| ポルシェ911、マツダ・ロードスターは長い歴史の上でようやく100万台を達成したが |
さて、様々な方面で話題を呼んだテスラ・サイバートラック。
発売前にはその名称から(名前だけが先に公開されていた)未来っぽいトラックだろうということで様々なレンダリングが登場していたものの、実際に発表されたサイバートラックは「想像の”はるか”ナナメ上」を行ったクルマであり、この直後からテスラの株価が急上昇しています。
このサイバートラックの宣伝効果は図り知れず、自動車業界はもちろん、ガジェットを扱うメディアや住宅関連メディアまでもがサイバートラックを大きく取り上げ、さらには「便乗」商法も。
こうなるとウワサがウワサを呼び、もう誰に求められないという状態となるわけですが、テスラCEO、イーロン・マスク氏によると、サイバートラックを企画するにあたっては「マーケティングを一切行わなかった」とのこと。
通常、いかなる製品も「マーケティングありき」
通常、いかなる製品であっても、そして自動車のような高額商品であればなおさら綿密なマーケティングを行い、「他社の製品がどれくらいの性能や価格を持ち、どれくらい売れていて、どういった人が買っているのか」ということを調べ上げ、その後に「他社製品よりも優位に立ちうる」製品を考案し製品化するといったプロセスが採用されることになります。
ただ、今回イーロン・マスクCEOが語った内容だと「マーケティング?そんなものはやってない。我々はただ、ぶっ飛んでいて奇っ怪なクルマをつくりたかっただけだ。そう、映画のブレードランナーやエイリアンから直接出てきたかのような。さらに高い機能性を持つことも重要だった」。
果たして登場したサイバートラックは、ブレードランナーにてプロップのデザインを担当したシド・ミードからも絶賛されることになり、「防弾性能」という現実世界ではほぼ無意味な機能も話題となったわけですね。
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そして面白いのは、批判的な消費者も多かった中、このサイバートラックは自動車業界のデザイナーから多数の高い評価を得ている、ということ。
デザイナーからすると、「本来、自分はこういったモノを作りたかったのに、マーケティングとやらで一般受けする、どこにでもあるモノに自分の作品が改変されてしまった」という想いを常々抱いているのだと思われ、そのため「まったく日和らずに、妥協のない姿で出てきた」サイバートラックを喝采を送ったのかもしれません。
サイバートラックはマーケティングの無意味さを証明した
ちなみにイーロン・マスク氏は故スティーブ・ジョブズを敬愛し、さらに越えようとしていることでも知られますが、スティーブ・ジョブズがよく言っていたのも「マーケティングなんぞ無意味」。
スティーブ・ジョブズは「顧客は、それを形にして目の前に出されるまで、自分が何を欲しいかすらわかっていない」という信念を持っており、今人気があるもの、つまり顕在化した需要よりも、誰も見たことが無いもの=潜在需要を掘り起こすことを重視した、というワケですね。
そして、人は「自分が見たことがないものを見せてくれたり」「自分が経験したことが無い体験をさせてくれたり」した人やモノ、ブランドに対してなんらかの帰属意識的感情を持つことになり、それが「ブランド」を形成することに。
現在テスラの株式時価総額はトヨタやフォルクスワーゲンを抜き「自動車業界ナンバーワン」となっていますが、もちろん販売台数はトヨタはフォルクスワーゲンに遠く及ばず、しかしテスラであれば何かをやってくれるという期待感がその株価を形成している、と考えられます(株価は期待値の表れでもある)。
そして期待する「何か」とは、まだ見ぬモノやコトであり、けして現在他社が発売している製品の焼き直しや高性能版ではない、ということになりそうです。
サイバートラックはますます入手が困難に
ちなみに現在サイバートラックの予約は80万台を超え、まだまだ増加中。※予約金だけで、テスラは85億円くらいを手に入れた計算
ポルシェ911やマツダ・ロードスターが長い歴史のうえでようやく「100万台」を達成したということを考えると、この「(発表されて1年もたっていないのに)80万台」という数字がいかにずば抜けているかがわかります。
そのほか、様々な調査では「今注文しても納車は2025-2026年」「すでにサイバートラックは3番めに売れたトラックになりつつある」「トラックオーナーの5人に一人が”次のトラックはサイバートラックにする”と回答」という事実もあるようで、さらには「まだ自動運転機能が搭載されていないが、アップデートでこれが搭載されたら」「実際にデリバリーされはじめ、ネットにアップされ始めたら」さらに人気が加速化するのは間違いないだろうとも言われているようですね。
参照:Automotive News