
Image:Astonmartin
| その構造・設計上、「どうしても140km/h出てしまう」ようだ |
1,000馬力超えの怪物が隠し持つ「封印された野生」
アストンマーティンの次世代ハイブリッド・ハイパーカー「ヴァルハラ(Valhalla)」。
1,064馬力を叩き出すV8ツインターボと3基のエレクトリックモーターの組み合わせによって圧倒的なパフォーマンスを生み出しますが、しかし今回話題になっているのは、その圧倒的な加速力でも美しいボディデザインでもなく、「バック(後退)の速度がとんでもなく速かった」ということ。
理論上、ヴァルハラは時速140kmでバック走行ができる潜在能力を持っていることが明らかになり、しかし、現実に市販されるモデルには非常に「おとなしい」リミッターが設定されています。
なぜエンジニアは、この驚異的な機能を封印してしまったのか、その真実に迫ってみたいと思います。

Image:Astonmartin
記事のポイント:ヴァルハラの「バック走行」の真実
- 驚異の潜在能力: フロントモーターの性能上、バックでも時速140kmまで加速可能だった
- 現実は時速30km: 安全性を考慮し、リミッターによって時速30kmに制限
- モーター駆動の秘密: バック時にはエンジンや8速DCTを使用せず、エレクトリックモーターのみを使用
- ライバルの存在: リマック「ネヴェーラ」は逆走で時速275kmを記録し、ギネスを保持
詳細:なぜ「時速140kmのバック」が可能だったのか?
ヴァルハラの駆動システムは非常にユニークで、後退する際にはV8エンジンやトランスミッションは一切使用せず、その代わりに前輪を駆動する電気モーターを逆回転させることでバックするのだそう(トランスミッションに内蔵されたエレクトリックモーターではなく、フロントモーターを使用するというのも珍しい)。
そしてこのエレクトリックモーターは「前進時には時速140kmまでアシストする能力がある」といい、つまりソフトウェアによる制限がなければ、リバースに入れた状態でアクセルを踏み込むことで(エレクトリックモーターが逆回転するだけなので)そのまま高速道路を巡航できるほどの速度が出る計算であると説明されています。

Image:Astonmartin
しかし、オーストラリアのメディア「Drive」の報道によると、アストンマーティンのエンジニアは最終的にリミッターを設置することを決定し、バックの最高速度が時速30kmに設定されることに。
「歩くよりは早いが、走るよりは遅い」という、ハイパーカーにしては非常に控えめな数字ではあるものの、後退中に「誤って」アクセルを思いっきり踏み込んでしまい、140km/h「出てしまう」よりは「ユーザーフレンドリーな」設計です。
スペック概要:アストンマーティン ヴァルハラ (2026)
バックの速度は制限されたものの、前進時のパフォーマンスは文字通り「世界最高峰」で、納車が進むにつれ、ユーザーが様々な「驚きのパフォーマンス」をYouTubeへとアップしてくれるものと思われます。
ヴァルハラ 主要スペック表
| 項目 | スペック |
| パワートレイン | 4.0L V8ツインターボ + 3モーター (PHEV) |
| システム合計出力 | 1,064 hp |
| 0-100km/h加速 | 2.5秒 |
| 最高速度 | 350km/h (217mph) |
| 後退時最高速度 | 30km/h (リミッター作動) |
| トランスミッション | 8速デュアルクラッチ (後退ギアなし) |

Image:Astonmartin
比較:バック走行の速度で世界を驚かせた「リマック・ネヴェラ」
「バックの速度制限なんかどうでもいい」と思うかもしれませんが、実はこの分野で「本気」を出したメーカーがあり、それが、EVハイパーカーの元祖であるリマック(Rimac)。
リマックが世に送り出すハイパーカー「ネヴェーラ(Nevera)」は、2023年にバック走行で時速275.74kmを記録したことがあり、これは当時のギネス世界記録となっています(今も破られていない)。
リマックのチーフエンジニア、マティヤ・レニッチ氏はこう振り返り・・・。
「開発中に『ネヴェラなら世界一速いバックができるのでは?』と笑い話が出たのが始まりでした。空力も冷却もバック走行用には設計されていませんでしたが、シミュレーションの結果はいける。やってみたら驚くほど安定していたんです。」

Image:Rimac
アストンマーティンがヴァルハラに制限を設けたのは、おそらく空力特性やステアリングの安定性が超高速バック走行を想定していないためで(リマックの場合、おそらくは4輪がバック時に駆動するものと思われるが、ヴァルハラでは2輪のみである)1億円を優に超えるクルマでの「バック走行中のスピン」は、さすがに笑い事では済まないからなのかもしれませんね。
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結論:安全性とロマンの境界線
「時速140kmでバックする姿を見たかった」というクルマ好きのロマンは、残念ながら「安全」という現実的な壁に阻まれてしまいましたが、これは裏を返せば、ヴァルハラのエレクトリックモーターがいかに強力であるかの証明なのかもしれません。
バックギアを物理的に廃止し、エレクトリックモーターに後退を任せることで軽量化と効率化を図るという手法はマクラーレン・アルトゥーラ、フェラーリ SF90ストラダーレや296GTB / 296GTS、849テスタロッサなどでも見られる最新のトレンドです。
たとえヴァルハラのバックが時速30kmに制限されていても、前進した瞬間に味わえる2.5秒の0-100km/h加速が”その不満”を瞬時に消し去ってくれることは間違いなさそうですね。
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参照:Drive











