| これが「エルヴァ」固有の問題でないことを祈るばかり |
マクラーレンが限定399台、価格約1億9000万円で販売を開始した「エルヴァ」。
これはマクラーレン創業者であるブルース・マクラーレンが、1960年代に最初に自分で作ったレーシングカー「M1A”エルヴァ”」へのオマージュだとされています。
815馬力の強力なエンジンを搭載し、スピードスタースタイルを採用することで極限まで重量を削ったという「マクラーレン史上、(ガソリンエンジンのみだと)もっとも強力で、もっとも軽量なハイパーカー」。
これまでマクラーレンはひたすら「未来」を見据えたクルマばかりを発売してきたように思えるものの、珍しく「過去」に焦点を当てたモデルということになりそうです。
マクラーレン創始者が最初に作り、自分でドライブしたクルマと同じカラーの”エルヴァ”。マクラーレンの歴史はここから始まった
そして今回、マクラーレンCEO、マイク・フルーイット氏はエルヴァの生産を249台(つまり予定よりも150台少ない)に引き下げることを決定した、と発表。
The Australian Financial Reviewが報じたところでは、この決定の理由としては「このクルマはもっと生産台数を絞るべきだ」という顧客の声を反映したものだそうですが、正直なところ「あまり売れなかったんじゃないか」とも考えています。
ちなみにエルヴァは、マクラーレンのトップレンジ「アルティメットシリーズ」に属しており、このシリーズからはP1(375台)、セナ(500台)、スピードテール(106台)が発売済み。
これらと比較すると「399台」というのは多いとも少ないとも言えませんが、とりたてて数が多いわけではなく、やはり不自然な印象が拭えないところですね。
なお、マクラーレンは「一人の顧客が複数モデルを購入する」ことを想定していると見え、セナは「サーキット重視」、スピードテールは「グランドツアラー」、エルヴァは「運転を楽しむロードカー」といったポジションがそれぞれ与えられることに。
これまでの限定モデルだと「発表時にはすでに完売済み」だと伝えられ、すぐに生産枠の転売が登場したりしていますが、エルヴァについてはそういった話も聞かず、もし「当初の予定通り399台が売れていたとしたら」そこから150台を削ることはまずできないと思われ(注文済み顧客が黙っていないと思う)、普通に考えると「299台以下しか売れていなかった」と推測するのが妥当です。
もし「売れていなかった」のだとするとこれはハイパーカービジネスが大きな曲がり角に差し掛かっていることを意味し、今までは「必ず完売てきた」という状況が変わってきている、ということに(スーパーカーメーカーのビジネスモデルが多少なりとも影響を受ける)。
アストンマーティン「ヴァルキリーの”150台限定”は少なすぎた。900台は売れたはずだ」。”売り逃した”750台は合計で3750億円に
これが「限定モデルを連発しすぎた」マクラーレン特有の問題なのか、スピードスターという特殊な構造を持つエルヴァならではの問題なのか、はたまたコロナウイルスの影響なのか、今後ほかのスーパーカーメーカーにも起こりうる話なのかは現時点では知ることができず、しかしショッキングな事実であることに間違いはない、と考えています。