ブガッティ・シロン「ゴールデンエラ」を実現しボディにその歴史を描いたデザイナーはこんな人。ブガッティのオーダーメイドプログラムはこうやって進められる

｜　とんでもなく大変そうな仕事ではあるが、これほどやりがいのある仕事も他にないだろう　｜

技術や知識のほかにも高い提案性、何よりも優れた人間性が求められる

さて、ブガッティがそのデザイナーの一人、ヤッシャ・ストラウブ氏を紹介するコンテンツを公開。

同氏は先日公開された「ブガッティ・シロン・スーパースポーツ・ゴールデンエラ」のボディに”直接”ブガッティの歴史絵巻を描いたその人ですが、この作業のために2年をかけ、そのオーナーとともにアイデアを芸術にまで消化させるための作業を行ってきたのだそう。

そしてこのブガッティ・シロン・スーパースポーツ・ゴールデンエラはブガッティのオーダーメイドプログラム「シュールムジュール」によって製作された最新作でもあり、しかしょここで製作されるいずれの車両であっても「（カスタムのための）各ステップが未知への旅」となるため、すべての車両において顧客、デザイナー、エンジニアとのセッションによって「どうやってそれを再現するか」という協議が不可欠になるとされています。

ブガッティ・シュール・ムジュール（オーダーメイド）はこうやって作業が進められる

ヤッシャ・ストラウブ氏はシュール・ムジュールの進め方について以下の通りに語ります。

「シュール・ムジュール・プロジェクト進行期間中、私は顧客と常に連絡を取り合います。ブガッティへの情熱を共有する顧客とは、電話でクルマの最新アイデアについて話し合い、お互いに意見を出し合うのです。それぞれの創造的なアイデアをプロジェクトに持ち込むというこの共同作業においては、私たち二人が限界を押し広げることになるのです。そして、私の役割は、お客様の求めるデザインと、それを実現するための技術的的用件の両方に合うような解決策を見つけるために、デザインやエンジニアリングを担当する同僚と話し合うことです」

ヤッシャ・ストラウブ氏は極めて重要な、「顧客とブガッティとの」パイプ役を担っているということになりますが、ブガッティによれば、「ヤッシャ・ストラウブがこの非常にユニークな責任にふさわしいのには、それなりの理由がある」。

ヤッシャ・ストラウブ氏はブガッティのデザイン部門でそのキャリアをスタートさせ、ディーヴォとチェントディエチのエクステリアデザインに深く関わることになり、その過程では「デザインと技術とを融合させる方法」について学ぶこととなっています。

ブガッティのハイパーカーは多くの場合「時速400キロ」を超えて走行することが可能となっていて、その環境では車体デザインの持つ意味は通常の自動車と全く異なり、車体デザインはエンジニアリング的側面と密接に結びついている必要があるとされ、よってブガッティのデザイナーは「クルマの構造、それぞのれパーツの果たす役割、強度に至るまで」深い理解を保つ必要がある、とのこと。

ブガッティのデザイナーはブランドの守護神、あるいは伝道者である

そしてヤッシャ・ストラウブ氏はディーヴォとチェントディエチというハイパーカープロジェクトを通じて深い知識を蓄えるに至り、その経験をもって現在はシュール・ムシュールにてその実力をいかんなく発揮しているというわけですね。

そしてここでは、顧客と密接に協力しつつも無限に近い可能性を秘めたプロセスを通じて顧客を導き、ブガッティ独自の傑作を創出すると同時に、オーダーメイドの可能性に対する顧客の期待を超えることをモットーとしています。

その過程では、顧客が求めるブルーの色合いを見つけるために国をまたいだり、特別な依頼のために夜通しスケッチをしたりということもあるそうですが、同時にブランドの守護者そしてガイド役も果たしており、ブガッティへの情熱、非の打ちどころのない歴史に関する知識、そしてブガッティ・ファミリーの仕事への深い感謝の念をもって顧客のクルマを「ブガッティの歴史の一部」とすることに全身全霊をかけることに。

たしかに「ブガッティが何ができるのか」はブガッティ側の人間でなくては完全に把握できず、よって顧客の要望を聞き、それにを再現するための的確な手法や技術を提案し、それによって顧客からさらなるインスピレーションを引き指すことによって「期待以上」を実現してこそがブガッティなのかもしれません。

「例えば、あるレーシングカーへのオマージュなどです。そして、そのクルマのエッセンスをどのように現在に伝えるかを一緒に考えます。私たちは、特定の分割や色の組み合わせ、小さなイースターエッグやディテールを検討しますが、常に極めてオーセンティックな方法で行います。最近の依頼では、このお客さまにインスピレーションを与えたオリジナルのクルマまで色見本を持って行き、それが完全に正しいことを確認したほどです。また、そのクルマのためだけに新しい馬蹄形グリルを開発しました。空力や冷却のことを考えると、これは大変なことです」

ヤッシャ・ストラウブ氏は顧客がシュール・ムジュール・プロジェクトを構成する際の手助けをするだけでなく、クルマの製作全体にも携わっており、顧客のビジョンがデザイン・アイデアとして明確になると、彼は顧客とデザイン・エンジニアリング・チームの両方と緊密に協力し、プロジェクトを最も純粋な形で実現する方法を模索します。

塗装のスペシャリストと相談して新しい色を作り、パターンをデザインし、エンジニアリングのコンプライアンスをチェックし、顧客の声をデザインとエンジニアリングの現実へと変換することになりますが、シロン・スーパースポーツ "ゴールデン・エラ "では、車体に直接絵を描くことを可能にするための塗料そのものを開発したこともすでにアナウンスされていますね。

ブガッティ・シュールムジュールは、ブガッティの顧客たちの驚くべきビジョンと、ヤッシャ・ストラウブ氏のような人々の情熱、知識、才能によって成り立っているといい、親密でパーソナルなレベルのオーダーメイド・カスタマイゼーションであるとともに、最終的に出来上がるオーダーメイドのハイパーカーのみではなく、そこに至る体験までを含めてが「シュールムジュール」。

そしておそらく、このシュールムジュールを活用して自分だけのブガッティを作り上げた顧客は「さらにイマジネーションを膨らませ」、次のブガッティもまたシュールムージュールを通じオーダーすることになるものと思われます。

こうやって顧客の要望が（雪だるま式に）どんどん大きくなり、これまでにない要求をなされ、それを実現するために奔走することになるものと思われますが、こういった仕事はブガッティでしかなし得るものではなく、自動車業界において、これ以上はないと思える仕事のうちのひとつなのかもしれません。

合わせて読みたい、ブガッティ関連投稿

参照：Bugatti