| ただし自動車と2008年時の住宅投資とは事情が異なり、自動車は「実需」そして換金性が高いことから危機的状況には陥らないものと思われる |
しかしそれでも借り手、貸し手ともに確実に「ダメージ」を受けることに
さて、アメリカでは2008年を中心として住宅ローンの支払いが滞ったことによって引き起こされた「サブプライム住宅ローン危機」が発生していますが、2024年第2四半期においては、自動車ローンの貸付高が住宅ローンの貸付高に次ぐ2位に浮上し、その金額も接近しているとの報道。
たしかに住宅ローン残高が急激に増加しているというのはこの数年でよく報じられる事象ではありますが、その理由はコロナウイルスのパンデミックを境に「新車、中古車の価格が上昇した」からだと言われ、より高価になったクルマを購入するため、人々が多くのお金を借りているというわけですね。
経済危機は再び起こり得る?
そこで気になるのがこの自動車ローンの貸し倒れによる経済危機が起こりうるのか?ということ。
結論から言えば「それは起こりにくい」とも考えており、まずは現状から見てみましょう。
まず、米国の平均的な世帯の主な支出の中で、自動車ローンは住宅ローンに次ぎ、負債全体の9%を占めているそうですが、今年の第2四半期には学生ローンをわずかに上回り、ここ数カ月でわずかに減少している住宅ローンとそれほど差はない金額です。
加えて「滞納が大幅に増加している」とも報じられ、7月までの滞納は2008年の世界金融危機時に記録された過去最高の水準に近づいていることも報じられています。
さらに悪いことに、新型コロナのパンデミックとサプライチェーンの不足(新車が不足し、中古車価格が急騰した時期)に多額の支出をした購入者は、車両価値が下落する中で、現在(中古価格が下がり続けているので)マイナスの資産価値、つまり買うときは高かったが売るときは安いという苦い現実に直面しているわけですね。
こうした購入者の多くは、現在、クルマの価値よりもはるかに多くの借金を抱えており、差し押さえが行われた場合、貸し手にも影響を及ぼします。
銀行は売却時にそれほど多くの現金を回収できず、ローンやローン金利に悪影響を与え、それが消費者に転嫁され、16年前のようにバブルがはじけるまですべてが繰り返されることも想像できます。
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ただし自動車ローンの場合は住宅ローン問題とは根本が異なる
一方、朗報があるとすれば、優良ローンを組んだ世帯の差し押さえが、2008年の大不況前よりも減少していることで、言い換えれば、信用度の高い人々は支払いが遅れているものの、なんとか支払いを続けているということですね。
そして自動車の場合、仮に「差し押さえ」となったとしても、「誰も住まない家を買い続けていたことで住宅の価値が暴落したサブプライム住宅ローン危機」とは異なり、現在クルマをローンで購入する人々のほとんどはクルマを「実需品」として購入しているはずなので、多数の差し押さえが生じたとしても「クルマを必要としている人がたくさんいて、差し押さえた物件(クルマ)の価値が暴落することはない」とも思われます。
よって差し押さえた側(銀行)のダメージもサブプライム住宅ローン危機のときに比較するとずいぶん小さいと考えてよく、よって「仮に」自動車ローンの支払が滞る例が多発したとしても、経済全体に大きなダメージはないかもしれません。
加えて、サブプライム住宅ローン危機時では、「家庭における住宅ローンの支払比率」が非常に大きかったことにも留意すべきで、様々な観点から見る限り、「当時とは事情が異なる」と考えて良いかと思います。
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