| ブガッティ・ボリードは特定環境のみでしか走行せず、その環境で発揮できない性能よりも、その環境で最大の性能を発揮させることに重点が置かれている |
ボリードの開発もいよいよ大詰め、あと数ヶ月以内にはついに生産開始
さて、ブガッティは現在サーキット走行専用ハイパーカー、ボリードの開発を進めており、その状況が逐次公開されているというのが現在の状況です。
これまでにはそのボディシェルや消火構造、ブレーキシステム等について紹介されていますが、今回はその最高速が「380km/hに設定される」ということが明かされ、これはボリード発表当初に掲げられていた最高速「500km/h」から大きく数字が後退してしまったということになりますね。
このほか、ブガッティはボリードのスペックを(コンセプトモデル発表時の)「1,850馬力から1,600馬力へ」「車体重量を1,240kgから1,450kgへ」と調整しており、しかしこれらの変更について、もともとボリードは「もしもこういったらスペックだったら」という仮想あるいは目標値のうえに考案されており、そして当時は生産予定がなかったものの、後に(多くの要望に応える形で)市販化がなされることとなったため、「やむをえない」のかもしれません。
そして今回、ブガッティがボリードの性能を意図的に調整したことのいくつかの理由についての解説がなされています。
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ブガッティがボリードによって追求するのは単なる速さではなく、新しい運転領域である
ブガッティがこのボリードについて今回言及したのが「標準からの逸脱、つまりブガッティが現代の歴史の中でまだ探究していなかった、まったく異なる運転領域への移行」。
これはスピードだけを重視するのではなく、サーキットでの優位性を実現するためだといい、そのための一つの要素が「運転しやすさ」で、ブガッティのピロート・オフィシエル(テストドライバー)であるアンディ・ウォレス氏によれば以下の通り。
すべてのクルマは限界に達すると運転が難しくなりますが、ボリードは能力の限界に達しても、驚くほど運転しやすいままです。 これだけの能力とこれだけのダウンフォースを備えた車があれば、それが可能だと信じる人は多くないでしょう。 私でさえ、ボリードを運転した最初のスティントの後、自分自身が(これほどの高性能を簡単に引き出せることを)信じられないという状態に陥ったことに気づきました。
つまりブガッティが重要視するのは「誰でも安全に」その性能を引き出せるということで、特定のスキルを持つ人にしか扱えない、数字だけが優れたクルマを作ることではない、ということ。
そのためブガッティは、今回ボリードにて初めて採用されるいくつかのテクノロジーに加え、ABSやESPなど、通常のレーシングカーでは利用できないテクノロジーをこのボリードへと盛り込んでいます。
一方で最高品質のカーボンファイバー複合材で作られた超軽量の先進的なモノコック(レーシングカーファクトリーであるダラーラとの共同開発)はル・マン用レーシングカーと同じ、厳しい国際自動車連盟 (FIA) の 定めたLMHおよびLMDhの準拠した要件に合わせて設計されることに。
これによってシートポジションはブガッティにとってまったく新しいものとなり、ドライバーは着座したとき、ヒールが(ヒップよりも)わずかに高く座り、乗客がボリードのノーズに向かって最適な角度になるように設定され、これはアスファルト上での揺るぎない信頼感を演出するための手法なのだそう。
さらにボリードに搭載される「”カーボンカーボン” ブレーキ」は、LMh/LMDhマシンとF1マシン両方に搭載されているテクノロジーと同等の制動力を提供し、 電子制御ディファレンシャルと高性能ミシュラン パイロット スポーツ スリック タイヤによって最大限のトラクションおよびグリップを獲得することとなりますが、このトラクションをさらに強固にするのがボリードの空力特性。
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そしてここでボリードの最高速度が380km/hに設定された理由が明かされているのですが、ブガッティによれば「ボリードの場合、唯一の境界は時速380kmに達する十分な長さのストレートを持つサーキットを見つけることができない」から。
ロードカーであるシロンだと、たとえばアウトバーンの長い直線を利用して400km/hを超える速度で走行することも可能ではあるものの、ボリードではそれができず、ブガッティによれば「世界中でほんの一握りの例外を除いて、FIAが承認したサーキットのストレートは長さは2kmを超えることができない」。
F1での公式最高速度記録は 372.499km/h (2016 年にバルテリ・ボッタスが樹立) だそうですが、この数字を見ても、サーキットでそのパフォーマンスをフル活用するには、380km/h以上は意味をなさないと考えることができるわけですね。
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こういった例を見るに、ブガッティは「サーキットで、誰もが安全にその性能を引き出すことができ、危険を感じずに楽しめるよう」そのスペックを調整したのだと考えてよく、当初の目標値からの変更はそのオーナーに対して喜びをもたらすためのものであったということがわかります。
つまりサーキットのパフォーマンスは最高速度のみによって定義されるものではなく、ボリードでは完全な最高速度よりもコーナリング、トラクション、ブレーキを優先し、サーキット走行に焦点を合わせることによって、最大で3トンものダウンフォース生成し、コーナリング時には最大で2.5Gに達する卓越したグリップ性能を生み出すことが可能となったわけですね。
さらにアンディ・ウォレス氏は「コーナーを抜け出してスロットルを踏み、容赦なくパワーが押し寄せてくる感覚は、比類のないものです。 そのコーナーから時速100kmで脱出し、そこから時速200km、そして時速300kmまで加速するのはまさに驚きです。 特定のシチュエーションでは、ボリードはF1マシンすら引き離すでしょう」とも。
加えてブガッティ・リマックのCTO、エミリオ・シェルボ氏はボリードについて以下のように自信を見せ、数ヶ月以内に生産が開始されることについても言及しています。
このレーシング DNA は、トップクラスのパフォーマンスに対する当社の揺るぎない取り組みと能力を実証するだけでなく、モータースポーツにおける当社の伝統とも深く共鳴しています。 このプロジェクトの結果は、私たちのエンジニアリング能力、職人技、そしてレースの伝統の証拠であり、私たちが非常に誇りに思っている結果です。
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参照:Bugatti