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【奇跡の復活劇なるか】「スパイカー(Spyker)」が再び死の淵から蘇る:異端のスーパーカーメーカーを救う「IP権奪還」と「手作りエキゾチックカー」需要の波

【奇跡の復活劇なるか】「スパイカー(Spyker)」が再び死の淵から蘇る:異端のスーパーカーメーカーを救う「IP権奪還」と「手作りエキゾチックカー」需要の波

Image:Spyker

| スパイカーは「はじめて直6エンジンを自動車に積んだ」メーカーである |

イントロダクション:諦めない異端児、スパイカーの再々始動

かつて、その職人技と風変わりなデザインで、メインストリームのライバルとは一線を画すユニークなスポーツカーを生み出してきたオランダのメーカー、スパイカー(Spyker)。

しかし2000年代初頭の輝かしいデビューも束の間で、サーブ買収の失敗が響き、2014年には破産を喫することに。

その後2015年に一度復活を遂げたものの、2021年に再び暗礁に乗り上げ、沈黙が続いているのがちょっと前までの状況です。

スパイカーが三度目の復活を画策していると報じられる

そして今回、スパイカーが「3度目の復活」を目指しているという報道がなされており、スパイカー自身からも「創業者であるヴィクター・R・ミュラー氏がこの度、長年の法的係争を経て、ついに会社の知的財産(IP)権すべてを取り戻した」という声明が出されることで新しい局面を迎えようとしているのが直近のスパイカー。

デザインと商標の所有権が回復した今、スパイカーは再びオランダで、その名を知らしめた手作りのスポーツカーの生産を再開する計画を表明しています。

Ⅰ. 「権利奪還」と「新勢力」による復活の土台

スパイカー復活の鍵は、創業者の執念と、ブランドを愛する強力な協力者の存在にあるとされ、しかし復活までの道のりは文字通り「前途多難」。

ここで現状の整理、そしてスパイカーが乗り越えねばならない壁をみてみましょう。

1-1. 粘り強い交渉の末のIP権確保

ヴィクター・R・ミュラー氏は、長年にわたる管財人との法的な対立を経て、ついにすべてのIP権と商標に関する和解に至ることに。

これにより、親会社であるスパイカー・リミテッド(Spyker Ltd)の影響を受けず、会社は過去のデザインや技術を法的基盤として再スタートを切ることができます。

1-2. 復活のキーマン:「Spyker Enthusiast」の存在

今回の再建で重要な役割を担っているのが、ジャスパー・デン・ドッパー氏なる人物。

「スパイカー・エンスージアスト(SpykerEnthusiast)」として知られる彼は、クラシックスパイカーに関する第一人者であり、多くの既存車両の維持に貢献してきたそうですが、彼のような熱烈な支持者が内部に加わることは、単なる資金的な再建を超え、ブランドの魂を繋ぎとめる上で不可欠あるとも報じられています。

Ⅱ. 過去との決別:求められる「新しい」スーパーカー

しかし、過去の栄光だけでは再建は成り立たず、ジャスパー・デン・ドッパー氏が指摘したとされるように「プレリエイター(Preliator)やアイレロン(Aileron)のようなモデルを単純に再生産することはできない。それらのクルマはもはや時代遅れだ」というのが現実です。

2-1. 新時代に適合した製品開発の必要性

スパイカーが生き残るためには、「新しい何か」に取り組む必要があり、そしてそれは「海外からのサプライヤー」との協力も視野に入れた、未来を見据えた開発となるのは間違いないと見られています(オランダにはスーパーカー関連技術に長けたサプライヤーが多くはない。そしてスパイカーが外部の協力を得ずに新型車を開発することは困難である)。

