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【なぜ不人気?】フェラーリ296 GTBの中古価格が急落中──V6ハイブリッドは“ファンへの裏切り”なのか?

【なぜ不人気?】フェラーリ296 GTBの中古価格が急落中──V6ハイブリッドは“ファンへの裏切り”なのか?

| やはり「新しい思想」が受け入れられるのには時間がかかる |

フェラーリ296 GTB──中古市場で苦戦する最新モデル

さて、フェラーリの最新ミッドシップモデル「296 GTB」が、予想外の中古価格急落に見舞われるという状況に。

2022年に登場したこのモデルは、V6+ハイブリッドという新しいパワートレインを採用し、最高出力830馬力を誇る意欲作。

しかし、現在の中古市場では新車価格を大幅に下回る個体が続出しており、海外のフェラーリ専門掲示板では「296の中古相場は壊滅的。コレクターズカーとは程遠い」という声も。

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なぜフェラーリ296は人気がないのか?

そこで「なぜフェラーリ296GTBは人気が出ないのか」について考えてみると、おおよそは以下に集約されるのかもしれません。

① V6エンジンへの違和感

296 GTBは、フェラーリ初のV6エンジン+ハイブリッド構成を採用しています。

従来のV8やV12に慣れたファンにとって、「シリンダー数が減った=価値が下がった」という直感的な反応も少なくないように思われ、これは最新ハイパーカー「F80」に対する反応も同様です。

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② ハイブリッド=信頼性不安&重量増

そして次に考えられるのが「ハイブリッドシステムを搭載」というパッケージング。

スポーツカーにとってのハイブリッドシステムを「敵」だと捉える人々はけっこう多く、バッテリーとエレクトリックモーターによる構造の複雑化や重量増加(F8比で約70kg増)に対し、保守的なユーザーは慎重な姿勢を貫いています。

加えて「修理代が高そう」「余計な電子機器が多い」「バッテリーの劣化が心配」という声も聞かれ、ハイブリッドシステムに対してポジティブな意見は「ほとんどない」というのが現状です。

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③ タッチ操作だらけの内装

SF90から導入されたタッチキャパシティブ式のインテリアボタンも評判が悪く、「わかりづらい」「操作性が悪い」といった評価が多く見られ、これが中古購入時の試乗段階でマイナス印象につながることも指摘されているもよう。

なお、フェラーリはこの問題にいち早く対処し、はやくも(ぼくの知る範囲では)ステアリングホイールに関しては2回の改良が入り、最新の296スペチアーレでは「物理ボタン」を備えるスポークが導入されています。

そしてぼくが思うに、「ハイブリッド」「静電式スイッチ」など新しいものを導入したがため、296GTBは「タイムレスではない」と判断されてしまったのかもしれません(ブガッティ・トゥールビヨンはそれを危惧し、デジタルを可能な限り隠して”アナログ”を押し出したのだと思われる)。

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実際に乗れば評価は一変する──296GTBは“本物のフェラーリ”であることがわかるかと

とはいえ、運転してみると評価は一転することがよく知られており、これは多くのジャーナリストが296GTBを推していることでもわかるとおりで、実際にドライブした人々からは以下の声も聞かれます。

  • ピッコロV12(小さなV12)”という開発時のニックネームは伊達ではなく、高回転域のサウンドは官能的。
  • ハイブリッドモーターによる低速トルクと電動走行(約15km)は、実用性の面でも◎。
  • シャシー剛性と操縦性は歴代フェラーリと同等か、それ以上の完成度。
  • 最新DCTは変速も自然かつスムーズ。

操作系については確かに最初は戸惑うものの、「数日乗れば慣れる」というのがぼくの正直な印象で、これは「些細な問題」だとも考えています(様々な批判については、実際に296GTBを運転したことがない人たち、そして新しい考え方やモノに否定的な人たちが重箱の隅をつついているだけだと捉えている)。

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296GTBは“過渡期フェラーリ”──でも、それこそが魅力

296 GTBは、フェラーリが次の世代へと進化するための橋渡し的存在だとも考えていて、つまり「今のフェラーリ」を象徴する存在。

「環境規制が厳しくなかった昔」であれば「V6+ハイブリッド」を作る必要はなく、「内燃機関が禁止されるであろう未来」においても存在し得ないクルマです。

変わりゆく世の中や環境規制、それに対応するために発展したテクノロジーという「今できるベスト、未来への挑戦」が形となってあらわれたのが296GTBだとも考えることができ、これもまたF80と同様なのかもしれません。

実際のところ、F80も「V6++ハイブリッド、しかも4WD」という構成が「ピュアではない」「フェラーリのDNAを反映していない」と言われているものの、フェラーリのDNAのひとつである「V12自然吸気」は既にほか世代のスペシャルモデルで実現されており、よってこれを「なぞらえる」のはむしろフェラーリらしくない、とも考えています。

実際のところ、この「V6++ハイブリッド+4WD」は499Pにてル・マン3連覇をなしとげたことでもわかるとおり、「現在のフェラーリを象徴する勝利の方程式」でもあって、この10年を代表する限定モデルであるF80にしか採用できない構成なのだと思われます。

よって、(288)GTO、F40、F50、エンツォフェラーリ、ラ・フェラーリとF80を並べた時、「フェラーリの進化が一目でわかる」存在となるのがF80であり、ここでもしF80が「V12自然吸気」で登場していたとしたら、それは「フェラーリのスペシャルモデルではない」のかもしれません(フェラーリのスペシャルモデルはフェラーリの挑戦と進歩を示すべき存在で、過去を振り返るものではない。一方、過去へのオマージュとしてイコーナシリーズが存在する)。

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まとめ:フェラーリ296GTBは”誤解されているだけ”の傑作かもしれない

こういった理由もあり、ぼくは296GTBは「いまのフェラーリを象徴する存在」だとも捉えているのですが、しかし実際のところ、296GTBの(中古市場における)評価が低いことは間違いなく、ここは正直フェラーリになんとか啓蒙活動を頑張ってもらってその価値を向上させてほしいところ。

296スペチアーレの登場、アメリカでの関税導入によって中古相場が活性化する可能性も考えられるものの、現在のところ劇的にそれが向上するとも考えられず、しかし「お買い得」となりつつある296GTBの流通が拡大することによって、多くの人が296GTBに触れ、そしてその完成度の高さが知れ渡る日を待つしかなさそうですが、「シリンダーが少ない」「ハイブリッドは重い」──そういった偏見が持たれたままでは、296GTBの本当の価値には気づいてもらえず、今後、時代の変化とともに、この“異端児”であるスモールフェラーリが再評価される日が来ることを願うばかりです。

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参照:Motor1

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JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

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