| フェラーリ488GT3はウラカンGT3、メルセデスAMG GT3といった競合としのぎを削ることになる |
488Pとともに、そのデビュー戦での戦績に注目が集まる
さて、フェラーリは今年重要なレーシングカーを2台耐久レースへと投入することになり、そのうちのひとつが296GT3、そしてもう一台がル・マン24時間レースを走る499P。
そして今回、フェラーリは(デイトナ24時間の)デビューが迫った296GT3に焦点を当てたコンテンツを公開していますが、296GT3に課せられた使命はただひとつ、「レーシング・クイーン」と言われ、500勝以上を記録したレーシングカーである488GT3を超えること。
296GT3は画期的なソリューションを採用
296GT3の祖先は488GT3、そしてその前の458イタリアGT3にまで遡ることができますが、これら両者とも素晴らしい戦績を挙げており、とくに488GT3は2016年1月にデビューするやいなや、458イタリアGT3の記録を次々と打ち破り、6年以上の現役生活にて500勝以上を記録し、最終戦をも勝利で飾るという活躍を見せています。
そして今回、フェラーリが488GT3の後継として投入するのが296GT3ということになりますが、先代そして先々代のレーシングカーが積んでいた「V8」ではなくバンク角120度というV6エンジンを積むこと、そして2気筒少ないがゆえに車体の全長とホイールベースを切り詰めることができ、コンパクトに仕上がっていることが大きな特徴。
296GT3の開発の主眼は488GT3の長所を活かすことに加え、わずかながらも存在した488GT3の欠点を解消することにあったといいますが、その開発段階においては、コンペティツィオーニGTのドライバーに加えてクライアントドライバー、フェラーリ内の複数のチームが集結するという”濃密な”環境において行われ、その結果として、より効率的なエアロダイナミクス、より高いボディ剛性を獲得したほか、耐久レースにおいて重要な「各パーツやコンポーネントへの素早いアクセス」、なによりも重視されるべきドライバーの高い安全性を実現できたと紹介されています。
フェラーリ296GT3ではエレクトロニクス面が大きく進化
さらには重心を下げること、バラスト積載を利用して安定性を高めること、ラジエターの小型化、加えてサスペンションの新設計によってタイヤへの負担を軽減すること等も考慮されているようですね。
加えて「ドライバー目線」の改良も多数取り入れられ、488GT3から完全にリニュアールされたコクピットにおいては、容易に最適なドライビングポジションを見つけだすことが可能だとされ、新設計のステアリングホイールそしてセンターパネルに組み込まれたディスプレイによってすべての機能を操作することができ、さらにはオプションのレーダーを装備すると高解像度のスクリーンを追加でき、フェラーリいわく「こうした装備は競合を寄せつけない」。
なお、メルセデスAMG GT3についても、今までは専用のPCを接続しなくてはできなかった変更が「車両側にて、モニターを見ながらできるようになった」ことを大きな進化として挙げているので、「車両からすべての機能にアクセスできる」というのはレースの現場において非常に重要なことなのでしょうね。
加えて296GT3では、クラッチの動作、シフトチェンジ、ウェイストゲートバルブの制御をドライバーにて自在に設定できるようになっているといい、こういった設定自由度の高さも戦闘力を高めるひとつの要因なのだと思われます。
フェラーリ296GT3最大の特徴とも言えるのが上述の「V6エンジン」で、これは120度というバンク角、そしてバンクの内側にターボチャージャーを収める「ホットインサイド」によってエンジン全体のサイズ縮小、重心の低下、重量の低減などを達成していますが、さらには公道走行モデル(296GTB)よりも冷却システムを縮小し、さらにエンジンを前に、そして低く搭載したとのこと。
こういった改良のいくつかは296GTBのハードコアモデル、もしくは後継モデルに採用されてゆくのかもしれません。
なお、フェラーリはエンジンや補機類の耐久性、そして信頼性の向上にも注力したといい、これによってチーム運営のコストにも好影響をもたらす、とコメントしています。
実際のところ、最も重要なのは「勝てるマシン」であることですが、それと同じくらい重要なのがメンテナンス性や車両の維持コストだと思われ、フェラーリは296GT3をこれまで以上に「カスタマーチームにとって維持しやすい」マシンに仕立て上げたのだと思われ、そしてもちろん、なによりも296GT3は「488GT3の記録を破るため」にレースへと投入されることになりますが、その戦績には大いに期待したいところです。
フェラーリ296GT3の開発風景を収めた動画はこちら
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