、全幅2,045ミリ、全高1,213ミリ(欧州スペック)、車体重量は1,466キロ。
比較的大柄なクルマであり、その一因としてはラゲッジスペースを確保するためなのかもしれません。
ちなみに「縦」方向にだとゴルフバッグを2個積むことができ、これは今までのマクラーレンはもちろん、ほとんどのスーパーカーにはできなかった芸当ですね(C8コルベットは”横”にゴルフバッグを2つ積める)。

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そのほか、内外装については下記にまとめています。

マクラーレン最新モデル「GT」を見てきた!スピードテール似、「これまでのマクラーレンとは異なる」別路線スーパーカーを見てみよう

マクラーレンGTに乗ってみよう

さて、まずマクラーレンGTに乗り込みますが、やはりドアが上に開く「ディヘドラルドア(バタフライドア)」はいいなあ、という感じ。
マクラーレン大阪さんは御堂筋に面した好立地にありますが、やはり通行人は老若男女とわずに「おお」という表情でこちらを見ていて、そのインパクトの高さが伺えます。

なお、ドアは外側に60センチほど開き、慣れないうちは「どこまでドアが外に出るのか(何かに当たらないか)」ちょっと心配。
ただし「60センチ」というのは一般的なクルマに比較しても大きい方ではなく、意外と狭いところでも乗り降りしやすいのかも。
加えてサイドシルが車体中央に向けて大きくえぐられているので、カーボンモノセル2が持つぶっとく高いサイドシルにもかかわらず、けっこう乗り降りしやすいように思います。

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その後はシート位置を決め、エンジンスタート。
GTはほかのマクラーレンに比較するとかなり静粛性の高いクルマですが、エンジン始動音についてはかなり室内に入ってくる設計を持つようです(一定の回転数以上におけるサウンドを意図的に聞かせているようにも思われる)。

なお、足元は結構狭く、ランボルギーニやポルシェ、フェラーリに比較するとブレーキペダルとアクセルペダルとの高低差が小さいため、ソールの大きな靴を履いているとブレーキを踏んだ際にアクセルペダルを意図せず踏んでしまうことも。
よって運転時には幅の狭い靴(しかもブレーキペダルが重いのでソールの硬い靴)を履いたほうが良さそうです。

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パドルはアルミ製ですが、高級腕時計のケースのように、部分的にブラシ(サテン)仕上げ、そして部分的にポリッシュ仕上げ。
こういったフィニッシュをパドルに採用する自動車メーカーは(ぼくの知る限り)マクラーレンをおいてほかになく、「走り一辺倒だと思っていたマクラーレンがこういったことをやるとは」という驚きも。

ちなみにこういった驚きはほかにもあって、二人乗りにもかかわらずカップホルダーが3つもあったり、フロントバンパー先端は「段差や傾斜で擦らないよう」ちょっとだけ他部分に比較して上げられていたり。

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これらは「GT=グランドツーリング」という性格を反映したものだと思われますが、マクラーレンは「そういったところにまで気遣いができる」メーカーになったということですね。

そのほか、ドアの開閉、フロントフードやリアフードの開閉、各スイッチの操作音やフィーリングが非情にマイルド。
かなり静かで精度の高さを感じさせ、上品であるということですが、このあたりはドイツ製スポーツカーとはまったく異なる印象です。

ちなみにレンジローバーからも同様の印象を受けたので、こういったところは英国車特有で、かつ英国人のクルマに対する考え方が現れている部分なのかもしれません(道具というよりは、上質さを求める趣味性の高い嗜好品)。

マクラーレンGTで走ってみよう

そしてDレンジに入れてパドルを引いて1速に入れ、ブレーキペダルをリリースしてスタート(クリープがある)。
やはりGTの名が示すとおりに静かで乗り心地がよく、車内での会話も普通の声量でOK。
低速にて街なかを走る際も扱いやすく、ギクシャクすることがないのも好印象です。