重要なのは、例え外部の力を借りたとしても、スパイカーがオランダの企業であり、製造拠点をオランダ国内に置くという原則を維持すること。

これは、スパイカーの核となる「オランダのクラフトマンシップ」というブランド価値を守るために譲れない一線です。

2-2. 現代のエキゾチックカー市場が示す「追い風」

再建を試みるタイミングとして、「今」はスパイカーにとって最高の時期かもしれません。

というのもEVやハイブリッド車の普及が進む一方、富裕層やエンスージアストの間では、高価格で手作りのエキゾチックカーに対する需要が急増しているからで、彼らはデジタル化が進む現代において、アナログな職人技と希少性を持つクルマに大金を投じることを厭わず、これがいまの「レストモッド」ブーム、そして新興スーパーカーや新興ハイパーカーメーカーが乱立する一つの背景であるとも考えられます。

こういった状況の中、スパイカーの強みである「航空機をモチーフにしたユニークなデザイン」と「手間暇かけた手作業」は、この「手作りの贅沢品」が求められる「これまでに訪れなかった」、絶好のタイミングともいえる現在の市場環境にて、主流ブランドにはない独自の価値を提供できる可能性を秘めているわけですね。

結論:三度目の正直へ、問われる戦略的パートナーシップ

スパイカーの復活は、単なる一企業の再建劇以上の意味を持ち、それは、個性と職人技を重んじるニッチなスーパーカー市場が、EVシフトの波の中でいかに生き残れるかという試金石です。

ヴィクター・R・ミュラー氏とジャスパー・デン・ドッパー氏が知的財産という(いままでのスパイカーが持つ)土台を獲得した今、残る最大の課題は、新しい時代に通用する製品(プロダクト)と、それを実現するための戦略的な外部パートナーを見つけ出すこと。

詳細な計画は「まもなく」発表されるとのことですが、果たしてスパイカーは、過去の教訓を活かし、この絶好の市場環境を味方につけ、今度こそ永続的な成功を収めることができるかどうかに注目が集まります。

スパイカーの歴史について「おさらい」

ここでざっとスパイカーのここまでの流れをおさらいしてみたいと思いますが、スパイカーは、もともと1880年に馬車製造として創業し、後に自動車のほか航空機も製造していた歴史あるメーカーで、しかし1925年に破産し一旦消滅しています。

その後復活したスパイカー・カーズ(Spyker Cars)は、1999年にこの伝統あるブランドの商標権を取得したヴィクター・R・ミュラー氏による高級スポーツカーメーカーで、主な特徴は以下の通りです。

  • 特徴的なエンブレムと哲学:
    • エンブレムには、かつて航空機製造を行っていたことにちなみ、プロペラの図柄が用いられる
    • ラテン語で「Nulla tenaci invia est via」(粘り強くやれば、必ず道は開ける)という会社の哲学が刻まれる
  • 車種:
    • デビューモデルは「C8スパイダー」で、手作りのアルミニウムボディにアウディ製のV8エンジンを搭載した贅沢なスーパーカー
    • その他、「C8 ラヴィオレット」、「C8 アイレロン」、「C8 プレリエイター」などのモデルが存在する
  • 技術と生産:
    • アルミニウム製スペースフレームシャシーの採用による軽量化・高剛性が構造的な特徴
    • 内装には航空機グレードのアルミニウムや最高級の革が使用され、一台一台が職人の手によって丁寧に仕上げられ、極めて少量の生産にこだわっている
  • 経営状況:
    • ブランド復活後、F1への参戦(スパイカーF1)などにも挑戦したものの、経営状況は厳しく、2014年には破産法の適用を申請し経営破綻
    • その後、何度か復活の噂や計画が報じられており、今回ようやく「再始動の目処」がたつことに

スパイカーは、大量生産の高級車とは一線を画す、芸術品のような価値を持つ独自性の高いスーパーカーブランドとして広く知られ、よってジャスパー・デン・ドッパー氏のような熱烈な支持者が存在するのも頷けるところ。

そして今回、「粘り強くやれば、必ず道は開ける)という会社の哲学が刻まれる」というモットーの通り、その根気によって未来への道を切り開くことに成功したということになりますね。

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参照:Spyker

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