
Image:Xiaomi
| 中国の裁判所は「消費者寄り」の判断を行うことが多い |
この影響は各ブランドのディーラーの方針にまで及びそうだ
- 初の司法判断: シャオミEVの販売契約に関する中国初の裁判であり、裁判所はシャオミ関連会社に10,000元(約20万円)の倍額返金を命じる判決を下した
- 争点ー納車前の請求: 顧客が納車・検車を遅らせたにもかかわらず、シャオミ側が残金全額の7日以内の支払いを強要し、拒否した顧客の注文をキャンセルし手付金を没収したことが問題に
- 判決の根拠: 裁判所は、この「検車前の全額支払義務」を「不公正かつ不合理な定型約款」と認定し、顧客の品質検査権を著しく制限するものであると判断
- 市場への影響: 中古車価格の下落により、低額の手付金を支払った顧客のキャンセルが続出しており、今回の判決はシャオミの販売戦略に大きな影響を与える可能性がある
納車・検車前に「全額支払え」は通用しない
この訴訟は中国海南省海口市の人民法院で審理され、報道によれば原告の李氏(仮名)は2024年7月にシャオミの高性能EV「SU7 Max」(価格318,900元)に対し、5,000元(約11万円)の手付金を支払って予約。
争いの発端は、李氏が個人的な事情で納車を遅らせたいと申し出たことで、シャオミ側は当初、注文の有効期間を360日間とする形で製造スケジュールの再調整に同意するものの、しかし、2024年12月に入ると状況が一変します。

納車前の残金強要という「理不尽」
12月にはシャオミのスタッフが李氏に対し「7日以内に残金313,900元を全額支払わなければ、注文はキャンセルされ、手付金は没収される」と通告したとされ、李氏は、製造遅延に合意したばかりであり、車両の検車・引き渡し前になぜ全額支払う必要があるのかと反論。
しかしシャオミ側は契約条項を盾に取って”没収”を強行し、最終的に李氏の注文は一方的にキャンセルされたのだそう。
今回の訴訟において裁判所が注目したのは以下の二点です。
- 公式見解との矛盾: シャオミは2024年5月の公式Q&Aで、「シャオミは車両検査後の最終残金支払いをサポートしている」と公に表明
- 不当な契約条項: 裁判所は、「検車と納車前に全額支払いを義務付け、それを履行しない場合の罰則として手付金没収を課す」条項を「不公正かつ不合理な定型約款」であると判断
裁判所が示した「消費者の権利」の重み
海口市美蘭区人民法院は、シャオミによる納車前の全額支払いの要求は以下の重大な問題を引き起こすと結論付け・・・。
1. 品質検査権の侵害
車両の品質を確認するための「検査権」は、消費者にとって最も基本的な権利の一つであり、納車・検車前に全額支払いを強要することは、この消費者の基本的な権利を実質的に制限する行為にあたる
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2. 信頼と誠実の原則違反
シャオミは顧客の遅延要求に一度同意し、製造スケジュールを再調整しており、その合意にもかかわらず顧客の「製造を再開せよ」という通知がない状態で車両を製造し、残金を強要したのは、シャオミが公に表明していた原則と、信義則(誠実に行動する義務)に反する
その結果として裁判所は、該当する契約条項を無効と宣言し、シャオミ関連会社に対して李氏が支払った手付金5,000元を「倍額」の10,000元にして返還するよう命じた、というのが今回の流れです。
中古車価格の下落が招いた「キャンセル問題」
この裁判の背景には、中国EV市場の特殊な状況があるといい、それは「中古車市場の値崩れ」。
@Xiaomi Technology have done it again 🙌💛 #MWC25 pic.twitter.com/Y88cwUOv7W
— MWC (@MWCHub) March 3, 2025
低額手付金戦略のリスク
シャオミは、SU7の手付金を5,000元(SU7 Ultraは20,000元)と比較的小さな金額に設定しており、これは当初、大量の予約注文を集め、「高い需要と長い待ち時間」という印象を市場に与えることに成功したわけですね(これはシャオミだけではなく、ほとんどの中国の自動車メーカーが採用する手法である)。
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しかし、中国国内の中古車市場では、新車の登場や価格競争の激化により、SU7などの中古価格が新車価格を大きく下回る事態が発生しています。
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その結果、予約した多くの顧客が「手付金を放棄してでも、市場価格が下がった別のクルマや中古車を購入した方が得」と判断し、注文をキャンセルする動きが広がったそうですが、シャオミはこの大量キャンセルによる潜在的な損失を防ぐため、顧客に残金の早期支払いを要求し、見込み客を確定させようとしていた可能性が指摘され。今回の裁判は、このような市場の変動に伴う販売側のリスクを、一方的に消費者に押し付ける行為に対し、司法が初めて「ノー」を突きつけた形となっています。
What's everyone capturing with #Xiaomi15Ultra at Xiaomi Booth? 📸#MWC25 pic.twitter.com/IZ2IflRznt
— Xiaomi (@Xiaomi) March 4, 2025
結論:シャオミは販売戦略の見直しを迫られる
今回の判決は、シャオミが構築した「(少額の)手付金による大量予約モデル」とその後の契約運用に対し、厳格な規制がかかることを意味しており、「納車前に全額支払わせる」という不当な契約は無効とされたことで、シャオミは今後、契約条項やディーラーでの運用方法を大幅に見直す必要に迫られのは「必須」。
この裁判は、テクノロジー業界の大手が自動車市場に参入した際に、従来の商慣習や消費者保護法規を軽視できないという重要な警告を発するものと言えそうで、少し前の「勝手に出力を下げる」という一方的な行動にも通じるシャオミの甘さが露呈した一件であるとも捉えられています。
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参照:CarNewsChina













