
| ポルシェはこの事態を見越して「リスク分散」を行ってきたものの、いずれの対策も「不発」に |
すでに計画の一部は見直し済み、それでもさらなる計画の変更は避けられない
さて、EVの販売不振、中国市場での勢力衰退によって「深刻な」状況にあると言われるポルシェ。
中国市場については「(EV市場からの)撤退」も視野に入れていると報じられていますが、そのほかの市場における「ガソリンエンジン需要」へと対応すべく、ハイブリッド車の拡充を図っているというのが現在の状況です。
ポルシェはEVを完全に諦めたわけではないが
なお、このハイブリッド車の復活については「EVとして開発されたモデルにガソリンエンジンを搭載しハイブリッド化する」という(フィアット500eと同様の)手法を採用すると見られ、しかしポルシェはEVを完全に諦めたわけではなく、ハイブリッドモデルの開発を進める一方でEVの開発も継続しています。
そして「現在開発中」のEVのひとつが「新型718」。
この新型718(ケイマン・ボクスター)は完全なる電動モデル(BEV)に置き換えられるというのが現在の路線であり、2026年に発売するという計画をもって開発が進められていたわけですね。
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ポルシェのEVスポーツカー計画に再び暗雲
なお、この「2026年」というのはいったん”後ろ倒し”されたスケジュールなのですが、今回新たなバッテリー供給の問題により、再び発売が延期されることになるとレポートされており、ポルシェCEOのオリバー・ブルーメ氏が明かしたところによると、「高性能なバッテリーセルの調達が難航しており、計画に大きな支障が出ている」。
新型ポルシェ718の開発遅れにはスウェーデンのノースボルト破綻が影響
この問題の大きな要因は、ポルシェのバッテリー供給元であるスウェーデンのノースボルト社が2024年末に破産したことに端を発していて、というのも同社はポルシェのEV開発において中核を担っていたため、その影響は非常に大きく、ポルシェの電動化計画全体が見直しを余儀なくされている、というのが現在の状況です。
ただ、この「ノースボルト問題」は新しいものではなく、以前からその問題が指摘されていたということもあり、ポルシェはリスク回避の一端として2021年にドイツ・テュービンゲン近郊でバッテリーセルを開発・製造する「セルフォース・グループ」を設立済み。
しかしここでもアジア勢との競争激化によって外部投資の確保が困難となり量産化の目処が立っていないとされ、ポルシェが目指していた「内製バッテリーをスポーツカーに搭載する」プロジェクトが実現しない可能性が高まっています。
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さらにポルシェは(やはりリスクヘッジを目的として)2025年3月にバッテリーメーカー「VARTA」のeモビリティ部門に過半数の出資を行いましたが、依然として安定供給には不安が残り、つまりはもともとの戦略、さらにはリスク分散戦略すらも「裏目に出る」ことでEV戦略が複雑化し、スケジュールや開発コストにも影響を与えているわけですね。
欧州での「718ケイマン・ボクスター」ガソリンモデル販売も終了へ
さらに、ヨーロッパでは2024年半ばに新たなサイバーセキュリティ規制により、現行の718モデルの販売が打ち切られ、北米など他市場では継続販売されているものの、2025年末には生産終了が予定されています。
そのため、EVモデルの遅れによって、ボクスターおよびケイマンがポルシェのラインナップから一時的に姿を消す可能性も生じており、「シームレスに電動モデルへと移行するはずであった」ポルシェの計画が破綻する可能性も高まっています。
バッテリー問題は他のプロジェクトにも波及
そしてこのバッテリー供給の混乱はスポーツカー(新型718)だけでなく、ポルシェが開発中の3列シートSUV「K1」にも影響を及ぼしているといい、当初は2027年の市場投入が予定されていましたが、これも2030年ごろまで延期される見込みとなっており、もちろん「カイエンEV」もこの問題とは無縁ではないのかもしれません。
さらには「EVを敬遠する」という(中国以外で見られる)市場動向により、ポルシェが電動化計画を一部修正したことも既報のとおり。
ポルシェはEV計画見直し、内燃機関回帰の兆しも
2030年までに80%をBEVにするという目標は後退し、(上述の通り)新たに内燃エンジンおよび搭載モデルの開発も再開され、状況によっては、電動モデルとして開発が進められていたボクスターやケイマン、K1 SUVに内燃機関オプションを用意する可能性も検討されています。
ポルシェが掲げていたEV化の未来は、いまやバッテリー供給の不安定さやパートナー企業の経営破綻によって大きく揺らいでおり、ポルシェが柔軟に戦略を調整し、内燃機関とEVの両立を図る姿勢は、今後の市場ニーズに応える鍵となるのかもしれません。
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