
| アストンマーティンの「赤字」はもはや”伝統”である |
第3四半期の販売台数が約13%減少
アストンマーティンはおそらく「既存自動車ブランド」の中ではもっとも多くの倒産回数を経験したブランドであると考えられますが、その理由は「車両の製造にコストがかかりすぎる割に、その費用を回収するだけの販売台数を確保できないから」だとされ、そしてこれは同社の「伝統」であるとも捉えられています。
ただ、万年赤字体質といえど、倒産の都度「救世主」があらわれるのも同社の歴史における一つの傾向であり、これは「いかに赤字体質であったとしても、アストンマーティンが魅力的な存在である」ということを意味しているわけですね。
アストンマーティンは業績を下方修正
アストンマーティンは2025年第3四半期の販売台数の詳細な内訳をまだ発表していませんが、今回財務見通しの修正という形でその一部が明らかに。
その内容は「予想通り」明るいものではなく、同社は販売が落ち込んでいることを認め、会計年度末には昨年度の150億円を大きく超える損失を計上する見込みであること、第3四半期の総販売台数は1,430台にとどまり、前年同期の1,641台と比較して約13%の減少となったことを報告しています。
- 通期見通しの下方修正: 同社は、今年の総販売台数が「中高一桁台のパーセンテージ(mid-high single digit percentage)」、すなわち5%から10%の間で減少すると予測しています。
- 販売不振の背景: 主な原因として、中国と北米での販売減少を挙げており、特に北米市場については、米国の関税が影響していると指摘しています。※トランプ関税は「一過性である」と認識できるが、中国市場での落ち込みは深刻である
「ヴァルハラ」の納車は「わずかな遅延」
この厳しい見通しに加えて、ハイパーカー「Valhalla (ヴァルハラ)」の納車が「わずかに遅れる」ことも明かされており、アストンマーティンはヴァルハラの納車を年末までに開始するという以前の目標は維持すると述べているものの、この遅延により、年内に納車できる台数が当初の希望より少ない150台になる見込みだとされ、この台数の減少はもちろん年間の売上高に影響を与えることに。
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1億5,000万ドルの巨額損失を見込む
アストンマーティンが予測する損失額は1億5000万ドル(約230億円)にも達し、これはかなり深刻な額ではあるものの、アストンマーティンは来年については”楽観的”。
というのもヴァルハラが成功すると予想しており、生産が本格化することで納車の制約が解消されると見込んでいるためで、これに加え、同社は事業運営における追加的なコスト削減にも取り組んでいることについても表明しています。
- EBIT損失: 同社は、2025会計年度のEBIT(利払い・税引き前利益)で約1億1,000万ポンドの損失を予想しており、これは約230億円超に相当
- 過去の比較: 2024年(£82.8百万)および2023年(£79.7百万)のEBIT損失と比較しても、その赤字幅が拡大
救世主となるか?「ヴァルハラ」の詳細
アストンマーティンが業績の立て直しを託すヴァルハラは、ブランドのフラッグシップモデルではないものの、それに近い存在であり、ヴァルキリーに比較して「コストが低く、販売台数が多い」ことから同社の財務内容を好転させるであろうと見られています。
Image:Astonmartin
- レイアウト: ブランドの真のフラッグシップと同様にミッドシップレイアウトを採用
- パワートレイン: 怒涛のV12エンジンではなく、メルセデスAMGの4.0リッターV8ツインターボを高度に改良したバージョンを搭載
- 出力: 電気モーターと組み合わせることで、システム合計1,064馬力、トルク811ポンドフィートを発揮
- 性能: 最高速度は217 mph(約349 km/h)、0-62 mph(約100 km/h)加速はわずか2.5秒
ヴァルハラは999台の限定生産であり、年内に150台が納車された後、残りの849台は2026年を通じて顧客に届けられる予定であるとされますが、この限定ハイパーカーの成功がアストンマーティンの状況を好転させる鍵となりそうですね。
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参照:Autocar