
Image:Longbow
| ただし現時点では実際に発売できるかどうかは不明である |
「技術」的には申し分ないのかもしれないが、「マーケティング」的には疑問が残る
さて、「テスラの卒業生」たちが英国にて新興スーパーカーメーカー「ロングボウ」を立ち上げ、今回その第一弾となる「スピードスターとロードスター」を発表することに。
これらのクルマ(もちろんEV)における最大の特徴は「軽量性」だとされ、ロングボウのモットーは「Celeritas Levitas」(ラテン語で「軽さの速度」)。
発行された公式プレスリリースには自信満々な言葉が並び、ロングボウはこれらスピードスターとロードスターを「ロータス・エリーゼやジャガーEタイプの精神を受け継ぐ」とすら表現しており、FEV(フェザーウェイト・エレクトリック・ビークル)という全く新しい車両セグメントを作り出したとさえ主張しています。
現段階では「出力」「パワートレイン」の詳細は非公開
今回発表された「スピードスターとロードスター」の相違は単にボディ形状のみであり、「スピードスター」はルーフやフロントガラスを有しておらず、このままだと「登録できない国」が出てきそう。
なお、今回発表されたのは航続距離や加速性能、そして重量のみにとどまっていて、「何馬力なのか」「そもそもエレクトリックモーターはいくつ積まれているのか」はまったくわからず、このあたりはちょっとした「胡散臭さ」を感じないわけではありません。
バリエーション | スピードスター | ロードスター |
重量 | 894kg | 994kg |
0-96km/h加速 | 3.5秒 | 3.6秒 |
航続距離 (WLTP) | 442km | 450マイル |
基本価格 | 約11万ドル (約1625万円) | 約8万4000ドル(約1240万円) |
これらスペックを見るに、「とにかく軽い」ということがわかりますが、近年の新興スーパーカーやハイパーカーに比較するとまだ価格が低く抑えられた部類であり、その理由は「車体構造にカーボンファイバーではなくアルミニウムを使用しているから」。
Image:Longbow
軽量に収めたおかげでバッテリーパックの容量も少なく済み、さらにロングボウはバッテリーパックを(おそらく重量配分最適化のため)分割し搭載しており、これによって「俊敏さ」「手に生きているように感じる運転体験」を実現し、「スピードスター」「ロードスター」を世界初の本格的な全電動スポーツカーとして世に送り出すことができると自信を見せています。
なお、このロングボウ・スピードスターとロードスターは英国にてハンドメイドにより組み上げられ、それぞれ150台づつが製造されるといい、そして英国を拠点として選んだのはこれらのクルマを作ることができるファクトリーが他になかったからだと考えられ、今でも英国は「軽量スポーツカー」の生産において一定のアドバンテージを持っているのだとも考えられます。
Image:Longbow
「スポーツカーを手作りできる場所は世界でもほんのわずかです。ここ英国では、英国ならではのエンジニアリングと職人技を組み合わせ、商業的および競争的に大きな成功を収めた軽量スポーツカーを開発してきた長い歴史があります。ロングボウは、現代の最高のドライバーズカーを作成するために、これらの同じアイデアを活用した次の章でもあるのです。」
マーク・タプスコット(ロングボウ・モーターズ共同創設者)
なお、ロングボウの創業者は上述の通り「テスラ卒業生」が中心となっていますが、その中心人物はダニエル・デイヴィー、マーク・タプスコット、ジェニー・ケイスーの3名。
ダニエル・デイヴィーはテスラとルシードにてキャリアを積み、マーク・タプスコットもまたテスラ、ルシードを経てBYDへ。
Image:Longbow
そしてジェニー・ケイスーは電動ボートメーカー「Xショア」のCEOを努めた人物だというので、いずれもその経歴としては申し分ないものと思われます。
ただし、現代において「新興スーパーカーメーカーのクルマが市場に受け入れられるかどうか」は”スペックではなく、”そのターゲティングやマーケティング”にかかっているのだとも考えられ、今後のロングボウの活動には注目したいところでもありますね。
「eモビリティ革命の中で、私たちは重要な何かを失いました。多くの現代の”スポーツカー”は1,500kgもの重量に達し、BEVはほぼその2倍に達する可能性があります。よりドライバー志向のフェザーウェイト電動スポーツカー、つまり運転とそれが連れて行ってくれる場所を愛する人々にとって、手の届きやすくアクセスしやすいクルマが必要です。それが、私たちがロングボウを立ち上げた理由です。私たちの最初の2台の車、スピードスターとロードスターは、現代のドライバーズカーが持つべきすべてのもの、つまり機敏でバランスの取れた、電動で爽快なものを体現しています。私たちはアイコンである軽量英国スポーツカーを復活させています。」
ダニエル・デイヴィー(ロングボウ・モーターズ共同創設者)
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参照:Longbow