なお、ブレーキペダルのフィーリングはマクラーレン特有。
アクセルペダルの軽さに比較してかなり重く、けっこう(踏み込んだ)奥の方から効いてくるので最初は「えっ?ブレーキが効かない??」と焦りますが、しっかり踏み込めばちゃんと効くので心配無用。
ただフィーリングが特殊だということで、まずはこれに慣れる必要がありそうです。

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そのほか感じるのはステアリングレシオが比較的スロー。
マクラーレンGTは「720Sを快適仕様に変更した」クルマという認識ですが、おそらくは570Sを570GTに再チューニングしたときと同様の手法が採用されているのかもしれません(その中にはステアリングレシオの変更も含まれる)。

ただ、これがGTのマイルドな性格を象徴するひとつのフィードバックでもあり、神経質さがないという点においてもかなり好ましいと考えています。

今回は一般道、そして高速道での試乗ですが、両方においていかなる場合でもスムーズな動きを見せ、ただただ「乗りやすい」という印象。
その扱いやすさ、快適さは(普段ぼくが乗っている)ポルシェ718ケイマンよりもずっと上だと感じられ、マクラーレンの底力、そして懐の深さを思い知った次第(720Sのようなスーパースポーツ以外にも、こういった文字通りの”GT”が作れるとは)。

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そしていかに快適、安定志向といえど620馬力(ツインターボ!)もあるので、一旦アクセルを踏み込むと怒涛の加速を見せ、ぼくは法令遵守意第一なので合法な範囲でしか走っていないものの、「もっとも速く、もっとも安全に、もっとも快適に」スーパーカーの一台なんじゃないかと考えています。
もちろん高速カーブでの安定性も抜群で、ブレーキング時の姿勢も安定しており、このロール、ピッチの少なさはマクラーレンの美点でもありますね(プロアクティブシャシーの貢献度が高い)。

買いか?買いなのか?マクラーレンGT

マクラーレンGTを買いかどうかと言われると「買い」。
ぼくは「マクラーレンよりも速く走れるクルマはない」とも考えていて、グランドツーリングといえどそのパフォーマンスは圧倒的。
加えて2645万円という価格も魅力的です。
なお、この価格についてはコストダウンではなく「割り切った設計」によるものだと考えていて、というのも現在のロードカーを作っているマクラーレン(オートモーティブ)は2009年発足、そして初の市販車であるMP4-12Cは2011年登場。

これの意味するところは、「新しい世代の設計技術を用いて、新しい素材やコンポーネントだけを使用することを前提に設計している」。
つまりカーボン製のシャシーやV8ターボエンジン、電制デフ、デュアルクラッチトランスミッションといった最新のもの「しか」使用しないことで大幅に設計を簡略化でき、様々なコストを下げることが可能となったわけですね。

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ここが「昔からクルマを作っている」スポーツカーメーカーとは大きく異るところで、歴史がない部分を逆手に取ったとも考えています。

よって、クルマに求めるプライオリティにおいて、”パフォーマンス”が比較的高い人々はずいぶんマクラーレンに(フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェから)流れたとも聞いていますが、とにかくその速さ、ドライバビリティに関してはブッチギリなんじゃないかと考えています。

加えてそのスーパーカー的ルックスも魅力的で、なんといってもドアが上に開く「ディヘドラルドア」は非常に魅力的。
そしてドアを開けると目に入る、ぶっといサイドシルを持つカーボン製シャシーも乗る都度に深い充足感を与えてくれること間違いなし。

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ただ、マクラーレンの唯一そして最大の懸念は現段階での「リセール」。
フェラーリはもちろん、ランボルギーニに比較してもリセールはいいとはいえず、これを許容できるかどうか、というところが選択の分かれ目となりそうです。

以前に比較してマクラーレンの流通量も増えてきて相場が安定してきているようにも感じますが、もうちょっと売りやすい環境ができあがれば迷うこと無く購入に踏み切れる、とも考えています。

なお、試乗させてもらったのはマクラーレン大阪さん。
いつもお世話になり、この場を借りてお礼申し上げます。

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マクラーレン 大阪
住所:〒541-0057 大阪市中央区北久宝寺町3-5-12(地図はこちら
TEL:06-6121-8821
営業時間:10:00~18:30

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