| 現在総務省、財務省が増税を検討中、しかし経済産業省はEV普及の妨げになるとしてこれに反対 |
つくづく日本は複雑な構造と税制を持つ国だと考えさせられる
さて、EVは「税金が安い」というのはこれまでの共通認識であったわけですが、どうやらそれも「あと数年」で終わりを告げるもよう。
というのも今回日本でもEVに対する増税が検討されていると報じられているためで、その理由としては「今後ガソリン車が減ってゆくと税収も減少することになり、それをカバーするためにEVにも税金を課す必要がある」というものです。
なお、自動車にかかる税金としては4種類が存在します。
自動車にかかる税金
- 自動車税 / 軽自動車税・・・1年に1度、排気量に応じた税額を支払う
- 自動車重量税・・・新車登録時と車検時に支払う(重量に応じた税額)
- 環境性能割・・・新車購入時に支払う(管区用性能に応じた税額)
- 消費税・・・車両価格(付属品含む)の10%を購入時に支払う
現在、自動車税はこういった区分となっている
今回話題となっているのはこのうちの「自動車税」ですが、これは上述のとおり毎年支払いが生じるもので、これが増税となると結構な負担です。
なお、自動車税は「都道府県税」に分類され、所有者が(使用している本拠地の)都道府県に対して支払うことになりますが、これは排気量によって税額が決まっており、その内訳は下記のとおり。
1リットル以下 | 25,000円 |
1リットル超~1.5リットル以下 | 30,500円 |
1.5リットル超~2.0リットル以下 | 36,000円 |
2.0リットル超~2.5リットル以下 | 43,500円 |
2.5リットル超~3.0リットル以下 | 50,000円 |
3.0リットル超~3.5リットル以下 | 57,000円 |
3.5リットル超~4.0リットル以下 | 65,500円 |
4.0リットル超~4.5リットル以下 | 75,500円 |
4.5リットル超~6.0リットル以下 | 87,000円 |
6.0リットル超 | 110,000円 |
自動車税は地方自治体の大きな収入源である
そして現在、EVの区分は「1リットル以下」つまり25,000円であり、もっとも安い分類となっているのですが、総務省は2023年度の政府税制大綱へ、EVに対する増税案を盛り込むことを検討するよう与党議員に要請する予定だといい、その内容としては「EVの出力によって自動車税の額を変更する」というもの。※自動車税は日本全体で1兆5000億円くらいの規模だと言われている
つまりはこれまで25,000円均一であったEVに対する自動車税につき、高出力車であれば11万円になったりという可能性が出てくるわけですね。
もちろんこれは現在日本が進める「脱炭素化社会(カーボンフリー)」への動きに逆行するものであり、よってEV推進を強くプッシュする経済産業省としては「この流れに逆行する」として総務省の方針に難色を示している、と報じられています。
日本ではまだまだEVの普及率は高くない
なお、現時点において、日本のEV販売台数は新車全体における1〜2%しかなく、これは欧米に比較すると著しく低い数字ではありますが、自動車税そのものの収入は(登録台数の減少や小排気量化によって)2002年のピークから14%減少しているといい、まだまだEVの普及率が低いといえど、今のうちからなんとかしないといけない、ということなのかもしれません。
ちなみにですが、財務省もまたEVに対する別の課税を検討しているとも報じられ、その理由としては、「EVが普及すると、財務省が管轄しているガソリン税(2兆円くらいあると言われている)の徴収ができなくなってしまうから」で、「EVは重量が重く、ガソリン車以上に道路に負担をかける」という名目にてガソリン税に変わる税金として「走行距離に応じた課税」を行うことを検討している、と報じられています。
ただ、これについては与党・自民党の税制調査会では、一部の議員が反発したといい、しかしこういったニュースを見ると、自動車に関する税金は様々なところから様々な手段で徴収されているということもわかり、そして各省庁どうしで様々な思惑、そして駆け引きがあるということも理解できます。
参照:NIKKEI ASIA