
| アルファロメオは“魂”を失ったのか? |
SUVが未来を作り、スポーツカーが魂を守る?
アルファロメオが初のSUV「ステルヴィオ」を発表してからはや10年。
その後小型クロスオーバー「トナーレ」や「ミラノ」も登場し、アルファロメオはSUV路線を強化しているというのが現状ですが、この流れを「伝統の喪失」と感じるファンは少なくないものと思われます。
さらに今後はポルシェ・カイエン級の大型SUVも計画されており、往年のアルフィスティたちは落胆を隠せずにいるのかもしれません。
【現実】SUVがなければ、ブランドは生き残れない
ただし現実は厳しく、多くのエンスージアストが認めるように「スポーツカーだけでは」事業は成り立ちません。
実際のところ、マーケティング責任者のクリスティアーノ・フィオリオ氏はカーメディアによる取材で次のように語っています:
「まずは信頼を築くことが必要です。年間1モデルずつ確実に”売れる”クルマを発売し、利益を出し、投資に見合う数字を達成する。そうして初めて“夢”を見ることができるのです。」
つまり、SUVや主力車種で利益を出さない限り、新たなスポーツカーを開発する資金も承認も得られないということを示唆しているわけですね。
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【幻の名車たち】8C・GTVの復活はキャンセル済み
アルファロメオはかつて、「8C」や「GTV」の復活を計画していましたが、2019年にこれらのプロジェクトはキャンセル済み。
そして2020年には最後の「4C」がラインオフし、以降、純粋なスポーツカーはそのカタログから途絶えています。
【次期ジュリア】伝統のセダンも“リフトバックSUV”に変貌
現行「ジュリア」はアルファロメオのスポーツ精神を宿したFRセダンとして人気を博したものの、この次期モデルもまた”時代にあわせ”大きく姿を変える予定です。
アルファロメオ新CEOのサント・フィチリ氏によると、次世代ジュリアは3ボックス構造を廃止し、プジョー408やクラウン・クロスオーバーのような5ドアリフトバック風になるとのことで、SUVに近いスタイルへの転換が進んでいますが、これもまたアルファロメオの主力市場である欧州における「トレンド」を盛り込んだものであり、とにかくいまのアルファロメオは「市場を自ら切り開く」より、「市場へと追随するしかない」のかもしれません。
【唯一の例外】33ストラダーレは“裏プロジェクト”だった
2023年に発表されたスーパーカー「33ストラダーレ」は、多くのファンを歓喜させたことでも記憶に新しく、しかし実のところこれはアルファロメオの公式プロジェクトではなく、「クレイジーな有志」が業務外で開発した例外的存在だったのだそう。
開発コストを抑えるため、(同じステランティス傘下にある)マセラティMC20と共通のカーボンモノコックやアルミサブフレームを流用し、エンジンもMC20から転用された3.0L V6ツインターボをベースとすることろからもその苦労が伺えますが、それでも内外装や足回りには独自設計が加えられ、インテリア/エクステリアの美しさ、ジュリア GTAm譲りのアダプティブダンパー付きマルチリンクサスペンションは高く評価されており、これに続くプロジェクトにも高い期待が寄せられています。
Image:Alfaromeo
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【今後のスポーツカー】“手の届く”価格帯で登場か?
クリスティアーノ・フィオリオ氏によると、次に登場するパフォーマンスモデルは「33ストラダーレのような7桁ユーロ(数億円)の超高級モデルではなく、より手が届きやすい価格帯を目指す」。
ただし、完全なる新規開発はコスト的に困難で、となると既存プラットフォームを流用することになりますが、アルファロメオは現在ジュリア/ステルヴィオに使用している「ジョルジオ(Giorgio)プラットフォーム」を廃止する予定のため、新型スポーツカーを開発するにしても、ステランティスグループの持つ共通アーキテクチャを活用する可能性が高いと見られています(登場時期については「2020年代後半〜2030年代初頭」が現実的と推測されている)。
かつてのアルファロメオは、ドライビングプレジャーの象徴であったものの、しかし今日、そのブランドは変革の真っ只中にあり、SUVがその屋台骨を支えています。
それでも「夢」を語るクリスティアーノ・フィオリオ氏の言葉や、33ストラダーレのような情熱のプロジェクトが残っている限り(そしてこのプロジェクトの実現を許した環境がある限り)、アルファロメオの魂はまだ消えていないのかもしれません。
いつの日か、ジュリアSZやブレラのような刺激的なスポーツカーが帰ってくる──そんな日を信じ、今は“足元”の成功を見守るしかないというのが現状だと思います。
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参照:Motor1