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| アストンマーティンは他のプレミアムカーブランドとは異なる戦略を展開 |
ガレージからリビングへ—アストンマーティンのブランド拡張戦略
英高級車メーカー、アストンマーティンは以前より自動車業界の枠を超えたブランド戦略を採用していますが、他のプレミアムカーメーカーと異なるのは「(アストンマーティンを所有していない)ファン向け」ではなく、「すでにアストンマーティンを所有している富裕層」に向けた超高価格帯の製品に特化していること(これまでには潜水艦やヘリコプターが発売されている)。
つまるところ、Tシャツやサングラス、スニーカーといった製品よりも(もちろんこれらも扱っている)、もっと(遥かに)高価格帯の製品を提供しているということになりますが、今回新たにValor Real Estate Developmentとの多岐にわたるプロジェクト提携を発表し、その第一弾としてフロリダ州デイトナビーチに超高級マンション「アストンマーティン レジデンス デイトナビーチショアーズ(Aston Martin Residences Daytona Beach Shores)」を開発するとアナウンス。
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デイトナビーチに誕生する18階建ての超高級タワー
まず、新たに開発される「アストンマーティン・レジデンス・デイトナビーチ・ショアーズ」の概要は以下の通り。
| 項目 | 詳細 |
| 立地 | フロリダ州デイトナビーチショアーズ(サウスアトランティック通り3411番地) |
| 規模 | 18階建て、総戸数86戸、床面積約30,000m |
| 特徴 | 2層のペントハウスフロア(計8戸)を含む全戸からオーシャンビュー、2階建ての駐車場付き |
| 完成予定 | 2029年 |
今回の不動産開発はマイアミの「アストンマーティン・レジデンス」や、東京・表参道に完成したタウンハウスに続く同社の世界的な高級不動産ポートフォリオの一環ということになりますが、もとはというとこういった「富裕層向け戦略」は前々CEO、アンディ・パーマー氏時代にはじまったもので、「富裕層が求めるものを、自動車以外であってもすべて提供する」というコンセプトに基づいています。
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しかしその後コロナ禍に突入するに際して業績が悪化し、アストンマーティンは多くのプロジェクトをシャットダウン、あるいは方向転換することを余儀なくされていたものの、「不動産ビジネス」はそのまま継続され、むしろ「拡大」の傾向すら見られているため、実際のところ「かなり売れている」のかもしれません。
そして今回のレジデンスの立地は、NASCARのデイトナ500や耐久レースのデイトナ24時間で有名なデイトナ・インターナショナル・スピードウェイからわずか数分の距離に位置しており、「スピードの象徴」としてのデイトナの歴史と深く結びついています(よって非常に価値が高い立地でもあり、投資価値も高いものと思われる)。
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自動車デザイン哲学を「住空間」へ昇華
なぜアストンマーティンが不動産を手掛けるのか?
その鍵は、アストンマーティンの「デザイン哲学」にあり、ストンマーティンのブランド多様化担当ディレクター、ステファノ・サポレッティ氏は、「不動産は、自動車の世界を超えて成長するという我々の戦略ビジョンにシームレスに繋がるブランド拡張である」と述べています。
さらにチーフクリエイティブオフィサーのマレク・ライヒマン氏は、同社のレジデンスについて以下のように強調。
- 高度なクラフツマンシップと素材の活用: 自動車開発で培った熟練の素材、表面、高品質なディテールデザインの経験が、建築デザインに自然に表現される
- バランスとプロポーションの追求: すべてのアストンマーティン車が「美しさの表現」であるように、この哲学が不動産にも共有される
- 高度にカスタマイズ可能な空間: オーナーの要望に応じたカスタムデザイン要素を前例のないレベルで統合する
入居者はアストンマーティンの車が持つ「美しさ、バランス、高性能」といった要素が反映された、究極のウルトラ・ラグジュアリーな生活空間を手に入れることになるわけですね。
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スピードの聖地との歴史的な結びつき
デイトナビーチの立地は、単なるリゾート地というだけでなく、アストンマーティンのレーシングの歴史とも深く関連しています。
- デイトナ24時間レース: 耐久レースの「トリプルクラウン」を形成する権威あるレースの一つ
- 直近の戦績: 2023年には、アストンマーティンVantageが第61回デイトナ24時間レースでクラス1-2フィニッシュを達成
- 今後の計画: 2026年1月には、アストンマーティンのTHORチームのヴァルキリー(Valkyrie)が同レースでデイトナデビューを果たす予定
このレジデンスは、まさにモータースポーツという非日常的な「パフォーマンス」と、日常の「超高級な住環境」を融合させることを意図していますが、Valor Real Estate DevelopmentのCEO、モイセス・アガミ氏も、「すべてのドライブには目的地が必要であり、アストンマーティンとの提携は、スピードの代名詞であるこのロケーションにおけるオーシャンフロントの生活を再定義し、新しい基準を打ち立てるだろう」とコメント。
この多角的プロジェクトに基づき、今後メキシコシティやフロリダ州タンパベイでのランドマーク開発も検討されているそうですが、アストンマーティンのブランド拡大が世界的に続いていくことが示唆されており、こういった展開はアストンマーティンを「ほかのライバルとは一味違うブランド」へと成長させることとなりそうですね。
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