
| チェリー、BYD上陸で「100万円単位の」価格破壊が始まる |
カナダ政府(マーク・カーニー首相)と中国の間で締結された新たな貿易協定により、中国製電気自動車(EV)への風向きが激変しています。
2024年に導入された100%の追加関税が大幅に引き下げられるこの動きは、北米のEV市場全体を揺るがす大きな転換点となるかもしれません。
【この記事の3点まとめ】
- 関税が100%から6.1%へ激減: 2026年の新協定により、年間4万9,000台限定で低関税輸入が認められる
- カナダ国民の6割超が支持: 「安くて高性能なEV」を求める声が強く、特にケベック州では72%が賛成
- 「黒船」BYD・チェリーが続々: テスラをも凌ぐ価格競争力を持つブランドが北米市場への橋頭堡としてカナダへ進出
カナダ市場に激震。「安価な中国製EV」待望論の背景
カナダ政府は2026年1月に中国製EVに対する関税を「従来の100%から、最恵国待遇である6.1%へと引き下げる」という暫定貿易協定を発表していますが、この決定は北米市場を安価な中国車から守ろうとする米国の動きに逆行するという性質を持っており、そのため大きな波紋を呼んでいるというのが実情です。
ただしカナダの場合は「守るべき国内自動車製造業(つまりカナダの自動車メーカー)」が米国とは異なって存在しないため、米国と真逆の動きにも納得ではあるのですが、この(関税引き下げの)背景には「EVの価格高騰」という深刻な問題があるもよう。
カナダ国内においてEV補助金が尽き、(そのためにEVの価格が上がってしまい)販売が鈍化する中、カナダの販売業者や消費者は「手の届く価格のEV」を切望しており、最新の調査では約62%の国民がこの関税引き下げを支持している、という数字も出ているようですね。
2026年、カナダへ上陸する主要な「中国勢」スペック比較
今回の協定では年間4万9,000台までの輸入枠が設定されており、特に注目されているのは世界最大手のBYDや、北米進出を虎視眈々と狙うチェリー(Chery)です。
| メーカー | 代表車種例 | 予測価格(CAD) | 特徴・スペック |
| BYD | シーガル / Atto 3 | $30,000前後 | 世界最大のEVメーカー。独自の「ブレードバッテリー」で高い安全性と低価格を両立。 |
| Chery | Omoda 5 EV | $35,000以下 | カナダ本社設立を計画中。スタイリッシュなデザインと最新のADAS(運転支援)を搭載。 |
| Geely | EX30 (Volvo) | $35,000〜 | ボルボやポルスターの親会社。欧州基準の品質と洗練された内装が強み。 |
| Tesla | モデル3 / Y | (既存価格) | ギガファクトリー上海製モデルの輸入を継続。関税引き下げにより価格改定の可能性も。 |
なぜ中国製EVは「安い」のか?
中国メーカー(とくにBYD)は、バッテリーの原材料確保から製造、組み立てまでを自国内で完結させる垂直統合型のサプライチェーンを持っており、今回の協定では輸入枠の半数を3万5,000カナダドル(約400万円)以下の安価な車両に割り当てることが期待されており、つまりテスラのクルマは(中国製であっても)この枠を使用できない可能性も。
そしてこれが実現すれば、既存の自動車メーカー販売網にとって強力な脅威となることが予想され、「自国の自動車メーカーが存在しない」といえど、他の国の自動車メーカーの製造工場、そしてそれらのクルマを販売するディーラーが打撃を受けることも指摘されており、なんらかの混乱が生じることはまず間違いないであろうと見られています。
「スパイ車」か「救世主」か?懸念されるリスク
一方で、この歴史的な決定には慎重な意見も根強く残っており・・・。
- データセキュリティへの不安: オンタリオ州のダグ・フォード首相などは、これらの車両が「中国のサブスクリプション型スパイカー」として利用される懸念を表明(カナダの人々、カナダの情報を収集し中国へと送る役割を果たす)
- 米国の報復: 米トランプ政権(2026年時点)は、カナダが中国の「荷降ろし港」になることを警戒しており、カナダ製品すべてに100%の関税を課すと警告
- 品質と耐久性: 長い冬を抱えるカナダの過酷な環境下で、中国製バッテリーがどこまで耐えられるかという疑問も消費者の間で根強くある
結論:2026年は北米EV市場の「再定義」の年に
カナダが下した「6.1%」という決断は、農産物(キャノーラ種子など)の関税緩和という経済的メリットと引き換えに、自国の自動車市場を世界一の競争に晒すという一種の”賭け”。
今後5年間で輸入枠は7万台まで拡大される予定だそうですが、もしBYDやチェリーがカナダで成功を収めれば、米国メーカーも追随して価格を下げざるを得なくなり、結果として「EVを誰もが買える時代」が早まる可能性も指摘されています。
そしてこれらの懸念が事実になったり、品質が低い中国車が大量になだれ込むことで「修理できない」「保険が高くなる」といったデメリットが生じたりするのか、あるいは「全く問題なく中国車が機能して」中国車がさらに勢力を拡大し既存メーカーのクルマを駆逐するのか(後者の場合、既存自動車メーカーに対してカナダの自動車市場の門が”閉ざされ”、二度と開くことはないだろう)。
とにかく今回の「関税引き下げ」がどう転ぶのかを予測することは難しく、実際に中国車がなだれ込んだ「1年後」くらいでないとその判断が成功であったのかどうかを知ることはできないのかもしれません。
-
-
もはや中国車は「安かろう、悪かろう」ではない?豪州安全性評価にてBYDシールとドルフィンが5つ星を獲得、とくにドルフィンは2023年の新車では最高得点
| 一部の中国自動車メーカーは国際的に戦えるだけのデザインや品質、そして安全性を持つに至っている | そしてその価格は「他の追随を許さぬ安さ」を持っており、死角を探すことが難しい さて、現在BYDは「 ...
続きを見る
関連知識:なぜケベック州で支持が高いのか?
ケベック州は北米でも有数の「水力発電」が盛んな地域であり、電気代が安いためEVの所有メリットが他州より大きくなっています。
さらには州独自の強力なEV普及策を推進してきた歴史があり、ブランドの国籍よりも「コストパフォーマンス」を重視する実利的な気質が中国製EVへの高い支持率に繋がっているのだと考えられているようですね。
合わせて読みたい、関連投稿
-
-
中国とEUがEV関税回避で合意。「約束価格」導入で貿易紛争は解決へ。これで中国側は「決められた額」以下で車両を販売することが不可能に
| EUと中国は「対立」から「対話」による解決へ | この記事の要約 新ルールの導入: 関税の代わりにメーカーが一定の販売価格を保証する「約束価格」を適用 関税の代替: 条件を満たした企業は、最大35 ...
続きを見る
-
-
中国製EVが「英国では保険に入れない」事態が急増。BYD含め「パーツが供給されていない」「修理のための情報が供給されていない」ことが問題視される
| 中国製EVには思わぬ落とし穴があったようだ | 中国製EVはアフターサービスに注力する必要があるものの、ここは中国企業が軽視するところでもある さて、現在欧州では中国製EVの進出が問題視されていま ...
続きを見る
-
-
テスラを超えた?中国製EV「BYD」が世界を席巻する真の理由、そして実際にはテスラよりもほかメーカーのEVを侵食するであろう理由
| 世界EV市場の常識を覆す。テスラを猛追する中国EVの破壊力とは? | もはや世界中で「BYDは無視できない存在」に EV市場の競争は激化の一途をたどっており、かつてEVの代名詞だったテスラ(Tes ...
続きを見る
参照:CARSCOOPS

















