
| テメラリオはもともと「後輪駆動」に対応した設計を持っている |
そして価格帯としても「RWD」は必要である
- 純粋主義者の願い: ランボルギーニはAWD中心のメーカーとして知られるが、社内外には純粋なRWD(後輪駆動)モデルを望む声が根強く残る
- 次世代ハイブリッド: テメラリオは10,000rpmを誇るV8ツインターボ+フロントモーターを用いたAWD駆動のみの構成となっており、スペックや価格的に購買層を「狭めて」いる
- RWDモードの可能性: 開発責任者は「RWD専用のテメラリオSTO」のような派生モデルの可能性を否定せず、議論が続いていることを示唆
- 電動AWDの功罪: 電動AWDは「高い安心感」と「トルクベクタリング」という利点をもたらすが、一部の顧客は「純粋ではない」と感じている
驚異のV8ハイブリッド「テメラリオ」とRWDの行方
ランボルギーニが送り出した次世代のV8ハイブリッドスーパーカー「テメラリオ(Temerario)」は突出した技術的スペックを持っており、最高10,000回転まで回るV8ツインターボエンジンにプラグインハイブリッドシステムを組み合わせたその性能は文字通り「驚異的」。
| 項目 | ランボルギーニ テメラリオ (ベース) |
| エンジン | 4.0リッター V8ツインターボ プラグインハイブリッド |
| トランスミッション | 8速 DCT(デュアルクラッチ) |
| 駆動方式 | 全輪駆動 (AWD) |
| 最高出力 | 920馬力 |
| 最大トルク | 730 Nm |
| 0-100km/h | 2.7秒未満 |
そして上述の通り、現在のテメラリオは前輪をエレクトリックモーターにて駆動する4WD。
しかしランボルギーニは「ガヤルド」「ウラカン」において後輪駆動モデルを投入してきたという歴史があり、当然ながらテメラリオにおいても、その発表時から「後輪駆動モデル」が期待されているというのが現状です。
ランボルギーニ開発責任者の「本音」とAWDの理由
そしてテメラリオのラインナップ責任者であるパオロ・ラケッティ氏が、この状況について米メディア『The Drive』に語ったのが以下の通り。
1. 「AWDカンパニー」としての矜持
ランボルギーニは、1986年のLM002、そして初のAWDスポーツカーである1993年のディアブロVT以来、「常に四輪駆動メーカーであり続けてきた」とラケッティ氏は語ります。
テメラリオの現行モデルがRWDモードを提供しない(AWDを選択した)のには、明確な理由があり・・・。
- 介入の違和感防止: スポーツモードであってもフロントタイヤにわずかなトルクを配分しているのは、「完全にトルクを抜いた状態で急に介入があった際に、ドライバーに違和感を与えないため」。
- 遊び心(Playful)の演出: 電動フロントアクスル(e-Axle)によって、高度なトルクベクタリング(左右のタイヤへの駆動力配分制御)が可能になり、クルマをより「遊び心のあるもの」にできるから
加えて、この電動AWDシステムは、ドライバーに「非常に高い安心感」を提供し、かつてのような複雑なセンターデフシステムよりもパッケージングが容易であるという利点がについても触れられています(前輪を独立したエレクトリックモーターにて駆動するので、ガヤルドやウラカンのように、車体後部に搭載したエンジンからフロントまで駆動力を分配するシステムを要しない)。
2. 純粋主義者たちの声
しかし、ラケッティ氏は「AWDはドライビング体験をRWDと比較して純粋さを欠く」と感じる顧客が存在することも認めていて、先代モデルであるウラカンでは、サーキット志向のAWDモデル「ペルフォルマンテ」と、純粋なRWDモデル「STO」が併売されていたことにも言及。
しかしテメラリオの電動AWDは、トルクを巧みに管理することで、以前のAWDモデル(ペルフォルマンテなど)で感じられた「クルマが勝手に運転してくれているように感じる」という問題を解消し、STOのような「純粋さ」をドライバーに提供できるとラケッティ氏は述べており、つまり現在の「AWD」テメラリオは「RWDの性質をも兼ねている」ということになりそうですね。
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RWD仕様「テメラリオSTO」実現の可能性
「テメラリオ」が電動化され、よりRWD的な性質を持つに至ったとしても、ランボルギーニ社内には「いくつかの流派(Schools of thought)」が存在し続けているといい・・・。
- RWD支持派: 純粋なRWDのみのテメラリオSTO(トラック走行に特化したモデル)を強く望む声。絶対的な「タイム」はAWDには負けるかもしれないが、軽量性とシンプルさに勝り、操る楽しみがある
- AWD進化派: 現在の電動AWDシステムをさらに進化させたトラック志向のシステムを望む声。現代では「ハイパワーなガソリンエンジン(後輪駆動)+エレクトリックモーターによる前輪駆動」は勝利の方程式と言っても良く、これをさらに追求し究極の動力性能を実現
つまりランボルギーニの中でも「ファン・トゥ・ドライブ派」と「絶対的パフォーマンス追求派」とに別れているのだとも考えられますが、ラケッティ氏は、RWD専用モデルの可能性について、「そのアイデアは除外されていない」と明確に述べているのも印象的。
さらにランボルギーニは、「クイックなモデル」「スポーティなモデル」「よりトラックに焦点を当てたバージョン」といった、モデルライフサイクルを通じた派生モデルの展開は”つねに予測可能”であるとしており、今後、ハイブリッドシステムを維持しつつもRWDモデルが登場する可能性も十分に考えられます。
そして「テメラリオのRWDモデル」にリアリティを持たせているのは「テメラリオGT3」の存在で、これは実際に(レギュレーションに従う形で)フロントのエレクトリックモーターとハイブリッドシステムを取り外した「RWD」。
環境規制を考慮すると、テメラリオRWDが実現するとしてもギアボックスにエレクトリックモーターを残すこととなりそうですが、すでに「後輪駆動のテメラリオが存在する」というのは動かしようのない事実です。
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なお、もうひとつテメラリオRWDが「現実的に望まれる」のはその”価格帯”で、テメラリオの価格は現在約4200万円程度なので、つまるところ「相当に高価なクルマ」。
この価格だと当然ながら購入できる層も限定され、かつランボルギーニの主力市場である北米にて「トランプ関税」が導入されていることを考慮するならば、RWD化した”求めやすい価格の”テメラリオの必要性が自ずと導き出され、この観点からも(ぼくは)テメラリオのRWDバージョンが登場するであろう、と考えているわけですね。
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結論:電動化時代に残る「運転の喜び」
ランボルギーニのこの内部議論は、現代のスーパーカーが直面する最大の課題を浮き彫りにしており、それは「速さ」だけでなく「運転の楽しさ、そして純粋さ」をどう両立させるかということ(少し前であれば、絶対的な速さこそが正義であったが、風向きがやや変わっている)。
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電動化によるAWDはパフォーマンスと安心感を向上させ、しかしクルマをコントロールする「スリル」を求めるエンスージアストにとっては「純粋なRWDは唯一無二の存在」です。
テメラリオが、そのハイブリッドの心臓を保ちながら、純粋なドライビングの喜びを提供するRWDモデルを本当に送り出すならば、それは電動化時代におけるランボルギーニの「最後の賭け」、そして「ファンへの最大の贈り物」となるのかもしれません。
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参照:The Drive



















