| どうしてもEVにとって「バッテリー劣化」の問題は避けることができない |
そしてこのバッテリーは容易に交換ができず、メーカーも簡単には保証交換に応じない
さて、最近の調査により「テスラのクルマに搭載されるバッテリーが、メーカー保証よりも速いペースで劣化する」ことが判明したもよう。
調査を行なったリカレントによれば、テスラ・モデル3とモデルYあわせて12,198台のデータを分析した結果、3年後の航続距離がEPA定格航続距離の64% にまで急落したとのこと。
あわせて同社は全調査対象のうちバッテリーが交換されたのはわずか2.5%だと指摘しており、そのうち2016年以降の車両は1%しかないそうなので、この統計に用いられたクルマのほとんどは「新車時に組み込まれたバッテリーをそのまま使用している」と考えてよいかと思います。
テスラは「バッテリー残量」を保証してはいるが
なお、テスラはバッテリーが定格範囲の少なくとも70%を8年間または100,000マイル (いずれか早い方) 維持することを保証しており、価格の高いモデル(つまりモデルSとモデルX)にはより長い保証期間があり、たとえばモデルXにはより長い150,000マイルの保証が付帯されています。
そこで問題となるのが今回のリカレントの調査結果で、同社が算出したテスラ車のバッテリー劣化曲線では、ほとんどのテスラ車のバッテリー残量が1年後には70%を下回っている、とのこと。
よってこの調査が正確であるならば、テスラ車のオーナーは無償にてバッテリー交換の請求を行うことができるはずですが、上述の通り実際に交換がなされているのは2.5%のみなので、実際は「そこまでバッテリーが劣化していない」もしくは「劣化していてもテスラがバッテリーの交換に応じていない」のかもしれません。※このバッテリーの交換には相当なコストがかかるため、もちろんテスラは保証の適応条件をかなり厳しく設定しているものと思われる
なお、今回の調査に際し、リカレントは以下のようにもコメントしており、正確なバッテリーの「劣化」を知ることは簡単ではないのかもしれません。
EVに搭載されるバッテリーの経年劣化を理解するもう1つの方法は、実験室でのテストから得たバッテリー科学の知識を活用することです。一般的に、リチウムイオン バッテリーはS字カーブで劣化します。バッテリーが新しい場合、バッテリーが安定状態に落ち着くにつれて、目立った劣化が見られることがあります。その後、ゆっくりと直線的に劣化する期間が長く続き、バッテリーが切れると急激に低下します。しかし、交換が必要な車であっても、リチウムイオン バッテリーの寿命の終わりに予想される壊滅的な故障はまれです。現在路上を走っているEVのほぼすべてが安定した状態にあります。
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