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【複雑さとの闘い】ポルシェがまたまたエンジン関連特許出願。ターボの「余剰ブースト圧」を排気ガス冷却に使う驚異の新技術

ポルシェ

| ポルシェはここ最近、立て続けに「ターボ」「ハイブリッド」関連の特許を申請している |

そしてこれらが「密接に結びついている」場合も

  • 革新的な特許: ポルシェがターボチャージャーの「余剰なブースト圧」を、エンジンの排気ガスを冷却するという画期的な目的に転用する技術を出願
  • 最大の目的: 触媒コンバーター(キャタライザー)の過熱を防ぎ、寿命を延ばすこと。環境規制適合とコストダウンを両立
  • 仕組みの簡素化: ターボの排気バイパス弁である「ウェイストゲート」の役割を冷却システムが代替することで、ターボシステムの複雑さを一部軽減できる可能性
  • ジレンマ: 高い効果が期待される一方、既存のターボに「第3のホイール」を追加するなど、エンジンの設計がさらに複雑化するリスクも
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Image:Porsche

ポルシェ
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なぜ今、ポルシェは排気ガスを冷やしたいのか?

電動化時代にあっても、ポルシェは内燃機関(ガソリンエンジン)の効率と性能を高める努力を続けており、それはここ最近連続して出願されている特許からも明らかです。

特にそれらの特許は「ターボ」「ハイブリッド」に関連するものが多く、そしてその内容は「パフォーマンスの向上」という軸に沿っているように思われ、今回明らかになった特許もやはり「その探求心の最新の成果」。

今回は「ターボの排気(加給)」という根本的な問題に切り込んでおり、どうしても生じてしまうものは無駄なく使い切ろうという「ポルシェが重視する、効率性という問題」に対して真っ向から挑む内容となっています。

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解決したい問題:触媒コンバーターの短寿命化

今回の特許でポルシェが解決したい問題は「触媒コンバーターのロングライフ化」。

まず、排出ガス規制をクリアするため、触媒コンバーター(キャタライザー)は、以下の理由からエンジンの排気ポートの極めて近くに設置されます。

  1. 早期の暖機: 触媒が機能するためには、素早く動作温度に達する必要があり、これは排ガス規制のテストの大部分は、エンジン始動直後の暖機段階で行われるため
  2. 寿命の低下: 暖機には有利ではあるが、一度温度が上がると排ガスが触媒の内部温度より高い限り、触媒は加熱され続ける。排気ガス温度は1,000℃を超えることもあり、触媒が過熱(オーバーヒート)して劣化が加速し、寿命が短くなるという問題がある

現在の解決策は、劣化しても機能するように触媒を必要以上に大きくするという高コストな手法ですが、高価なレアメタルで構成される触媒の大型化は、コスト、重量、パッケージングのすべてにおいて不利という状況が存在するわけですね。

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ターボの余剰エネルギーを冷却力に変える仕組み

ポルシェの新しい発明は、この触媒の過熱問題に対し、既存のターボチャージャーの仕組みを利用して解決策を提示するもので・・・。

1. ターボチャージャーへの「第三の羽根」

通常のターボチャージャーは、排気ガスで回る「タービンホイール」と、吸気を行う「コンプレッサーホイール」で構成されますが、ポルシェはこれらに加え、今回出願された「冷却装置」を駆動するための第三のホイール、または類似のデバイスを追加することを構想しています。

2. 余剰ブースト圧を冷却に転用

そしてこのシステムの運用イメージは以下の通り。

  1. ターボ過給時: ターボが作動し、エンジンが必要とする以上の過給圧(ブースト圧)が発生
  2. ECUの指示: エンジン制御ユニット(ECU)は、過剰なブーストをエンジンに送る代わりに、第三のホイールを通じて冷却フローを開始するよう指示
  3. 熱交換器: 冷却装置からの空気は、排気システムに取り付けられた熱交換器を通過し、超高温の排気ガスを冷却※この冷却エアは、排気ガスよりはるかに低温
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この仕組みにより、冷却システムがターボのウェイストゲート(排気バイパス弁)の役割を一部担うことになり、ターボシステム自体が持つ複雑さを軽減するメリットも生まれる可能性がありますが、「すでにある構造に新しい役割をもたせる」「一つのパーツ(ユニット)に複数の役割をもたせる」「それらによってエンジン、パワートレーン、車両全体の効率性を向上させる」というポルシェらしい特許であるとも考えられます。※これまで、ウエストゲート経由で放出される「余剰の過給圧」はなんら活用の道がなかった

結論:ポルシェの未来のガソリンエンジン像

ポルシェがこの技術を実現すれば、単に「高性能」なエンジンを作るだけでなく、「高効率」で「長寿命」なエンジンを製造することが可能になります。

メリット効果
触媒の長寿命化過熱防止により触媒の劣化を遅らせる。
コスト・軽量化触媒を小型化できるため、高価なレアメタルの使用量や重量を削減。
ターボ保護ターボ周辺の温度も下がるため、ターボチャージャー自体の寿命も延びる。
環境性能触媒が常に最適な温度で機能するため、排出ガス浄化性能が向上。

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技術的な複雑さというリスク

しかしその一方、この特許は既存のターボシステムに複雑な機構と配管を追加することを意味しており、ポルシェはこれまでも電動ターボなどの革新的な技術を導入してきましたが、その度に「複雑化によるコストや整備性への影響」という課題が指摘されてきたのもまた事実。

この新しい技術が、ポルシェの次世代ガソリンエンジンに採用されるかどうかは、その性能と信頼性、そしてコストのバランスにかかっており、しかし電動化が進む時代だからこそ、ポルシェは内燃機関のポテンシャルを極限まで引き出し、その存続を可能にする道を模索し続けているのかもしれません。

そう考えるならば、「ガソリンエンジンを死に追いやるはずの電動化が、(ガソリンエンジンを絶滅から守るために研究開発が推し進められ)結果的にガソリンエンジンのさらなるポテンシャルを引き出し、電動化と組み合わせることで新しい可能性をもたらしている」と受け取ることもでき、「何がどう転ぶかわからない」のが現在の状況である、というわけですね。

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参照:CARBUZZ

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