
Image:LADA
| Lada Azimut正式発表:ロシアが「完全独自開発」と豪語する新型クロスオーバーとは? |
“技術的主権”を強調、完全自国開発をアピール
ロシアの自動車メーカーAvtovaz(アフトヴァース)が、約30年ぶりの新型クロスオーバー「Lada Azimut(ラーダ・アジムット)」を正式発表。
このアジムットはトヨタ・カローラクロスと同等のサイズ感を持つコンパクトSUVで、2025年の発売を予定しており、同時に実車も公開されています。
参考までに、ウクライナ侵攻後、ルノーなど多くの外国自動車メーカーがロシア市場から撤退していますが、これによってロシア国内市場における競合が減少し、ラーダの親会社であるアフトヴァースは国内シェアを大きく伸ばすことに。
この影響で2023年のラーダの販売台数は前年比87%増と大幅に増加し、ロシア国内のシェアは過去20年で最高の35%に達していますが、2024年の販売台数も過去12年間で最大を記録していて、こういった背景がラーダに開発資金と機会を与え、「30年ぶりの新型車発表」となったのだと思われます。
デザインと装備:見た目は“欧州風”、中身はローカル特化
Azimutは、約996個の新規・改良部品を採用したモデルだとされ、プラットフォームは既存のLada Vesta(ラーダ ヴェスタ)の発展版。
ただしラーダ開発陣は「西側諸国の支援なしに完全独自で開発・生産した」と主張しており、ロシアと西側諸国との緊張感が高まる中、この点が大きくアピールされていることには要注目かと思います。
開発にはロシア政府、特にプーチン大統領の個人的支援と監督があったとも明言しており、「自動車産業の主権化」が国家的プロジェクトとして推進されていることが伺えますね。
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なお、現在もロシアに対する経済制裁は続いており、これによって「西側からの供給に依存していた」エアバッグなどのパーツ・ユニットの入手が困難となったとも報じられていますが、この傾向が「脱・西側諸国」「自国による独自技術の構築・サプライチェーンの確立」を急がせたことも想像に難くありません。
参考までに、ロシアのウクライナ侵攻前にもいくつかの(ラーダによる)新型車の話があったものの、それらは西側の技術やパーツ、そして当時のパートナーであったダチアに大きく依存していたのだとも考えられ、戦争勃発とともにそれらの話は白紙になったのだと考えられます。
ただしその外観はダチアとの関係性が色濃く残る
このアジムットの外観は、かつてのパートナー企業であるルノー傘下のブランド、ダチア(Dacia)各車を思わせる角ばったスタイリングを持っており、ヨーロッパの一般的なクロスオーバーといった印象ですが、ラーダはかつてダチアと多くの技術共有をしていた背景があるため、その影響が今なお色濃く残っています。※ルノーはロシアから撤退する際、保有していたアフトヴァースの株式や設備をロシア側に売却している
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Sber銀行が設計したインフォテインメントシステムを採用
そしてユニークなのは、インフォテインメントシステムの開発元がロシア国営銀行Sber(スベル)であること。
このシステムには以下のような独自機能が搭載予定です。
- カーナビ上での燃料決済
- スマホアプリ「Sber App」による車両遠隔操作
- 通信サービス「SberMobile」との連携
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ラーダ・アジムットはこんなスペックを持っている
そこでこのアジムットのスペックを見てみると、まずは2種類のパワートレインが用意され、将来的には150馬力のターボエンジン+トルコンATも追加される見込みだと説明されています。
エンジン | 出力 | トランスミッション |
---|---|---|
1.6Lガソリン | 120ps | CVT or 6MT |
1.8Lガソリン | 132ps | CVT or 6MT |
ライバル不在の国内市場で「価格対品質比No.1」を目指す
現在のロシア市場は、(西側の自動車メーカー撤退により)ラーダ車と一部中国ブランド車が主流を占めており、アジムットには「明確な直接競合」がほぼ存在しない状況。
そのため、ラーダはアジムットをして「ロシア市場で最高のコストパフォーマンスを提供するクロスオーバー」と位置づけていますが、現在ロシア新車市場における「約1/3」というシェアをさらに強化するモデルとなりそうです。
実際のところ、このアジムットは、政治的・産業的な意味合いを含みつつも、実際のクロスオーバー市場においても競争力ある設計と装備を備えたモデルだと考えられ、今後のターボモデルの展開や、ロシア国内における反響にも注目が集まりますね。
新型ラーダ アジムットを紹介する動画はこちら
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