
Image:BYD
| 中国勢が馬力競争に参戦し上位を独占したことで「欧州勢は自分たちにしかできないこと」を追求するという自覚を持つように |
記事の要約:パワーの飽和と「軽さ」への回帰
- 馬力のインフレ: 今や中国のファミリー向けSUVが1,000馬力を超える「馬力過剰」の時代となり、馬力の価値が低下
- 物理の壁: 中国の3000馬力EVが登場する一方、重すぎる車体(2.5トン超)がブレーキやタイヤへの負担、操作性の悪化を招いている
- 新潮流「FEV」: ケータハムの「Project V」や新興Longbowが提唱する、1000kg(1トン)以下の「フェザーライトEV(超軽量EV)」が注目
- 市場の冷え込み: リマックやケーニグセグのCEOが「電動ハイパーカーへの関心は極めて低い」と明言
なぜ「3000馬力」は無意味になったのか?
2026年現在、自動車業界は「ピーク・ホースパワー(馬力の頂点)」に達したとも考えられており、というのもBYDによるヤンワン U9 エクストリームが3000馬力という驚愕の数値を叩き出す一方、ある深刻な問題が浮き彫りになってるから。
それはひとえに「重量」で、強大なパワーを支えるためには、巨大なバッテリー、強力な冷却システム、そして巨大なブレーキが必要となり、結果としてU9の車重は約2,476kgという大型ピックアップトラック並みの重さとなっています。

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「どれだけパワーがあっても、2.5トンの物体は物理法則から逃れられない」——。この事実に、多くの自動車愛好家やメーカーが気づき始めているのが現状というわけですが、中国の自動車メーカーがパワーウォーズに参戦し上位を占めてしまった段階で多くの人々は「馬力に対する情熱を失ってしまった」のかもしれません。
つまるところ、現代における「馬力」とは、いともたやすく(中国の新興自動車メーカーであっても)稼ぎ出すことができるもので、つまりそこに大きな価値はない、と皆が気づいたのだとも考えられます。
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次世代の指標:FEV(フェザーライトEV)のスペック
こうした「重厚長大」なパワー競争へのアンチテーゼとして(EV業界で)登場したのがFEV(Featherlight EV)という概念で・・・。
軽量EVと重量級ハイパーカーの比較
| 車種 | 馬力 | 車重(目標値) | 特徴 |
| Yangwang U9 (BYD) | 3,000 hp | 約2,476 kg | パワー至上主義。0-100km/hは速いが重い。 |
| Rimac Nevera | 1,914 hp | 約2,313 kg | 電動ハイパーカーの先駆者だが、需要は鈍化。 |
| Caterham Project V | 268 hp | 約1,190 kg | マツダ・ロードスター並みの軽さを目指すEV。 |
| Longbow Roadster | 未発表 | 約1,000 kg以下 | 元テスラ / ルシード幹部が挑む「1トン切り」EV。 |
車体の軽量化は「非常に」難しく、そしてこれは一朝一夕に達成できるものではないため、「実績のある」既存自動車メーカー、そしてそれらにて実績を積んだ人物でないと「適切な軽量化」ができず、よって「中国勢には難しいであろう、新たなるチャレンジ、そして生き残る道」として注目されているというわけですね。

Image:Caterham
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物理法則を味方につける:ロングボウ(Longbow)の挑戦
現在「軽量EV」としての方向性を明確に打ち出しているのは元テスラやルシード、マクラーレンの幹部たちが集結した英国の新興メーカー「Longbow(ロングボウ)」。
このロングボウでは、あえてパワーを「抑制」することで勝機を見出しています。
「600馬力のモーターを積めば、冷却も剛性も、すべてをスケールアップしなければならない。しかし、パワーを下げればすべてが軽くなる。バッテリーも小さくて済む。『これで十分だ』と言う勇気が必要なのです」
共同創業者 ダニエル・デイヴィ
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彼らが目指すのは、電子制御という名の「手品」で重さを誤魔化すのではなく、軽さによって止まり、曲がる、純粋なドライビングプレジャー。
軽量であれば制動距離は重量級EVより40%も短縮され、かつタイヤの摩耗も劇的に抑えられ、EV時代であるからこそ「軽さ」が重要だというわけですね。
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結論:これからの「速さ」は数字では測れない
そしてリマックの創業者メイト・リマック氏は、「購入者はもはや電動ハイパーカーに興味を持っていない」と指摘してており、「数値上のスペック競争に、ユーザーが飽き始めている」とも。
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【参考】
- FEV (Featherlight EV)とは?:Longbowが提唱する新しいセグメント。単なるEVではなく、車重1,000kg以下を目指す超軽量電気自動車を指している
- 市場のパラダイムシフト:2020年代前半までは「0-100km/h加速」がEVの王道指標であったものの、2026年以降は「パワーウェイトレシオ」ならぬ「絶対的な軽さ」が、真のスポーツ性能を測るモノサシになろうとしている
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ケーニグセグCEOがEVハイパーカーに懐疑的姿勢を表明。「実際のところ、市場の需要は極めて低い」。そう語る理由とは?
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参照:Motor1











