
Image:Neta Auto
| トヨタ買収報道は“完全否定”、だが事態はより深刻に |
“買収否定”の裏で進むネタ破産の現実とは
ここ数日、中国発の電気自動車スタートアップ「哪吒汽車(ネタオート / Neta Auto)」に関する破産危機のニュースが波紋を呼んでいますが、話題となった理由のひとつが「トヨタによる買収」。
多くの自動車メーカーが―が中国市場にて「白旗」をあげる中、トヨタは徹底的に抗戦する構えを見せており、しかし「(中国では非常に重要なセグメントである)EV開発の出遅れ」が指摘されている状態です。
よってトヨタはBYD等と手を組んでこの遅れを挽回しているというのが現状ではあるものの、(EVに強みを持つ)ネタを買収することでEV開発の速度を早め、一気にビハインドを帳消しにする意向を持っているのでは、と報じられたわけですね。
ただしトヨタによるサプライズは「実現せず」
しかしながらこのサプライズ報道は現実のものとならず、当のトヨタおよび哪吒汽車は即座にこれを否定。
「そのような話は聞いたことがなく、誤情報の訂正をお願いします」
トヨタ中国 広報責任者・徐一鸣
よってトヨタによるネタの買収は「消え」、しかし実際の状況は想像以上に深刻で、資金調達の失敗、サプライヤーへの債務問題、そして親会社への破産申請――。
一体(あれほどまでにもてはやされた)ネタに何が起きているのか、ということもEV業界へと大きな波紋を投じています。
A recent community gathering event hosted by Neta Elite Baksai has brought Neta Indonesia customers together.#NetaAuto #Netaindonesia pic.twitter.com/a4PbpT0QzI
— Neta Auto (@netaautoglobal) April 29, 2025
【背景】哪吒汽車(ネタオート / Neta Auto)とは?
まず、この哪吒汽車は、合衆新能源汽車(Hozon Auto)が展開する中国の新興EVブランド。
若年層や地方都市を中心に人気を集めていましたが、競争の激化とコスト高により、2024年以降経営が急速に悪化しています。
【ネタの急速な資金繰り悪化】サプライヤー130社と債務株式化合意も…
2025年3月、哪吒汽車の上海本社には多数のサプライヤーが未払い金の支払いを求めて訪問。
これを受けて開催された「債務再編会議」では、以下のような対応がとられましたが、これは“延命策”にすぎなかったことが後の展開で明らかに。
- CATL、国軒高科(Gotion)などの大手含む134社と総額20億元(約285億円)の債務株式化に合意
- 一時的な信頼回復に成功
【ネタの資金調達失敗】頼みの投資家から資金が届かず
さらに2025年1月に行われたEラウンド(シリーズE)資金調達では、以下の計画が示されましたが、(4月に獲得予定であった資金が)5月に入っても入金されておらず、資金繰りが破綻寸前という状態に陥っているというのが直近での報道の内容です。
- 調達目標:40〜45億元(約570〜640億円)
- リード投資家:30億元(約430億円)出資予定
- 4月中に資金着金 → 生産再開と新型車開発に充当予定
NETA S is going to be available in Thailand very soon.Bringing next generation intelligent mobility for Thai people.#NetaAuto #NetaThailand #netas pic.twitter.com/ijxN4F3Zvk
— Neta Auto (@netaautoglobal) April 23, 2025
【最新】親会社が破産審査に突入
そして今回出てきた最新(2025年5月13日)の報道が、中国の国家企業破産情報公開プラットフォームにより、「親会社である合衆新能源汽車が破産審査入りしたことが判明した」。
- 原告:上海宇興広告有限公司
- 裁判所:浙江省嘉興市中級人民法院
- 今後の流れ:裁判所が破産申立を正式に審査し、再建型か清算型かを判断
これは単なる訴訟ではなく「破産法に基づく正式手続き」であり、再生型(日本でいう民事再生)となるか、破産清算に移行するかが今後数週間で決まる見込みです。
【中国EV市場の冷酷な現実】競争激化と価格破壊が要因か
哪吒汽車の失速は、中国EV業界全体の縮図とも考えてよく、シャオミ(小米)やBYDの攻勢、ヤンワンU9など高性能EVの低価格攻勢が相次ぐなか、中堅以下のスタートアップは淘汰の波にさらされ、つい最近も中国の識者が「今後、生き残るEVブランドは数えられる程度」という衝撃コメントを発したばかりですが、まさに現実がその予測に近づいているということなのかもしれません。
Neta Aya Built for the city hustle. Powered for a cleaner future.#NetaAuto pic.twitter.com/cjK0reIRss
— Neta Auto (@netaautoglobal) April 21, 2025
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トヨタによる買収報道は明確に否定されはしましたが、その裏で哪吒汽車は資金ショート寸前、親会社は法的整理段階に入ったことが明らかとなっており、今後の焦点は以下に絞られ、中国のEVスタートアップにとって、資金力と生産継続能力が「生死」を分ける時代が本格化したとともに、「なんらかのずば抜けた(技術的、デザイン的、マーケティング的な)特徴を持たなければ、買収すら検討してもらえないということなのかもしれません。
- 破産手続きが再建型で進むか
- 出資予定だったリード投資家が土壇場で資金を投入するか
- CATLなどサプライヤー連携による“再起支援策”が出てくるか
さらにこういった「EVメーカー倒産」の影響とは無縁ではないのが消費者で、つまり「自分が購入したEVが今後アップデートできなくなる」ばかりか、現在提供されているコネクティビティに関するサービスが停止されてしまい、機械的に故障したとしても(パーツの提供中止等によって)修理の範囲が制限される可能性があり、文字通り「鉄塊」となってしまうことも懸念されます。
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参照:CarNewsChina, netaauto(X)