| ボディカラーを考える仕事は楽しそうだが、楽ではなさそうだ |
採用される「3年後」を見越してボディカラーを開発せねばならない
この10年ほど自動車の人気ボディカラーというと「ホワイト、ブラック、シルバー(メタリックグレー)」でほとんどが占められており、直近の調査だとそれらでなんと77.2%を構成しているもよう。
ただ、BMWそしてポルシェはカラーオプションを大きく拡大しており、この流れがちょっと変わりつつあるようですが、それは自動車が「自己表現の手段」として脚光を浴びるようになったからなのかもしれません。
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ポルシェでは、新色を考案してから採用されるまでに3-4年を要する
そこで今回ポルシェが公開したのが「新色が採用されるまでのプロセス」。
ポルシェによると、新しい色を見つけ、選択し、テストすることは「想像以上に難しい」とのことで、ポルシェのヴァイザッハ開発センターでカラー&トリムデザイン部門のデザイナーを務めるダニエラ・ミロシェヴィッチさんによると、愛車のカラーを流行色と一致させるためには、何年も先のトレンドを考えなければならない、とのこと。
なぜなら、「今考えている」ボディカラーが承認されるのは、早くても3〜4年後だからだといい、それは社内の「偉い人の承認がいっぱいある」からではなく、「風雨に耐えられるかどうかなど、さまざまなテストをクリアしなければならない」から。
よってポルシェでは新しいボディカラーの耐候性をテストすることになるわけですが、新しいカラーは「カラーフロッグ」と呼ばれる911のシルエットを模したプレートにペイントされ、まずは「2年間」明るい日光の下に置かれることになるもよう。
ただ、このテストをクリアして終わりというわけではなく、さらに火災安全性、海水、石の衝撃テストが続くことになり、これらの過酷なテストをクリアしてはじめて「ポルシェのボディカラー」として承認されることになる、と紹介されています。
インスピレーションは自動車業界以外からも
そしてダニエラ・ミロシェヴィッチさんは「インスピレーションを得るために、自動車以外の世界にも目を向けることにしている」と語り、たとえばミラノ家具見本市のような展示会は、”ポルシェのラインアップに欠けている色”をデザイナーが考えるのに役立っているようですね。
さらに「私たちは、インテリアデザインや建築を作品のアイデアソースにしています。ファッションの流れは速すぎ、すぐに消費されてしまうため、自動車にはあまり向いていないのです。それに対して家具の分野だと、お客さまはソファを買って、クルマと同じように何年も使い続けることになり、長いタームで新鮮さを維持できるのです」ともコメント。
ダニエラ・ミロシェヴィッチさんの仕事は、自分専用のミキシングベンチで新しいカラーレシピを作ったり、パントーンやNCSのカラーシステムライブラリから他のカラーレシピを試すことだそうですが(楽しそう)、こういった色彩の実験はポルシェのデザイン的先進性を維持するために非常に重要だと社内でも認識されており、そのために極端なアイデアの創出も奨励されているのだそう。
ただ、事情を複雑にしているのは、エクステリアカラーは車内から(ドアミラーやボンネットとして)見えるため、すべてのカラーは内装色やシートベルトのオプションと調和していなければならず、「優れたアイデア」が出されたとしても、それが実用に足るかどうかはまた別問題なのかもしれません。
なお、ダニエラ・ミロシェヴィッチさんと彼女のチームは毎年、新モデルと派生モデルのために12色のペイントカラーを開発しているそうですが、以前には「ニューモデルには、ニューモデルの性質を表現するための新しいボディカラーを採用していなくてはならない」とも語られていて、それを実現するため、ポルシェには日夜「新しいカラーの開発」に励んでいる人たちが存在するわけですね。
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ポルシェに限らずですが、最近は様々なメーカーが様々なボディカラーを投入しており、技術の発達によってこれまでになかったような高輝度塗装(マツダのソウルレッドクリスタルメタリックに代表されるようなパリオクロム系)も登場していますが、ボディカラーの開発担当者は「色」「流行」のみならず、工業的な知識も要求されることになりそうです。
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