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毛沢東の命によって設立された中国の最高級車「紅旗」が欧州上陸か。ステランティスと極秘交渉が持たれ、同社が欧州への橋渡しを行うと報じられる

中国・紅旗のショールームにて

| ステランティスは「生産が減少し」稼働率が低下している工場での生産枠をなんとか確保したい |

中国の「赤い旗」が欧州を飲み込む?歴史的提携の全貌

中国で最も歴史があり、国家主席の専用車としても知られる高級車ブランド「紅旗(ホンチー)」。

この中国のプライドを象徴するブランドが、欧州での現地生産に向けて大手自動車メーカー、ステランティス(Stellantis)と交渉中であるとの衝撃的なニュース報じられています。

この背景には「欧州連合(EU)による中国製電気自動車(EV)への高額関税回避と急速な市場拡大を狙う紅旗」、一方で「クルマが売れず、欧州の自社工場での稼働率を上げることで会社維持の安定化を図ろうとするステランティス」双方の思惑があるといい、これらの利害が一致した「禁断のタッグ」が世界の自動車勢力図を塗り替える可能性がある、と報じられているわけですね。

なお、現在の自動車業界は中国の自動車メーカーが「その中心」にあることは間違いなく、よって今後日米欧の自動車メーカーの生き残りは「中国メーカーとの付き合い方」にかかっていいて、全体的な方向性としては「敵対ではなく協調」、そして協調であってもその内容が様々な方向性へと波及しているというのが直近の状況です。

中国の高級車、紅旗のショールームにて
フォードと吉利が「禁断のタッグ」。中国製EVが欧州の関税を回避する「奇策」とは?そしてついにフォードが中国を頼るという「逆転現象」
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この記事のポイント

  • スペイン生産の可能性: ステランティスのスペイン工場で紅旗の車両を組み立てる交渉が進行中
  • 関税回避の「妙手」: 欧州現地生産により、中国からの輸入車に課される多額の関税を回避
  • 複雑な協力関係: ステランティスが出資する「零跑汽車(リープモーター)」を介した多角的な提携スキーム
  • 野心的な目標: 2028年までに欧州で15以上の新モデル投入と200店舗のディーラー網構築を目指す
毛沢東が設立した「中国で最も高級で高価な」自動車ブランド、紅旗ディーラーへ。「日本小鬼」と言われてつまみ出されるかと思ったが、実際はすごく親切だった【動画】
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なぜ今、紅旗とステランティスなのか?

ロイター通信などの報道によると、紅旗の親会社である「第一汽車(FAW)」とステランティスが「スペインにある既存工場を利用した生産委託について話し合いを進めている」とのこと。

この交渉のキーマンとなっているのが、新興EVメーカーの「リープモーター(零跑汽車)」で、ステランティスは同社の20%の株式を保有しており(よってステランティスはリープモーターを重要パートナーとして扱っており、同社の動きを自社のプレスリリースにて紹介したりする)、一方で第一汽車も同社の株式のうち5%を保有しています。

よって、この共通の接点をルートとし、「紅旗の欧州進出を加速させる計画」が進んでいるというわけですね。

中国車(紅旗のショールームにて)

欧州進出の「2つの壁」を突破する戦略

紅旗にとって、これまで欧州進出に関しては大きな壁が2つ存在し・・・。

  1. 関税: EUが強化している中国製EVへの輸入関税
  2. コスト: その関税を回避するため、欧州にゼロから新工場を建設するには数億ドルの巨額投資が必要

よって、ステランティスの余剰設備(工場)を利用できるのであれば、投資額を最小限に抑えつつ「メイド・イン・ヨーロッパ」として関税を回避できるという「紅旗にとって極めて有利なシナリオ」を描けます。


ブランド概要と市場でのポジショニング

紅旗(Hongqi)ブランドの正体

紅旗は1958年に毛沢東の命によって誕生した「中国初の自国生産車」としても知られ、毛沢東をはじめとする歴代指導者が愛用してきたナショナル・フラッグシップ・ブランドです(車両に付与される「紅旗」の文字は毛沢東の直筆を立体化したものである)。

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かつてはソ連製リムジンに依存していた中国が、国の威信をかけて開発したという歴史的背景もあって、主には政府の要人、そして共産党員が購入することが多いようで、そのため中国の首都、北京では結構な台数の紅旗車を見かけます(一方、商業都市である上海ではそこまで多くはない)。

「L5」などの一部モデルについては非常に厳しい購入制限が課されるものの、その他のモデルについては一般人でも購入が可能だとされ、そして紅旗は現在「世界へと向けて」その販路を拡大する計画を持っている、というわけですね(一時、イタリアのコーチビルダーと組んでハイパーカーを発売する計画を打ち出していたが、現時点では実現に至っていない)。

紅旗の欧州展開・戦略まとめ

項目詳細・目標
創立1958年(中国・長春)
親会社第一汽車集団(FAW Group)
欧州目標(2028年)15以上のEV・ハイブリッドモデルを投入 / 200店舗以上のディーラー開設
主要市場ノルウェー、オランダ、ドイツ等に順次拡大中
主な競合ロールス・ロイス、ベントレー(超高級車領域)、メルセデス・ベンツ(EQ / EV領域)

ステランティスの思惑:多角的なパートナーシップ

なお、ステランティスは紅旗だけでなく、東風汽車(ドンファン)、XPENG(シャオペン)、Xiaomi(シャオミ)とも交渉を持っていると報じられ、これはオランダに本拠を置くこの巨大コングロマリットが「欧州の遊休工場の救済策として、中国メーカーの中から最も有利な条件を引き出そうとしている」戦略の現れともいうべき行動であり、ある意味では欧州の自動車業界を破壊しかねない「諸刃の剣」であるとも見られています(自社の遊休工場を救えるかもしれないが、そのために中国の自動車メーカーに対しEUへの扉を大きく開いてしまう)。※フォルクスワーゲングループは遊休工場を中国の自動車メーカーに売却するという手段を選んでいる

VW
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中国ブランドの「多国籍化」

かつて「模倣品」と揶揄された中国車ではありますが、今やそのテクノロジーと資本力は欧州の老舗メーカーをも動かす存在となっており、紅旗がスペインで生産されるようになれば、それは「中国車」というカテゴリーではなく、アップル製品が中国で作られるのと同様に、「グローバルに設計・生産されるブランド」へと変貌を遂げることを意味します。

また、紅旗のV型12気筒エンジンを搭載した「Lシリーズ」のような超高級リムジンだけでなく、欧州の好みに合わせた洗練されたEV SUV(E-HS9など)が欧州各地の街中を走り回る日が「すぐそこまで」迫っているという事実を予感させるのが今回の報道ということに。

これはつまり、「毛沢東の愛車、そして中国自動車産業の象徴」がスペインの風を浴びつつ生産されということをも示していて、かつては想像もできなかったシナリオが現実味を帯びている、というわけですね。

中国の高級車、紅旗のショールームにて

いずれにせよ、ステランティスと紅旗の提携が実現すれば、紅旗は巨額のコストと関税をスキップして一気に欧州市場の主役に躍り出るかもしれません。

これは「工場貸し」の枠を超えた、欧州と中国の自動車産業が複雑に融合していく未来の予兆とも言えるもので、その交渉の動向から目が離せない、という状況です。

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参照:Reuters, etc.

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