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マツダ社長「今は苦しいが、売り方を180度変えることでプレミアム化を図る」。世界シェア2%の小さい会社が生き残るための戦略とは

2020/02/26

| なかなかマツダの考え方は消費者に理解してもらえない |

なかなか業績が上向かず、2期連続で減益となる可能性が高いマツダですが、今回東洋経済がマツダの丸本明社長にインタビューを行い、その内容を公開しています。

これによると、「世界シェア2%しかないマツダが生き残るためには存在感を示さねばならず、ブランド価値を引き上げるために販売改革をやり遂げる必要がある」。
いったいこれはどういった意図なのか、ここでその内容を見てみましょう。

正直、マツダは「苦しい」

まず丸本明社長の認識だと、現状は「苦しい」。
つまり計画通りにことが進んでいないということになりますが、マツダが比較的強みを発揮できる欧州そして中国では景気減速のために成長が期待できない状況でもあります。
丸本明社長は、昨年発売したCX-30、MAZDA3の販売貢献が予測できると述べているものの、実際には新型コロナウイルスの影響にて「さらに予想よりも下に振れる」可能性も否定できません。

ちなみにこれまでのレポートだと、日本や欧州ではマツダ車の価値を理解して買ってくれる顧客がいて、しかし北米市場ではそうではなく、マツダは「あまり特徴がない、大勢の中のひとつのメーカー」としてしか捉えられていないために価格のみを他社製品と比較される傾向が強い、とのこと(そして高くなったマツダは価格競争に破れ、ほかメーカーの後塵を拝する)。

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なお、マツダは新型「MAZDA3」を新世代車種の第一弾として位置づけ、その価格帯を大きく引き上げていますが、これは「高い付加価値を与え、そのぶん価格も上がるが、その価値を消費者に理解してもらって買ってもらう」ことを想定した戦略です。

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日欧の一部のユーザーにはこの「付加価値」が伝わっているものの、上述のように北米では「高いマツダなんかいらない」という向きが多く、よってマツダ3は(モデルチェンジしたニューモデルなのに)販売が下がってしまい、日欧においても多くは「マツダは高くなった・・・」という認識を持っている模様。
実際のところSKYACTIV-Xエンジンは性能が評価されこそすれ、実際の販売には結びつかず、つまりはマツダにとって「アテが外れた」ということになりそうですね。

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こういった状況について、今回丸本明社長は「クルマの出来には自信があるが、その価値が十分に伝わっていない」とし、販売店を通じてさらに訴求を行ってゆくともコメントしています。

「高くても買ってもらえるブランドに」

つまり根本にあるのは「それなりの価格を持ついいクルマをつくり、その価値を理解してもらう」ということになりますが、そのためにマツダは少し前から値引きを停止。
これは世界中のマツダディーラー共通ではあるものの、これまでとは異なり、値引きに頼らず売れる状況を作ってゆく取り組みを行う、ということになりますね。

特に北米おいては値引きの原資となるインセンティブを(ずっと)高いレベルでディーラーに対して支払ってきており、いわば「値引き推奨」。
これがちょっと前に「値引きしない」という方針に転じたため、方向性としては180度転換するということになってしまいます。

実際にマツダは2016年に北米法人の社長を久しぶりに日本人へと変更し、この改革を進めている最中だそうですが、反発も多く、しかし徐々にこの考え方に理解を示す販売店も増加しているとのこと。

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参考までにスバルはマツダとは逆のポジションにいて、スバルはマツダよりももっとシェアが小さい「世界シェア1%」の自動車メーカーながらも、競争の激しいカテゴリからは手を引いて「自社が強みを発揮できるジャンル」のみに特化。
しかもその強みが非常にわかりやすく、よって「大勢の中の一つのメーカー」ではなく、指名買いされるメーカーでもあり、さらには「次もスバルを買う」という顧客が多いメーカー(マツダ地獄のように、ほかメーカーのクルマを買いたくとも、マツダしか買えないというのとは事情が異なる)。

ちなみにスバルが人気化したのは、「性能や機能の割に安かった」からだとぼくは認識していて(レガシィだと208馬力やビルシュタイン製の足回りなど)、しかしマツダの場合は「割安感がない」ところは決定的な違いでもありますね。

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マツダが「プレミアム」を意識し始めたのは10年前

丸本明社長いわく、マツダがプレミアムという言葉を使い始めたのは2代前となる山内社長の時代(2010年頃)。
ただ、当時はその真意が伝わらず、単に「プレミアム=高い」と受け取られてしまったことが問題であり、マツダの考えるプレミアムとは「高い価値を持つ製品を、適正な価格で販売する」ということであって、安全性能、環境性能、コネクテッド技術、快適性などを高め、クルマの良さを理解してもらい、マツダの考える適正な基準で買ってもらうという意味であり、けして「単に高価格帯へと移行する」という意味ではないようです。

たしかにこれは(丸本明社長によって)再三語られているので、よく理解できることではありますが、いわばブランドの上級移行を意味しており、これはフォルクスワーゲンですらなし得なかったことなので(プレミアムモデルはいずれも成功していない)、相当に難しいのかもしれません。

たとえばユニクロが高級素材を使用し、「客観的には納得性の高い値付ではあるが、従来のユニクロのレベルを超えている」価格を持つ商品を発売したとしても受け入れられるのが難しいように、いかに適正なプライシングを持っていたとしても、現在のマツダが持つブランド価値や、世間の認識を超える価格を持つ製品を販売するのは難しそう。

ですが、自動車メーカーである以上、その製品のレベルの高さをもってブランド価値を上げてゆくよりほかはなく、「たとえ苦しくとも、今の方法を貫くしかない」のがマツダの置かれている状況なのだと思われ、とにかく前に進むしかないのでしょうね。

そして丸本明社長は「過剰な生産を行わない」とも。
マツダは2021年にトヨタとの合弁となる新工場を北米に完成させますが、今の販売レベルでは「生産設備が余ってしまう」ことになり、しかしそれを回避するために多く生産しすぎると以前のマツダに逆戻りしてしまうため、であれば”余分に作らないほうがいい”という覚悟まで決めて販売現場の改革を行う、とも述べています。

VIA:Toyokeizai

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